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馬車が揺れる中、自分の膝を枕にして横になり、口を半開きにして寝息を立てる妹。身動ぎ肩から上着が落ちそうになるのを掛け直してやる。


「少しは成長したかと思ったけど……まだまだ餓鬼だな」


そう呟く声は少し嬉しそうだった。


子供達と遊び疲れたのか、リディアは馬車に乗り込むと直ぐに眠たそうにうとうと船を漕ぎはじめた。


「まあ、あれだけはしゃげば疲れて当然だね」


走ったり、飛んだり跳ねたり、終いには木の棒で打ち合っていた。とても貴族の年頃の娘には見えない。リディアには淑女という言葉は似合わないが、流石に苦笑せざるを得ない。


ただ懐かしさは感じた。幼い頃は、よく剣術の稽古に妹が乱入してきて、打ち合いをしたものだ。まあ、軽く一捻りだったが。だが、筋は悪くない。もしリディアが男であのまま続けていたなら、今頃はそこそこの腕前にはなっていたかも知れない。


「リディアが弟だったら、か……」


性別で差別はしないが、こんなに執着する事も可愛がる事もなかっただろう。いや、中身は変わらず今のリディアそのものだったらどうだろうか……。


抱き締めたり、膝枕したり、口付けをしたり……一瞬だけリディアが弟になった姿が頭を過ぎった。


「……」


変な想像をしてしまった。(かぶり)を勢いよく振って、邪念を掻き消す。



「妹で良かった……」


でないと、違う意味で禁断の扉を開けていたかも知れない……。リディアが女で良かったと、心からそう思った。
















「お帰りなさいませ」


夜遅く屋敷に戻ると、オリヴァーとエマが出迎えてくれた。ディオンは未だ夢の中にいるリディアを横抱きにしている。


「あら、リディア様はお休みになられていらっしゃるんですね」


エマは目を細め笑みを浮かべる。


「年甲斐もなく子供等と遊び過ぎて、疲れちゃったんだよ。本当餓鬼だよね」


呆れた様に話した。


「それは良うございました」


リディアが起きない様にと、オリヴァーとエマは遠慮がちに笑い、不本意そうにディオンも笑った。


「明日、立たれますか?」


予定では滞在は五日間だ。早いもので明日で五日になる。


「いや、もう一日だけ延ばすよ。したい事があるんだ」



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