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「え……一緒に行かないの⁉︎」


リディアは執務室で唖然としていた。


「仕方ないだろう、一日無駄にしちゃったからね。買い物くらい、俺がついて行かなくても出来るだろう」


滞在三日目の朝、リディアは意気揚々とディオンの元へと来た。約束していたジャムを一緒に買いに、街へと行こうと考えた様だ。因みに、ディオンはすっかり体調が元に戻っている。


「でも……」


「あのさ、お兄様は遊びに来たんじゃないんだよ。お前も、小さな子供じゃ」


見るからに落胆して、上目遣いで見られたディオンは途中で口を噤んだ。昔から妹のこの顔に滅法弱い。


「……明日、教会に行く時は一緒に行くからさ。今日は諦めてよ。我慢出来る?」


甘いと思いつつも、無意識に言葉と声は優しくなっていた。


「うん」


眉根を寄せ、珍しく素直に頷くリディアは可愛い。いや、可愛過ぎるだろう。ディオンは口元を手で覆い、ニヤついているのをバレない様に隠した。


「後、そうだ。買い食いはするなよ。食べたい物があれば持って帰ってきな。大丈夫かどうかは、俺が判断してやるから。後買い物が済んだら、ブラつかないで直ぐに帰ってくる事、いいな?後オリヴァーを一緒に行かせるから、側を絶対に離れない様に。後……」


ディオンがくどくどと延々と話を続けていると、次第にしおらしかったリディアの表情が変わった。口を尖らせ不満気にしている。


「もう小さな子供じゃないんだから、大丈夫よ!」


それだけ言うとリディアは、さっさと執務室を出て行ってしまった。ディオンは深いため息を吐く。あんな夢を見た所為で、昔に戻ったような感覚になり妙に過保護になり過ぎたかも知れない。どうも落ち着かない。


「ディオン様、私が付いております故、ご心配には及びません。妹君は、命に変えてもこのオリヴァーがお守り致します」


オリヴァーは見た目通りかなり武術の腕が立つ。並の賊程度なら一捻りと言った所だろう。頭も良く、何かあっても機転を利かせてくれる筈だ。そして何より信頼が出来る。


オリヴァーの他に、別にも二人護衛は付ける。心配は要らない、分かっている。そう言い聞かせるが、やはり落ち着かなかった。


「高々、ジャムを買いに行くだけだ……」


ディオンの呟きに、オリヴァーは優しく笑みを浮かべた。













「もう、自分で子供じゃないんだからって言った癖に、子供扱いしてるのはディオンじゃない」


街へと行くために馬車に乗っていたリディアは、独り言つ。向かい側に腰を下ろしていたオリヴァーは、読めない笑みを浮かべていた。


「ディオン様は、リディア様が心配なだけなんです。怒らないでさしあげて下さい」


そんな風に言われたら、何も言えない。リディアは、小さくため息を吐く。


「そう言えば、エマは如何ですか?何か粗相などございませんか」


気を遣っているのだろう。話題をオリヴァーは変えてきた。


「貴方のお姉様は、素敵な女性ね。手先も器用だし、要領も良くて気も利くし。性格も豪快で清々しいし、気も優しくて、私は好きよ」


お世辞ではなく、これは本音だ。まだ彼女と出会って数日だが、少し接しただけでエマの人柄が分かった。無駄のない動きで要領よく仕事をこなす。裏表の無い性格で、一緒にいると気分が良い。


「それは、ようございました」


始めはオリヴァーとエマは良く似ていると感じたが、少し違う。彼は強面で堅いもよく、中身は穏やかで優しく豪快な人だ。中身だけで言えばエマと同じ印象だが、やはり違う。何処がと聞かれれば上手く答えられないが……どうしても怖さを感じてしまう。


「リディア様、そろそろ街が見えて参ります」


窓を少し開けると、爽やかな風が吹き込んできた。段々と街が近くなっていく。来た時は、リディアは寝ていたので見るのも初めてだ。


程なくして街の入り口に馬車を止め、リディア達は街の中へと歩いて行った。


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