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「ディオン‼︎大丈夫っ⁉︎」


目をゆっくりと開けると視界に入ってきたのは、不安気に顔を歪ませたリディアだった。


窓からは眩しいくらいに日差しが差し込みリディアを照らしだしていた……確か、雨が降りそうな空だった様な……だが予想に反して随分と晴れているようだ。


「俺……寝てた……?」


昨夜は考え事をしながら……窓の外を眺めていた筈だったが……それからの記憶はない。


今の自分の姿を確認してみると、窓の下に蹲りなんとも情けない姿だった。どうやら考え込んでいる内に、いつの間にか意識を手放した様だ。


「何、お前……泣いてるの?」


「だって、こんな所で倒れてるし、何度揺すっても呼んだって全然起きないからっ」


見上げたリディアはよく見ると目尻に薄らと涙を浮かべていた。


「餓鬼かよ」


悪態を吐く。だがその声色は、自分でも驚く程酷く優しいものだった。気付けば、妹へと無意識に手を伸ばしていた……それを乱暴に掴まれる。そして、リディアはそのまま倒れ込む様に抱き付いてきた。


「どうしたの……。お兄様に、甘えたくなっちゃったの?」


リディアは何も言わず、動かない。ディオンは、背に手を回して抱き締め返し、リディアの顔に頬を寄せた。暫く二人はそのままでいた。


日差しが眩しく、頭がくらくらする気がする。額や背が汗ばんでいる感覚がした。



「ちょっと、ねぇ……身体、熱いし汗が凄い。風邪引いたんじゃない⁉︎」


そう指摘された瞬間、激しい頭痛と悪寒がした。


「っ……分かんない。でも、頭、痛いかも……寒、いし……」


また、意識が遠のいていく。リディアが何か言っていたが、聞こえなかった。











◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



リディアは、ディオンの額の汗を濡れた布巾で拭う。すると苦しそうな表情が少しだけ和らいだ気がした。


あの後、意識を失ってしまったディオン。リディアは慌てて、オリヴァーを呼びに行った。


「疲労ですね」


直ぐに医師を呼び、診てもらったが診断は疲労だった。


「安静になさって、確りと栄養を摂って下さい」




リディアは、苦しそうに唸る兄の汗を拭う。情けないが、今自分に出来る事はこれくらいしかない。


今朝、食堂に行くとディオンの姿はなかった。何時も早起きの兄が珍しい……と思いオリヴァーに声を掛けた。


すると丁度、ディオンの様子を見てくると言ったので「私が行く」と代わりを申し出たのだったが……。


ノックを何度しても反応が無かったので、開けて見れば、まさかの窓辺の下で蹲り倒れていた。


瞬間、心臓が止まった様に思えた。


駆け寄って身体を揺すっても、名を呼んでも起きない。スッと背筋が冷たくなった。



「無理、し過ぎよ……」


リディアは、ディオンの熱い手を握り締めた。



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