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33

屋敷を出立したのが空が白み始めた頃だ。途中休憩を挟みながら馬車は走り続け、今日泊まる宿に着いたのは辺りが暗くなった頃だった。


「どうしたの?入るよ」


リディアは宿の前で立ち止まり動かない。ディオンは振り返り訝し気な顔をする。


「え……あ、うん」


物珍しそうにリディアは、周りを見渡す。


宿泊手続きを済ませて、二人は宿の二階へと上がった。因みに連れていた従者数人と馭者は宿の一階で泊まるらしく、リディアが気付いた時にはいなかった。


「ねぇ……」


「何?」


「何?じゃないわよ。なんで部屋が一緒なの」


リディアが部屋に入るとディオンも入ってきた。聞けば部屋を一つしか取らなかったと言う。


「仕方ないだろう、部屋が埋まっていたんだ」


「……ベッド、一個しかないんだけど」


部屋も狭ければベッドも一人用なのか狭い。リディアは眉根を寄せ、ディオンを見遣る。


「こうなれば仕方ないね、一緒に」


「床で寝て」


ディオンが言い終える前にリディアは、ピシャリと冷たく言い放つ。


「酷い妹だな。お前は、こんな硬くて冷たい床で大切なお兄様を寝かせるつもりなの?」



「ふん。それしか選択肢はないでしょう。……あ、もう一つあった。従者の誰かの部屋のベッドで仲良く一緒に寝かせて貰ったら?」


その言葉に苛ついたのか、ディオンは満面の笑みを浮かべるとベッドにさっさと横になってしまった。


「ちょ、ちょっと!何勝手に寝てるの⁉︎」


呆気に取られるが、直様我に返り慌ててベッドへ駆け寄る。抗議するが、ディオンに起き上がる気配はない。


「ベッドで寝たいなら、一緒に寝るしかないよ。俺は、床で寝るのも、男と一緒のベッドで寝るのもごめんだからさ。そういう趣味ないし……。ねぇ、リディア、一緒に寝ようよ」


横になっているディオンに腕を掴まれ、上目遣いで聞いてくる。甘えた様な仕草に思わず頬も染まる。中身は最悪だが、何しろ外見だけは良い。












夕食後、湯浴みを済ませたリディアは部屋へと戻ると先に湯浴みを終えたディオンが、ベッドで寛いでいた。何時も後ろに一本に編まれている長い髪は無造作に下されている。湯上がりとあって、色白い肌は赤く染まっていた。


妙に色っぽい……なんか、ディオンじゃないみたい。知らない人に見える。心なしか、心臓が早く脈打っている気がして、落ち着かなくなる。


リディアは扉の前で立ち尽くし、暫く凝視していた。すると視線に気が付いたディオンは「おいで」と手招きをする。


何時もと違う兄に身構えるが、何時迄も立っている訳にもいかないので不本意だが、大人しく従う事にした。



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