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まさか兄と一緒に食事をするなんて驚きだった。何時振りだろうか。成長してからは記憶にない。


横目でグラスに注がれたワインに口を付けている兄を盗み見た。どうやら今日は頗る機嫌が良い日らしく上機嫌で呑んでいる。


「リディア」


不意に名前を呼ばれて心臓が跳ねる。盗み見ていたのがバレたのだろうか……。


「あんな男、ろくな奴じゃない。それに、俺の方がいい男だろう?」


多分兄なりに気を遣っているのかも知れないが、後半は何が言いたいのかは不明だ。ただの自慢としか思えない。


「ちょっと……もう、酔ってるの?」


「…………酔ってないよ」


嘘だ。完全に目が据わっている。そしてまたグラスのワインを煽ると、リディアを見つめながら笑う。

今度は違った意味で心臓が跳ねた。思わず顔を赤らめる。


兄のディオンは妹の立場からした欲目を除いてもかなりの美男子だ。整った顔立ちに色白で細身でスラリとしている。女顔と言われる事も少なくないらしく、本人は多少気にしている。そして聞いた話ではかなり女性から人気があるらしい…………どうでも良いけど!


だがそんな人間から至近距離で見つめられたらリディアだって流石に照れてしまう。

それに、こんなに距離が近いなんて、子供の頃以来で……妙に緊張してくる。


だからって別に、全くもって興味なんてないけど!


相手はあの意地悪で性格の悪い兄に変わりはない。そう、今目の前にいる男はリディアの兄なのだ。




何とも思う筈がない……。




「全く、しょうがないわね」


リディアは大袈裟にため息を吐くと、テーブルに半ば突っ伏している状態のディオンに手を差し出し立たせた。


「リディア様、私がやります故……」


それまで見守っていたシモンが慌てて駆け寄りディオンを支えようとしたが、リディアはやんわりとそれを止めた。


そのままリディアは、足元の覚束ない兄に肩を貸す。


「いいの、やらせて。たまには、兄孝行でもしなくちゃね」


そう言って苦笑すると、リディアはディオンを連れて食堂を出た。


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