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「何、食べてるんだ?」


黒騎士団の稽古場で、鍛錬を終えたディオンが休憩していると声を掛けられた。


「別に……大した物じゃないよ」


そう言いながら、布袋を大事そうに握り締める。


「菓子なんて、珍しいな」


背の高い色黒の少し堅いのいい青年は眉根を上げ、興味深げな表情を浮かべて覗き込んでくる。彼の名はルベルト・ファロ。黒騎士団の一番隊の隊長だ。


「たまには俺だって、食べるさ」


「いいなぁ、僕にも頂戴!」


「ダメだよ。これは、俺のだから」


横から現れ、ディオンから布袋を奪おうとするもう一人の青年の名はレフ・ロロット。割合小柄で細身の童顔だが、こう見えて彼もまた黒騎士団の三番隊隊長である。


「えー、ケチだな」


そう言いながら諦める気がないのか、しつこく手を伸ばしてくる。ディオンは、笑顔でレフの頭を鷲掴みすると地面に押さえ付けた。


「痛っ~!ディオン、酷いよ」


涙目になりながら抗議の声を上げるが、ディオンはしれっとして座り直した。


「人の物を取ろうとするからだよ」


そう言いながらまた、口の中に菓子を放り込む。


「ねぇ、それ良く見ると焦げ焦げじゃない?」


レフは少し驚いた顔をする。ルベルトも「本当だな」と言い苦笑いを浮かべた。


「何でそんなの食べてるの?ディオンって実は焦げ焦げが好きなの?」


そんな訳あるか‼︎と思うが、口をつぐむ。何か言って、詮索されるのはごめんだ。レフの性格上、しつこく根掘り葉掘り聞いてくるのは目に見えている。


「もしかして、貰いもんか」


何時もなら言わない余計な一言をルベルトが言った。少し口元がニヤついている。これは、良からぬことを考えている顔だ。


「女だな」


本当に余計な一言だった。


「え、何何⁉︎それ女の子から貰ったの⁉︎誰誰⁉︎」


「……煩い。そんなんじゃ、ないよ」


最悪だ。こうなったらレフは自分が納得するまで止まらない。未だにニヤついているルベルトを睨みつけた。


「ハハッ、女は女でも、どうせ妹君だろう?」


「あー、何だ、妹ちゃんか!えー何何、仲直りしたの」


一体何なんだと、ディオンはうんざりする。これが国が誇る黒騎士団の隊長等かと思うと呆れる。まるで若い女達が集まって色恋の話で盛り上がっているかのようだ……。


「別に……。そもそも喧嘩なんてしてないし」


「でも、ずっと疎遠だったでしょー?」


「いや、一応ずっと一緒に住んでたから」


いつの間に、そんな話になっているのか。


リディアが婚約するまでは、一応一緒の屋敷では暮らしていた。まあだが、殆ど顔を合わせる事も会話も無かった事を考えれば疎遠という言葉は確かにそう遠いものではないかも知れない。


ただ、一方的に寝顔を見たり、口付けをしていた事を除けば……だが。


「そう言えば、婚約破棄されたってちょっと前に噂になったな。妹君は大丈夫なのか?」


「大丈夫だよ。アイツは、婚約破棄程度で落ち込む様な繊細さは持ち合わせてないから」


ディオンはそう言いながら、布袋を懐に素早くしまった。油断したらレフに取られそうな気がするからだ。


これは俺のだ……。


「ねぇ、もしかしてそれ妹ちゃんの手作り?一つ頂戴……て、あれ」


やはり。油断も隙もあったものではない。


「休憩は終いだよ。ルベルト、レフ。随分と余裕があるみたいだから……俺が相手してあげるよ」


ディオンは剣を前に突き出す。すると、二人は顔を引き攣らせた。





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