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次の休みはディオンは、いなかった。流石にそうはそう休みは被らない。それに、そもそも騎士団長であるディオンに、そんな休みはない。そう考えると、この間の貴重な休みを自分との出掛ける時間を割いて良かったのだろうか……。わざわざ一緒に出掛けなくとも事前に理由を話してくれていたら、シモンなりハンナなりを伴って、リディアが買い出しに行けば事足りた気がする……。


まあ考えた所で、あの兄の考える事などリディアには到底理解出来ないだろうが。


「さてと、始めないとね」


リディアは、ハンナから借りた侍女服に着替えていた。ハンナにはかなり渋られたが、少々強引に借りてきた。そして、普段ほぼ足を運ぶ事のない、調理場へと入る。


「お嬢様⁉︎如何なされましたか⁉︎」


リディアの姿を見たシェフであるブノワは慌てた声を上げた。


「何か、粗相でも御座いましたか⁉︎」


少し顔が青褪めている。何もそこまで驚かなくても……。確かにリディアは調理場には別段用はない故、来る機会はないが……。


リディアは気を取り直して、満面の笑みを浮かべる。


「ちょっとお願いがあるの」










リディアは改めて実感した。やはり、自分は超絶不器用な人間なのだと。こういった細かな作業は合わない。外で、剣を振り回す方が性に合っている。


「あ……」


手が滑り掴んでいた振るいが宙を舞う。


「う、うわぁ⁉︎お嬢様、大丈夫ですか⁉︎」


ザバァと音を立てて小麦粉が頭上から降り注ぐ。頭からつま先まで真っ白だ。


「ゴホッゴホッ……ゔぅ、粉っぽい」


鼻から口から小麦を吸い込み、酷く咽せた。


「ハ、ハンナ‼︎お嬢様を」


心配で様子を見に来ていたハンナにブノワは焦りながら声を掛ける。


「リディア様!お顔が……ふふ」


笑いながらハンナは、布巾を取り出してリディアの髪や顔などを丁寧に拭いていく。


「もう、ハンナ……笑い事じゃないから……」












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「あれじゃあ、何時になるか分からないね」


ディオンは調理場の出入り口の壁に寄り掛かり中の様子を伺っていた。


「朝からやってるんだろう?」


「然様です。ですが、かなり頑張っていらっしゃるかと」


本来今日は休みではなかったが、急遽半休にして帰って来た。副団長や部下である友人等には色々言われたが、全て無視した。明日登城したら何を言われるやら分かったものではないが、リディアの事が気になり何も手に付かなかったのだ。



「でも、アイツにしては良い発想かもね」


シモンから聞いた話では、朝から調理場で何やらお菓子作りを始めたそうだ。それだけ聞けば大方察しはつく。買うより作ればかなり安く済む。その分時間も手間も掛かる故、ディオンにその発想は無かった。作る事の大変さを分かっているハンナも同様だろう。


リディアはきっと何も考えずに、ただ単に作った方が安い、予算内に収まる程度にしか考えていないだろうが。そもそもそれだと今度はかなり予算が余る筈だ。


本当、極端から極端に走るね。あの莫迦は。




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