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馬車に揺られている内に、うとうとと始めたリディアは、暫くして眠ってしまった。ディオンは横に座り直すと、リディアの身体を自分へと傾け寄り掛からせる。自らの上着を脱ぎ掛けてやると、僅かに開いた口から吐息が洩れる。


「本当、いつまでも成長しないよね」


悪態を吐くが、その顔は穏やかだった。頭を撫でると、ふにゃと笑う。


一日連れ回してしまったから、かなり疲れたのだろう。慣れない環境にもかなり緊張していたようだし。



「それにしても」


先程の事を思い出す。




『そろそろ、帰るけど。買う物は決まった?』


あれから暫くディオンとリディアは、街中を練り歩き食べたり見て回ったりした。夕刻も近くなり、ディオンが声を掛ける。


『うん。でも、始めに行ったお店には寄らなくていい』


意外な言葉にディオンは眉根を上げた。


『それは、どういう意味?』


『私なりに考えたの。だから、今日はこのまま帰ろう』


その後、ディオンがリディアに何を聞いても頑なに突っぱねて教えてくれなかった。頑固な妹だと呆れるが、それ以上粘っても仕方がないので素直に言う通りに帰る事になり、馬車へと戻った。



「どうせ、碌でもない事を思いついたんだろう。たく……。そんな無防備な顔で寝ててさ、いい気なもんだよ。人の気も知らないでさ」


頬を軽く摘んで離すと、リディアは顔を顰めた。眉間に皺を寄せている。その光景に思わず笑ってしまった。


「リディア」


今度は優しく頬に触れ、親指でぷっくりとした赤い唇を撫でる。柔らかくて、熟れた果実の様で美味しそうだ。ディオンは、生唾を呑み込む。


目が釘付けになり……喰らい付きたくなる。


「お前は、俺が守るから」


何があろうと。

そして、誰にも渡さない。これは俺のモノだ。ずっと昔からそうだ。初めて彼女が屋敷に来たあの日から……ずっと。それを易々と後から現れた他の(やつ)等に、指を咥えて渡すなど出来る筈がない。


音もなくリディアの唇に自分のそれを重ねた。こうやって唇を寄せるのは、初めてではない。もう何度目か……忘れた。


ディオンは、リディアを起こさない様にと、優しく抱き締めた。




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