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リディアは露店の店主から包みを受け取ると早速開く。中には、野菜やハムなど挟まれているパンが出てきた。実に美味しそうだ。


「いただきま……えっ」


嬉々として齧り付こうとした瞬間、それは消えた。ひょいと、ディオンがリディアの手から取り上げたからだ。一瞬何が起きたか分からずリディアは、呆然とする。


「何するのよ⁉︎返してよ!あ……」


リディアが抗議の声を上げている間に、ディオンは既に齧っていた。


「酷い……それ私の」


眉根を下げ、明らかに落胆する。


「ほら、食べな」


ディオンは、一口齧ったパンを返して来た。リディアはワナワナと震える。何故わざわざ人の買った物を横取りして、本人よりも先に口にしたと思ったらそれを返してくるのか。新手の嫌がらせか?


「どうしたの?食べないの?」


「……」


しれっとしながらそう聞いてくる姿に、更に苛つく。


「大丈夫だよ、毒なんて入って無かったからさ。安心して食べな」


リディアは、その言葉にピタリと動きを止めた。手にしたパンの包みを凝視する。


毒…………もしかして、毒味をしたのだろうか。


「俺が一緒じゃない時は、こう言う露店とかで食べたりするなよ。何が入っているか分からないからね。まあ、一人で来る事なんてないとは思うけど」


「…………うん」


「やけに素直で、気持ち悪いな」


「煩い」


そう言いながらリディアは、改めてパンに齧り付いた。そして、そのまま固まる。


「硬いっ……⁉︎味も……何か、変わってる……」


周りに聞こえない様に、自然と小声になる。


「そりゃあね。露店の食べ物はどれもそんなもんだよ。食べないの?もしかして口に合わないから、もう要らないとか、言わないよね?」


満面の笑みを浮かべるディオンから、ひしひしと圧を感じる。リディアは慌ててもう一口齧るが……また、固まる。


やはり、苦手な味だ。パンもかなり硬いし、パサパサして異様に喉が渇く。屋敷で食べている物とまるで違った。リディアが固まったままでいると、ワザとらしいため息が聞こえて来た。そして、再び手からパンが消えた。


「ほら、貸しな」


パンの包みはまた、ディオンの手に戻る。兄はそのまま何気ない顔をしながら、パンを食べ切る。呆気に取られながら、リディアはその様子をただ見ていた。


「全く、自分で食べたいって言った癖に、責任もてよ……何?」


「ごめん、なさい……」


項垂れるリディアの耳に、またため息が聞こえてくる。まるで子供の頃に戻った様な錯覚を覚え、昔兄から叱られた事を思い出した。


「しょうがない奴だね、お前はさ。リディア……おいで」












リディアはディオンから平な食べ物を受け取る。見た事のない食べ物だ。興味深く眺めていると、先に口にしていた兄から食べて良いと許可が下りた。


「美味しい」


沈んでいたリディアの顔は一瞬にして笑顔になった。初めて食べたが、ほんのり甘くて美味しい。


「食べたら行くよ」


慌てて口に押し込み、飲み込んだ。そして自ら寄り添う様に隣に並ぶと、ディオンは驚いた顔をした。だがそれも一瞬の事で直ぐにいつもの飄々とした表情に戻ると、リディアの腰に腕を回し歩き出す。リディアは頬を染めながら、はにかんだ。






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