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「雨、止まないな」


ルベルトは窓辺で、ひたすら窓の外を眺めているディオンの横に腰をおろした。椅子などはない故、そのまま地べただ。


「……あぁ」


心ここに在らずといった感じの生返事が返ってくる。

国王殺害の容疑で追われる身になったディオン。その彼に黒騎士団員等は皆付いて来た。


ディオンは無実だと話すが、正直なところ分からない。このディオンの事だ。やりかね無いとは思っている。だがそれはルベルト等にとって然程重要ではない。重要なのは彼が黒騎士団長であるという事実だけ。


自分等の上官が謀反人だと臆する臆病者など、この黒騎士団にはいない。寧ろ望む所だと笑う者ばかりだ。



「何時まで持つだろうな」


隣にディオンがいるにも関わらず、独り言つ。話しかけたところで、今の彼にはきっと殆ど聞こえていないだろう。


今ルベルト達は城下から少し離れた場所にある神殿に立て篭っている。所謂籠城というやつだ。

更に黒騎士団の主人である神官等は王妃と結託してディオン延いては黒騎士団自体を陥れようとしていたと判明し、残らず始末した。


罰当たりと思われるが、元々この国の神官等などは名ばかりの腐り切った連中ばかりだった。今頃天国どころか、地獄にでも落ちているに違いない。



「食料などの備蓄は結構あるから、当面は大丈夫だと思うが……」


問題はこれからどうするかだ。このまま籠城し続けた所で先は見えている。

ルベルトは横目でディオンを見遣る。まるで抜け殻の様だ。こんな彼は初めて見る。


溺愛、いや懸想する妹に刃を向けられて余程衝撃だったのだろう。絶望に打ちひしがれて、まともに会話すら出来ない。本当、困った奴だ。


あの時、ルベルトは少しだけ彼と妹の会話を聞いていた。会話の通り、正にディオンにとって彼女は彼の全てなのだろう。彼女がいるから今のディオンがある。彼女が彼の生きる希望であり、生きる意味なのだと思う。その彼女を失ったディオンは……どうなるのだろうか……。


「ディオン……お前はこれからどうする」


「……あぁ」


「白騎士団の連中は、お前を赦さないだろうな」


「……あぁ」


白騎士団長のリュシアンを斬り殺した事には、心底驚いた。上官であり仲間であった人間を殺されたとなれば、団員等は躍起になってディオンを殺しに来る。それこそ地獄の果てまで追って来そうだ。


「本当、お前は困った上官だよ」


「……あぁ」


やはり、生返事しか返ってこなかった。らしくない上官もとい友の姿に思わず苦笑した。












◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




あれから一ヶ月が過ぎた。だがあれからリディアは自邸から一歩たりとも出る事が出来ずにいる。クロディルドの命令により未だに兵等に屋敷を見張られている為だ。


「失礼致します、リディア様。お客様がお見えです」


思いもよらない人物が訪ねてきた。


「お久しぶりです……エクトル様」



応接間に行くとエクトルが長椅子に腰掛けていた。かなり驚いた。まさか彼が訪ねてくるとは思わなかった。


「あの、私に何の御用ですか……」


彼の正面に腰掛けると、挨拶もそこそこに本題に入る。今この状況で彼がリディアに用があるとするならば一つしか考えられない。


「申し訳ありませんが、私はディオン……兄の行方は知りません。本当です。だから」


罵倒されても文句は言えない。ディオンはそれだけの事をした。気まずさにリディアは早々に話を切り上げようとする。これ以上、この場にいたくない。


「いや……違うんだ。今日、来たのはそうではない。君と少し話がしたかっただけなんだ……」


その言葉にリディアは目を見開き、首を傾げた。


「何から話せばいいか……。君の母君の事なんだ」




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