2/人との境界線②【修正版】
いつもビクビクしている事その1。
登場キャラの初登場シーン、その開口一番。
シーンの雰囲気を優先するか、キャラのケレンミを出すか。
いつもビクビクしながら、迷ってます(笑)
唐突だが大峰エリコは、転んでもただで起きる女ではない。
それを身をもって知る事となった。
1ヶ月前の出来事。
彼、菊池シュンは同じ学部の大峰エリコから告白されていた。
だが、その告白と交際を丁重に断った。
――なぜか、という理由は置いておく。
しかし、それからというもの。
エリコはめげずにシュンとの距離を縮めようとするようになった。
講義。
帰り道。
互いにバイトがない放課後など。
エリコの誘いはとどまる事を知らない。
それは現在、昼食の時間も一緒だった。
半ば、強制的に食堂へ連れてこられたシュン。
腑に落ちない顔をしながらも、食事を終える。
やはり素振りでわかってしまうのだろうか。
告白を拒否した立場、どうにもいたたまれない。
『ふふ、困った2人ね』
「ん? なんかいった?」
別に、とシュンはお茶を濁す。
くぐもった声の主――おそらくバックパックの中だろう――を睨む。
「そういえば、見てよコレ。カワイイでしょ!?」
エリコ、バッグから四角い手鏡を取り出す。
確か一昨日の買い物に付き合った時に買っていた物だった。
エリコ自身、断じてデートだったと語るが、この際どちらでもいい。
白桃色の手鏡。
表面には、中型犬が木陰で横になっているイラスト。
「お、さっそくデコったのか。いいんじゃないか?」
「ねッ! いいでしょ、力作よッ!」
飛び跳ねそうなくらい、身体が踊っている。
いうまでもなく、エリコは可愛い物好き。
特に犬全般が大の好みだった。
吊り上がった目尻。
男勝りな性格。
積極的な行動力。
そして、肩で切りそろえた髪のボーイッシュな印象。
それらを加味した大峰エリコ。
知り合ってまだ数ヶ月と短いが、十分に魅力的な女性だろう。
そうはっきりとシュンは断言できる。
●街中/帰路(夕方)
4限目が終わり、今日の講義は終了。
エリコは5限目まであるそうで、別行動。
別れ際、渋っていたエリコの顔が印象的だった。
また明日、と手を振り次の教室へ向かったエリコ。
シュンもこの後の用事を済ますため、まずは自宅へ戻る。
帰り道。
シュンが借りている自宅アパートまで徒歩で20分の距離。
バイクの移動も憧れたが、断固拒否された。
”姉のムラサキ”に事故になったら危ないから、と。
だから、シュンと”ムラサキ”の交通手段はもっぱら徒歩である。
『どう、間に合いそう?』
頭上のカーブミラーから”ムラサキ”の声が落ちてくる。
「うん、大丈夫。流石におじさんとの”会食”には遅刻できないからね」
ふふ、と、走り去る車のミラーガラスから漏れる。
『それにしてもエリコちゃんも必死ね。貴方の気を惹きたくて、大きな子供みたい』
と、道端の小さな水たまりが、小さく揺れる。
『可愛いわよね。ふふ、お姉さんホッペタが緩みっぱなしよ』
「他人事だと思ってもぅ……どっちかというと面白がってるだけでしょ」
正解、と鈴を転がしたような清涼感のある声。
『でも心配もしてるのよ? 愛する弟の恋愛事情もしっかりチェックしないといけないし、変な女にでも捕まったらそれこそシュンちゃんのバラ色の大学生活にも支障が……』
今、バックパックの中にいるのだろうか。
背中あたりから、濁った声が垂れ流される。
途中、廃れた商店街を横切って住宅街へ。
買い出しの主婦や人目も多い。
ムラサキ、言葉を紡ぐのを自粛する。
自宅に到着する直前。
ぽつりと、シュンがつぶやく。
「姉さん。絶対にエリコに変な事はしないでよ?」
『わかってるわよ、シュンちゃん』
読了、ありがとうございます。
設定が先走った内容になりますが、今作は簡単にまとめていきたいと思います。
生暖かく見守っていてください。