14/繁華街のまどろみ
「あ~やっちゃた」と思う事その3。
書く時のモチベーションによって、
一区切りの作風が違う。
ノリノリだと、セリフ多め/ト書き少なめ。
思い詰めていると、ト書き多め(特に説明文)ですね。
バランスがいい日がなかなか、ありません……(涙)
●繁華街/表参道(夜)
街の眠気はまだ訪れない。
そろそろ時間にして、0時を回ろうとする頃。
駅周辺の繁華街には、人の姿が入り乱れる。
人気がおさまる事なく、段々と増えているようにも見える。
――1人、血相を変えた男が人の波に逆らっていた。
海藤マサキである。
「くそッ! クソっ!!」
と、悪態をつきながら行きかう人を睨む。
通行人が皆、狼狽した海藤を背中ごしに見ていく。
「あぁエリコちゃん。どこだッ!?」
なぜかわからないが、足が大きくもつれてしまった。
そのせいで大峰エリコとはぐれてしまったのだ。
早く見つけて怪しい男――菊池シュンから遠ざけないといけない。
彼女が助けを求めそうな場所。
自宅やアルバイト先だろうと見当をつけていた。
しかし、その予想が外れてしまう。
「どけッ!?」
やぶれかぶれとは、この事か。
手あたり次第にこうして走り回っている始末。
どこか建物に隠れているのだろうか。
もしくは、ここにはいないのだろうか。
疑問や可能性、諦観が脳内で撹拌される。
加えて、言葉通り。
血眼になった左右の目を忙しなく動かす。
どこにも大峰エリコの姿はない。
しかし、彼にはとってそれは”ありえない”のだ。
――エリコも口では嫌だといいつつ、実は照れ隠しだという事も。
――泣く泣く、仕方なく、悪い害虫と一緒にいる事も。
――彼女の本心は、自分と共にいる事を望んでいる事も。
――全部、知っているのだから。
海藤の愛情。
それは歪みきった、黒い感情。
盲目の純情ともいうべき代物であった。
「……ったく、やっと見つけたぞストーカー野郎め……」
と、身体が軽く弾む。
誰か、背後に接している感覚。
同時に、首元に冷たい鈍痛が駆け抜ける。
「これで少しは落ち着けるよ? オレからの手向けだ」
と、背後に男の声がする。
海藤、振り向こうとするが首が自由に動かない。
じんわりと頸椎辺りに熱を感じる。
目の前がうっすらと、視界がかすむ。
海藤、膝が自然と折れて倒れこむ。
頬にコンクリートの冷たさが伝わる。
だが、頭や身体が鉛を仕込んだように重たい。
「……ぅ……」
傾斜した視界。
人々の靴、靴。靴。
地面は縦に張り付く。
人間は横向きに、上へと昇っていく。
今度は瞼が重い。
睡魔が誘うまどろみに似ている。
その誘惑に、海藤マサキは意識を手放した。
×××× ×××× ××××
「とりあえずは、かな」
菊池シュン、握ったボールペンの頭をノックする。
喧噪の波から抜け出たシュン。
ある店先の壁にもたれて、手元の黒いボールペンをポケットにしまう。
「おい、大丈夫かアンタ! なぁおい!」
「誰か救急車だッ! 救急車呼んでくれよ!」
視線の先、道の往来で人だかりができている。
シュン、涼しい顔で様子を見守る。
「大変だ、意識がないぞ! 早く救急車をッ!?」
「やだぁあの人、泡噴いてる」
「突然、ど真ん中で倒れたんたんだってよ?」
「なんだ、なんかの発作か?」
と、野次の声が飛び交う。
大半が騒ぎをはやし立てる者ばかり。
あまり積極的に救助をしている様子が伺えない。
「………………」
周囲を見渡しも、皆、野次馬と化している。
こちら側、シュンの事を注視している人間は誰もいない。
シュン、大きく肩を落として帰路につく。
「はぁ……やっちゃったな……」
海藤マサキに打ち込んだのは、神経毒。
血管や神経に打ち込めば、瞬時に自由を奪う即効性の毒針である。
それを背後から海藤の頸椎に直接、打ち込んだ。
胸元にしまった、ボールペンに偽装した毒針で。
見た目どこにでもありそうな、ノック式の黒ボールペン。
しかしノックの先端を押せば、瞬時に極細の金属針が飛び出てくる。
大峰エリコと、はぐれた後。
急いで自宅へ戻り、持ってきた。
ムラサキの手助けもあり、居場所を突き止め現在に至る。
「叔父さんにバレちゃうかな……いや、バレるよな……うん」
と、頭を抱える。
海藤に打ち込んだ、毒針。
本来”仕事の標的”にしか使用してはいけない。
なぜならば、これは”暗殺用”の仕事道具。
日常の生活に、おいそれと登場する代物ではない。
「……バレるよな、絶対に……」
ちなみに、シュンは神経毒の心配はしていない。
今回も使った毒は、司法解剖などの検査にも引っかからない。
それは、これまでの9人分の経験が物語っている。
ボールペンを、これまで数ある著名人に刺してきた。
だが、未だ依頼者の叔父や自分は疑われた事はない。
叔父いわく『暗殺潜入時の小さな失態はあれど。毒の痕跡は、ほとんどないに等しい』らしい。
『そっちは片付いたの?』
「姉さん、お疲れ様。姉さんのお陰で居場所もすぐにわかったしね……」
と、乾いた微笑み。
ムラサキ、数歩先に止まった車のサイドミラーに映りこむ。
「んで、そっちはどう?」
「ちゃーんと無事よ、エリコちゃんも。彼女の家でこもってるわ」
「ならよかった。できれば朝が明けるまで一緒にいてくれないかな?」
「優しいのね、本当……ええ、すぐに戻るわね」
「ありがと、姉さん」
「いいえ、シュンちゃんのためですから」
と、ムラサキの気配が消える。
どうやらエリコの自宅へ向かったようだ。
「筋肉痛に、1限目から講義、それに叔父さんとの”会食”か……ああ、しかも明日は絶対に大峰が騒ぐだろうしな……とってもうるさい1日になりそうだ……ははっ」
シュン、疲労した身体をひきづって、ゆっくりと帰路につく。
読了、ありがとうございます。
設定が先走った内容になりますが、今作は簡単にまとめていきたいと思います。
生暖かく見守っていてください。




