13/鏡の妖精さん②
「あ~やっちゃた」と思う事その2。
終盤と、序盤のちぐはぐさ。
序盤で散りばめたテーマ。
それが上手く終盤で回収できない。
「あれ、こんな曖昧な事を伝えたいわけじゃないんだけどな……」
本当に、あるあるですね(笑)
●住宅街/路地裏(夜)
誰の声なのか。
始めは全くわからなかった。
自分である大峰エリコ。
そして、目の前に迫っている海藤マサキ。
その2人だけ。
狭い路地には誰もいない。
『あらあら、こっちよこっち。貴方の手鏡の中よ』
「え?」
バッグの中身をぶちまけた拍子。
白桃色の手鏡も転がってしまったようだ。
蓋が開き、鏡面部分がこちらを見ている。
いや、本当に見ているのだ。
鏡面に映る着物姿の女性が、両の目でこちらを。
海藤からは、やや背後になっているからか。
そもそも欲情してエリコの声しか届いていないのか。
気づいた様子はない。
『まぁ一応、助けるけどちゃんと逃げなさいね?』
と、いうや否や。
着物の袖を口元にあて、何かつぶやく女性。
彼女の言葉に呼応する、汚れた手鏡。
刹那、手鏡から朧気な手が生える。
一瞬の出来事だったから形容しがたい。
白い霧のような、不透明な手。
それが、海藤の右足を掴み。
いともたやすく転ばせた。
突然の事で目を回す海藤を尻目に、思い切り力をこめるエリコ。
『ちょっとちょっと! 私も連れていきなさいよね、もうッ!』
と、騒ぐ手鏡。
考えている暇などなく、いわれるがままに手鏡を手におさめる。
あとは足に力をいっぱい込めて、走り去るだけだった。
×××× ×××× ××××
また、やってしまった。
エリコは走り疲れた後、後悔する。
住宅街の路地を縫うように走り回った結果。
また、2丁目に戻ってきてしまったのだ。
先ほどから自分の行方を追っているシュン。
今でも彼は3丁目付近を探している事だろう。
だが探し人であるエリコは、隣の地区にいる。
携帯も、バッグもない。
シュンへ連絡する術がない。
「このまま警察に行って……」
保護を頼んだ方がいいかもしれない、と思った矢先。
胸元に抱いた手鏡が震える。
『自分を探してくれている男を見捨てる気なのね』
「…………それ……どういう意味?」
『だって、貴方を守ってくれる男の子と合流できてないのよ。間違ってあのストーカーと男の子が出くわしたらどうするの?』
「…………」
確かに、と心の中で頷くエリコ。
『まぁ自分だけ逃げたいのなら逃げればいいんじゃない? そっちの方が身の安全は確保できるわけだし。好きになさい』
「…………」
なぜだろう。
手鏡の女性の言葉には妙な棘がある。
反面、シュンの事を心配しているのか。
または、していないのか。
よくわからない言い回しだ。
「変な手鏡」
窮地を助けてもらっていう言葉ではない。
しかし、どう展開が転んでも興味がなさそうな様子に何かひっかかる。
『手鏡じゃないわ。私の名前は……そうね”鏡の妖精”とでも呼んでちょうだい』
「……じゃあその”鏡の妖精さん”はなんで私の事、助けてくれたの?」
『それは貴方が大事に使ってくれるから、日頃の感謝を込めて』
「まだ買って1週間も経ってないけど?」
『んじゃ持ち主である貴方の悲鳴が聞こえたから、助けなきゃっと』
「『んじゃ』って何よそれ? てか、鏡の中でも声って届くの? なんで鏡の中の貴方と会話ができるのよ?」
『それはね――』
「それは?」
『ひ、み、つ』
「こんにゃろ」
エリコ、つい、この手鏡を落として割りそうになってしまう。
妖精が勝手に住み着こうが、一応、シュンからの大事なプレゼントだ。
一旦、冷静になろう。
「でも、ありがとう。さっきは助かったわ」
『…………へぇ……』
「なによ?」
『ちゃんとお礼いえたのね。偉い偉い』
「馬鹿にしてる?」
『ええ、真っ向から。今、気づいたの?』
――やはり、割ろう。
そう思ったエリコだった。
読了、ありがとうございます。
設定が先走った内容になりますが、今作は簡単にまとめていきたいと思います。
生暖かく見守っていてください。




