誰にも見られていないはずなのにー女子小学生のおもらし(another version)ー
ある冬の寒い日。
いつものように教室で授業を受けていた。
すると突然、隣席の木藤さんから声をかけられた。
「やばい…ウチ、トイレ行きたい…」
僕は戸惑った。木藤さんは女子で、男子である僕とはあまり話したことがない。そもそも僕が木藤さんについて知っていることと言えば髪型が特徴的(ポニーテールと呼ばれていることを後に知った)なことくらいで、木藤さんの性格など詳しいことは知らない。
なんて答えればいいのだろうか迷っていると、木藤さんは続けて
「どうしよう…」
と言ってきたので、とりあえず
「先生に言ってトイレ行かせてもらったらええやん?」
と答えた。すると木藤さんは黙ってしまった。
その言葉づかいから相当トイレを我慢しているのは分かる。しかし僕は尿意が無くても休み時間には定期的にトイレに行くようにしているので、授業中にトイレに行きたくなったことはほとんどなかった。だから木藤さんにかけた声も、どこか他人事のようだった。
数分後、ふと木藤さんを見て驚いた。苦しそうな表情でうつむいており、額には汗もかいていた。足元を見ると、内股にして足を震わせていた。そんなにトイレを我慢しているのかと思って見ていると、さらに驚いたことに、彼女は股間を右手で押さえた。足をモジモジさせ股間を手で押さえるというのは、誰がどう見ても「私はトイレを我慢しています」とアピールしてるとしか思えなかった。幼稚園児でもないのにこんな恥ずかしいことができるのかと思った。ただ一時的に尿意が収まったのか、木藤さんはすぐに股間から手を放した。頻繁に股間に手を当てたり離したりする様子を見ると、本人も無意識のうちに手が動いていたのかもしれない。
僕はしばし木藤さんを眺めていたが、親から「他人をじろじろ見てはいけません」などと言われていたことを思い出し、前を向いた。しかしどうしても授業に集中できず、木藤さんのことが気になってしまった。
すると先生は「それじゃあ、この問題についてみんなで考えてみよか。自由に話してええで。」と言った。教室内がワイワイガヤガヤしだし、僕も他の友達(もちろん男子だが)と話し出した。
すると先生が僕の席に近づいてきたときに、木藤さんの声が聞こえた。
「先生、トイレ…行ってきてもいいですか?」
すぐに先生の「ええよ」という声が聞こえた。その直後、あわただしく椅子を動かす音、足音、廊下へのドアを開ける音が聞こえた。顔は反対側を向いているが、恐らく木藤さんがトイレに向かって駆け出したであろうことは容易にわかった。
~数分後~
しばらく友達と話していて木藤さんのことを忘れかけていた頃、突然隣で椅子が動く音がした。振り返ってみると木藤さんがいた。(ずいぶん長い時間トイレに行ってたんやなあ、もしかしてウ○コでもしとったんかなあ?)とか考えていたが、木藤さんは席に着くなり泣き出した。そういえば泣く直前の木藤さんの表情も、どこか落ち込んでいたようだ。(トイレに行った後やからスッキリした反応をする思ってたのに、一どないしたんや?)木藤さんの謎の行動に、僕は授業内容など忘れて考え込んでしまった。
僕は木藤さんに声をかけてみた。
「大丈夫?」
しかし木藤さんは首を横に振るだけで答えてはくれなかった。(首を横に振る、つまり大丈夫ちゃう…どういうことや?)(もしかしてトイレに間に合わへんかったんかな?でも4年生にもなってお漏らしなんかかせえへんやろ…。)などいろいろ考えるが、結論は出なかった。
やがて休み時間になると、木藤さんはまた廊下に出て行った。そのときに木藤さんの後ろ姿、特にズボンの尻の部分を見てみたが、特に濡れている様子はなかった。濡れていれば「お漏らし」という結論が出たのだが、お漏らしすれば当然濡れるであろう箇所が濡れていなかったために余計混乱した。
その日の授業が終わった。僕は放課後は学校に残らずさっさと帰ることにしているので、いつも通り帰ろうとした。すると僕の前を木藤さんが歩いているのを見つけた。さっきのは一体何だったのか気になったので、校門まで来たところで木藤さんに声をかけてみることにした。
「木藤さん…」
すると少し驚いたように「何?」という返事が返ってきた。怪訝そうな顔をしているが、思い切って訊いてみた。
「トイレ…間に合わへんかったんか?」
すると木藤さんは顔を真っ赤にして
「な、なに言うてんの!?4年にもなってそんなわけないやろ!」
と言って、すぐに走り出して立ち去ってしまった。明らかに慌てている様子だった。これを見て、僕は当時知ったばかりの「図星だった」という言葉が当てはまるのかと思った。なんでズボンが濡れてなかったんだろう?トイレットペーパーでふき取ったのかな?などといった疑問は残るが、「木藤さんがお漏らしした」というのは間違いないようだ。
ただし翌日以降、僕はそのことを友達に言いふらしたりはしなかった。これは僕しか知らない、僕だけの秘密にしておこうと思ったのだ。実際、4年生にもなってお漏らしなどすればクラス中の話題になるはずだが、そんなことはなかった。
余談だが、僕はこの一件以降に「お漏らし」に興味を持つようになってしまった。成長した後も若干特殊な性癖を持つことになってしまったが、当時の僕はそんなことを知る由もなかった。
(完)