第8撫で ~訓練☆~
「ほら立て坊主まだお前さんが手伝ってくれたおかげで時間には余裕がある」
アレスさんは立ち上がる、俺はそれに釣られて立ち上がり、彼と対峙する。
「いいか?人には得意不得意がある武器やら回避方法やら戦闘中に敵の動きを観察したりな、
本来なら長所を伸ばしながら、短所を補いたいんだが最初のうちは何が得意で不得意なのかわからないだろ、
だから組手感覚で訓練するぞ、どんな方法でもいい俺に攻撃を当ててみろ、俺はお前さんに攻撃はしない」
攻撃を当ててみろか…正直攻撃を当てるだけなら簡単に思えるがそんなんじゃ数秒で終わってしまう可能性がある、
しかしそれでもアレスさんがそれを選んだ理由、
俺のファンタジー脳がフル回転し導き出す、
なるほど多分この訓練【アレスさんに一度も攻撃を当てらずに終わる】当てようとしても
超人的な行動で回避されるな、主人公の訓練イベはそんなもんだ、
なら俺ができることは今で出せる限界を確かめること。
「わかりました行きます」
宣言と同時に駆け出し体重を乗せながら拳を放つ、
当たるギリギリのところで横に避けられる、予想通りだ
ぎりぎりで避けることによってもう少しで当たるという希望を持たせるのか、
意識は攻撃ではなく観察だけに集中させる、
よけられた拳は空を切りそのまま空を切る
当てるだけ、当てるだけでいいんだ、力を込める必要はない、力を込めれば力を込めるほど意識がそっちに向かってしまう、
攻撃を繰り出すたびに左右に回避されてしまう、
俺もただ拳を前に突き出すだけではない突き出した後アレスさんが回避したほうに向かって腕を横に振るったり足払いを取り入れたりするが
後ろの飛びのき一つで回避されてしまう、
頭の中でこの攻撃の後にこう回避されたら次はこうすると組み立てて行くが、
思ったとおりに体は動かない、人間は体を動かすときに頭の中で人形を動かしていると聞いたことがある、
自分が運動神経が悪いのはわかっている、頭のなかで考えた超人的な行動がすんなり出来たらきたら苦労はしない、
息が荒くなり体が重くなっているのがわかる、この感覚は現実に近いまるで体育授業でマラソンをしたような、
だがこの疲れている状態で頑張ってこそ人間は成長できる、
体が限界に近づいてきているのがわかる、この感覚久しぶりだ
努力が嫌いな人間がいたりするがあいにく俺は嫌いじゃない、もう少しで越えられそうな壁を努力で超える瞬間が俺は好きだ。
俺の意味のない攻撃をさんざん見続けたせいかアレスさんの動きが単調になっていく、
もう恒例のように右の拳を前に突き出す、当然化のように右に回避される、
すかさず右腕を振る、後ろに半歩下がる、
ここまではさっき何回もやったパターンの一つだ、
だが違うのは最後の一撃の為全てに力をあまり込めていない
右手を出すのと同時に踏み込み前に飛ぶ。
これには予想はしていなかったのかアレスさんの行動がワンテンポ遅れる、
そのまま俺の渾身の頭突きはアレスさんの胸に引き寄せられるように吸い込まれ衝突する
重力によって俺とアレスさんは地面に落ちる。
同じ攻撃を繰り返すことによって回避行動をパターン化させ、集中力を下げる
もし俺の行動すべてに警戒していたならこの攻撃はよけられただろう、
つまりアレスさんは俺のことを少なくとも弱いと思っていたわけだ。
「まさかのあそこで頭突きか、捨て身にもほどがあるな、実践だと死ぬぞ?」
アレスさんは笑顔でそう言う、
「大切な人を守るためには捨て身になることも考えてますから」
「お前を失った世界でどんな思いで彼女が過ごしていくのかわかっているのか?」
彼は目を細め問う
「ええ、もしそうなったら彼女にはつらい思いをさせてしまうかもしれませんが、
彼女には生きていてほしい、それが俺の覚悟です」
「無責任だな」
確かに無責任かもしれないだがそれが俺だ、やりたいことをやる、守りたいものを守る
それが俺の行き方だ、
自分でも何を言っているかわからないが。
「お前は昔俺が一緒に旅をしていた仲間によく似ている」
「仲間ですか」
「ああ、いつも俺らを守るために動いてな、俺らの気持なんか知ったこっちゃねえって感じだった、
自分が傷ついても、泣き言一つ言わずにいつも笑顔でよ、別れてから連絡を取り合ってないから、
何処にいるかわからないが、とにかくそいつに似てるんだよ。」
アレスさんは俺の頭に優しく手を置く
「ほっとけないよなあ、安心しろお前が捨て身の方法を使わないようお前を鍛えてやる、あの嬢ちゃんも守れて自分も守れるようにな」
なあいったいどこにいるんだよ、お前が俺たちの前から消えて10年はたった、
手紙の一つでも寄こしたらどうだ?まあお前が俺らの安全を確保するために姿を消したことは感謝してもしたりねえ、だがお前はまだやりたいことがあったんだろ?
故郷を復興させるって言っていたじゃないか、故郷で待っている幼馴染もいたんだろ?
お前はいつもそうだ、人の気持ちなんて考えないでただ正義と希望と仲間のために剣を振るった、
復讐に溺れることはなく、悪に囚われることはなく誰にでも優しかった、俺はそんなお前に憧れたんぜ、
もしお前がこの広い世界の何処かで助けを待っているなら、俺がお前を必ず救い出す、
だからもう少し待ってくれ、全てが終わったらみんなでお前を迎えに行くからよ。
お前が愛した世界を、お前が救った世界を今度は俺が救う。
「アレスさん?どうしたんですか」
「昔のことを思い出してな」
その時強い風が彼の髪を揺らす。
「俺はお前の味方だよ」
目の前の少年か彼と重なった戦友かどちらに言ったかは分からない
彼のつぶやきは風に乗って消える、
来るべき時が近づいてくるのを感じながら
いったい仲間とは誰なのか?
来るべき時とは。
一般人の戦闘書くのむずいなあ、どこぞの白髪超人少年だったら簡単なんだけどなあ・・・・