第6撫で ~思い出☆~
「おい坊主ちゃんと下で受けとれよ!」
アレスさんが木に登り果実を切り落とし、俺が下で受け取る。
あの時食べた黄色い果実はテルカの実というらしいし
シュタの森の大半に生っている果実らしく、村で飼っている家畜以外で貴重な食糧らしい。
カゴ満杯のテルカの実を見て満足そうにうなずくアレスさん。
「最近村の備蓄が少なくなっていてな、テルカ採れたてのものと違って少し味は落ちるが乾燥させて保存もできる貴重な保存食だからないくらあっても困らない
だが思ったより被害を受けている木が多いな」
アレスさんに鍛えて貰うように頼んだ次の日
俺はアレスさんと食料調達に来ていた
クロは村でお留守番だ。
今現在ラルコット村には23人の人が住んでいるらしい、
昔は今の倍以上の村人が住んでいたそうだが、安全のために他の街や都市に行く人が多かったため今の数まで減ってしまったらしい。
その23人分の食料調達の半分近くをアレスさんが担当している、
なぜかというと、村人のうちお年寄りが12人、大人が5人、子供が6人
と、
あまり動けないご老人方の数が多いからだ、子供は村の外で食料調達など危なくてさせられない、
かといって大人をほぼ食料調達に行かせたら村が何かあった時が危ないという村長の意思らしい。
村の中でも畑を耕し作物を育てたり、家畜を育てたり、手が空いているものは肉や果物を加工し保存ができるものに変える作業もしているらしいのだが、作る、取ってくる速さと消費の速さがあっていないらしい、
純粋に作業できる人が少ないのだろう。
「だからこうやって少しでも多くの食料を確保できるように荷物運びがいてくれて助かる」
「村人全員でほかの街に移り住むとかは考えないんですか?」
「二年前くらいだろうか村長に相談はしたんだがな、「少なくとも今のこの村に全員を移動させるほどの馬車を借りる金もないし結構な大移動になるからご老人たちの体にも負担がかかる」て言われちまった、
名産品の一つでもありゃあいいんだが生憎この村と付近には珍しいものなんてなくてな。」
なるほど確かにお金は必要だ自前で馬車を作るということもできなくはないが、
作ったところでこの村には場所を引く馬がいないか。
「そういえば村の中の放牧されていた大きい生物、あれに馬車の荷台を引かせるというのはどうでしょうか?」
川で木の棒の先に糸と針をつけそこら辺の土の中にいた虫を針に括り付けた釣り竿のようなもので、
魚がかかるのを今か今かと待っている状態で聞いてみる。
食料調達に出る前にアレスさんと一緒に村の柵の周囲を見回りしたときに、大きな猪みたいな体格の生物が柵の中で飼われていた。
「ああコブリャルか、俺もそれは考えて荷馬車に近いものを使ってやつにつなげて見たんだが、
言うことは聞かないし、全然重いものを運べる気配もなかった、荷馬車を引くには最低でも20匹は必要なんじゃないか」
笑いながら彼は水面をじっと見つめ、素早い動きで魚を捕まえる
現状お年寄りを連れ他の街へ行くことは不可能なのか。
「まっ爺さん婆さんは生まれも育ちもここだし離れたくないってやつもいるんだろうさ、
実際子供と共にほかの街に移り住んだ奴もいる、この村から離れたくない人を、
他の街へ無理やり引っ張っていくのはどうかと俺も思ってな。
それに村から誰もいなくなるってことは、村の存在が消えるってことだ、
俺はこの村に恩があるしここを亡くしたくないって気持ちもあるからよ。」
その気持ちはわからなくないかもしれない、
俺は一軒家に住んでいた、両親は世界を飛び回っていた人などで家には年に一回帰ってくるか来ないかなんだが…
まあその話は置いといて俺が住んでいる一軒家が立つ前は、俺の母親の母親、祖母が住んでいた土地だった、
カラオケの先生だったり市のホールのようなところで歌っていたり、
いろんなことをしていた祖母が住んでいた、家が数件立つほどのあまり大きいとは言えない土地だが、
老後の祖母は土地を持て余していた、
そこで土地全部を売り叔母は近くのマンションへ住み始めたのだが、
当時の俺は中学生くらいだったか、昔親がいない時によく遊びに行ったりしていた、
昔ながらの平屋の家、夏には気持ちい風と風鈴の音に癒されながら、スイカを食べた思い出。
悪戯をして怒られた思い出、祖母と一緒に住んでいた伯父と一緒にゲームをした思い出、
たくさんの思い出が詰まった家が壊されてしまうというのは当時はたまらなく悲しかった、
壊してほしくなかっただが、家は壊され平地にされ新しい家が五件ほど建ち、
その一つを買い生活を始めた、俺もそうだが母親も俺以上に思い出が詰まった家を失うと言うのは悲しく寂しいものだったと思う。
「そうですか、たしかにいろいろな思い出が詰まっている村をそう簡単に離れられないですよね。」
「ああ、だが身の危険を感じるようなことがあったら俺が担いででも連れていく、あの人たちにはまだ生きていてほしいからな、村は大事だが1番大事なのは生きている事だ」
魚を20匹近く取った後近くで昼飯の準備をする。
俺は食べれないような小さな魚しか釣れなかったが。
木と石を使い火をおこし、魚を木の串にさして焼く。
アレスさん曰く肉が焼ける匂いより、魚が焼ける匂いのほうが魔物が寄ってこないらしい。
「んで?一日たったがどうだ坊主、記憶は戻ったか?」
火の温度調節をしながら彼は問う、
「いえ、残念ながらでも、頭が覚えてなくても体が覚えている事もあるので日常生活の方は大丈夫ですが、
自分の事は何とも、
今日は朝から新しい事ばかりで、体が思ったようにスムーズに動けないので、記憶を失う前はこんな苦労経験したことがないんでしょうね。」
「なあリューヤ」
「?」
「俺は頭で考えるよりも行動するタイプだ、頭脳戦なんてもってのほか、正直お前さんが嘘を言っているのか本当のことを言っているのか俺にはさっぱりわからねえ、
だが一つだけ言っておく」
彼はまっすぐ俺の目を見つめる、
重い空気、威圧感というのだろうか?
そんなものが体にまとわりつき、体が重くなったような気がした
「記憶を取り戻して、お前が何者かだったとかは正直興味ねえ、
でもお前さんが家族を村の人を傷つけるというならば、俺は絶対ゆるさねえ、
たとえ世界の果てでもどこに逃げたって必ず追いついて息の根を止める、あの嬢ちゃんもな」
冷静に彼はそう言い放った、
脅しでも何でもない彼は本気だ
「わかりました、約束します絶対に村の人達を傷つけるような事はしないと、」
アレスさんを見つめ返しながらしっかりとそう宣言した。
暫くの沈黙のあと彼は笑い出す。
「そんな貧弱な体じゃアリシアにも勝てないなわっはっは」
腹を抱えて愉快そうに笑うアレスさん。
「そうですね、子供一人守れないような自分になりたくなくて、
アレスさんに僕を鍛えてもらうんですから」
「そうだったな、よし魚が焼けるまでの間ちょっと稽古でもつけてやるか」
サブタイトルが毎回適当すぎる・・・・
前回とか~地図を見たところですぐに覚えられる人っているのかな☆~
ってお前は何を伝えたいんじゃい!!