4.幼女相手に言い負かせない
幼女は、白髪ロングで灼眼。顔もノースリーブの真っ白なドレスからのぞいている両腕も、雪色の肌をしている。
「だ、誰!? どこからどうやって入ってきたの!?」
カナ子がようやくの思いで声を出すと、幼女は軽く首を振って鈴が転がるような声を出す。
「質問は、一度につき一つだけにしなさいよね」
言葉が明瞭で、どうやら幽霊ではなさそうだ。
あとは酩酊して幻影を見ているかだが、頬をつねると痛いので、夢を見ているわけでもなさそうだ。
となると、部屋に上がり込んだ侵入者となるが、幼稚園児の強盗ということはないだろう。
それにしても、勝手に上がり込んで偉そうな口の利き方をするとは生意気だ。カナ子は恐怖の感情を塗り替えるように、怒りが湧いてきた。
「何言ってるの! あのね、人の家に勝手に入ってはダメよ!」
「何言っているの。花を粗末にする方がダメよ」
なかなかどうして、言い返してくるではないか。
「聞いてる? 入っていいですかって聞いてから、人の家に入るの」
「聞いてる? 花が泣いているわよ」
カナ子は肩をすくめて首を左右に振った。
「誰なのかを教えてくれたら、花を取ってきてもいいけど」
「花をあそこから出してくれたら、教えてあげてもいいわよ」
一歩も引かない。幼女だと思ってなめてかかっていたが、もしかしたら幼女の背丈の大人なのか。
相手をしばし睨みつけたカナ子だが、結局は「はいはい」とため息交じりに言葉を吐いて、ヨロヨロと席を立った。