16.決心
その後、付箋に書かれた数字は、なんと1等を的中していたことが判明した。
また1等の該当者はおらず、予想当選金額は45億円だった。
つまり、妹が握りしめていた紙には45億円分の価値のある数字が書かれていたのだ。
これでわかった。数字を書いた本人が買わなければ1等が当たるのだ。
ならば第3案――他人が付箋に書いて自分が買う――だが、カナ子は第1案で妹を間接的にでも怪我をさせてしまったことに強い後悔の念を覚えたので、それを実行するのを中止した。
「今まで働きもしないで何をやっていたんだろう……。楽してお金を儲けようなんて、はしたない下心で妹を使い走りさせて怪我させて……。最悪の場合、妹を死なせたかも知れないのよ! お金なんかより大切な物を失いかけたのよ!」
彼女は両手で頬をパンパンパンパンと強めに叩いた。
「うん、これで目が覚めた」
そして、モニター画面の端に貼ってある記入済みの付箋と、最後の1枚となった未記入の付箋をチラシに貼り、それを筒状に丸めた後、手ぬぐいでも絞るかのように固くねじり、机の横のゴミ箱へねじ込んだ。
と、その時、背後のドア付近でコトンと音がして、視線を感じた。
背筋がゾッとした彼女は、恐る恐る振り返る。
しかし、ドアは閉まっており、そこには誰もいなかった。ドアノブに手をかけてソッと開き、外を覗いても人影はない。
「視線を感じたのだけれど……」
彼女は、もう一度周囲を見渡して、首を傾げた。
そんな彼女の後ろでは、ボウッと姿を現したフルールがゴミ箱の中から丸められたチラシを手に取ってサッと撫でると、中から付箋が現れて手に吸い込まれた。
そうしてカナ子の背中を見てニヤリと笑い、カナ子が振り向く直前に煙のように消えた。