15.買いに行かせた相手が事故に遭った
マンションの外に出ると、停まっている乗用車のそばで自転車が横倒しになっていた。その近くで人が倒れていて身動き一つしない。
あれはヨウ子だ。自転車は自分のだ。
自転車でマンションから車道に出た妹が、いきなり車にはねられたのだ。
現場に駆けつけたカナ子は、気が動転して妹の名前を叫ぶばかり。救急車を呼んだのは、自転車をはねた運転手の方だった。
救急病院で治療待ちの不安な時を過ごしていると、まず母親が、遅れて父親が血相を変えて見舞いにやってきた。
カナ子は、自責の念で沈んでいるところへ、さらに2つの重しに押さえつけられた気分になった。
「カナ子。ヨウ子は自転車に乗って、何しに行ったの?」
「……買い物」
「一緒に歩いて行けば、こんなことにならなかったのに」
「…………」
「なぜ一人で行かせたの?」
言えなかった。
ロトを買いに行かせたなんて。
自分が買うと当たらないからなんて絶対に。
でも、いずれ妹の口から今回のことを告げられるだろう。
職にも就かず一攫千金にうつつを抜かすとは何事だ、と非難され、雷が落ちるのは明白だ。
治療室から医師が出てきて、ヨウ子の怪我は全治4週間と告げられた。
青ざめたカナ子は放心状態になり、両親に付き添われて病院を出た。