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レスできました~


今回も短めです。

「自分は死ぬ。だから最後のお願いだから、外へ。婚約の話が出ているという令嬢に会いたい。とシグリート殿下のたっての頼みでここに来ました。」


水色がかった灰髪の従者の名はコンラートといった。


「婚約の話はシグリート殿下のお母上のヒルダ様が、今朝のお見舞いで話されたのです。自分が死ぬ前提の話ばかりしている殿下に、『皆は貴方が元気になると信じている、婚約の話も来ている』と。涙ながらに励まされました。その少し後のお願いだったのです。殿下は今はほとんどベッドで過ごされている状況で、数ヶ月ぶりのわがままでした。貴女なら断れますか?」


従者はアリスティールを睨み付けるかのように、まっすぐ見据えた。


「ただ、まさか、婚約を断るためだけに来るとは思いませんでした。なんとかして希望を持たせようとしている母君の姿がら、痛々しかったせいかもしれません、自分のことを諦めてもらうらために。私としてはアリスティール嬢と会えば少しは気力が戻り、元気になるのではと思っていたのです・・・」


言葉の最後が悲しげに消えていく。


「シグリートのお母様である、ヒルダ様はこの外出をご存知なの?」


コンラートはかぶりを振った。


「言って外出許可が出るとは思えませんでした。多分会わせるとしても、アリスティール様を呼ぶ形になったでしょう。呼べば話が大きくなるから密かに会いたいとおっしゃるので。シグリート殿下が外出の際よくついて来てくれる騎士に、馬車と護衛を頼んでここにきたのです。」


アリスティールはちょっと考えてから、疑問に思ってた事を直接ぶつけてみた。


「この外出でシグリート様が体調を悪化させて亡くなれば、誰の希望だろうと、コンラートは罪に問われることはある?」


「・・・はい、あると思います。良くて投獄、最悪の事態もありえます。」


最悪=死だ。


「なら、私とギースとコンラートは死刑まっしぐらトリオですね」


アリスティールは自嘲ぎみに笑うと、コンラートは申し訳なさげに頭を下げた。


「私自身は覚悟してましたが・・・ご迷惑をおかけしています。」


「最悪にならなくても、シグリートが気絶したまま帰った場合、目立つので、事情を知る人も最小限のようですし、穏便に帰るのは難しいですよね・・・」


従者コンラートはうなずいた。


ギースは側にいたが、珍しく口を挟まず沈黙を守ってくれている。アリスティールの肩に手を置いている。それがなんだか一人ではないようでありがたかった。


自分が死にかけた茶会で、料理人が処刑されたという事実、主催の第5妃リステルは幽閉だったことから、身分や立場の弱いものにより苛酷な罰が下りやすいということは分かる。


また、日本のように『疑わしきは罰せず』、法がきっちり定められ『証拠がなければ推定無罪』なんてことは無い。科学調査ができるわけではないので、疑いは確定させるのが難しいのかもしれない。面子のためだか、他の理由か『疑わしきは罰せられる』世界。


自分が冷静すぎるのがちょっと不思議だった。前世だったら、もっとパニックを起こしていた気がする。


水越綾が死んでも親兄弟が悲しんでくれるのは、イメージがつかない。こちらの世界に来てもう日本に帰れず、家族に会えないと考えるのは淋しかった。だが、同時に記憶が戻った初期以外は帰りたいとはあまり思わなかった。


それより、アリスティールは自分が毒から生還した時の、バイエルトとソフィアの顔が浮かぶのだ。帰ってきた娘が、こんな事で死ねばあの二人はまたつらい思いをするのだ。そう考えると胸がチクチクするし、二度も娘を失わせるのは罪悪感で耐えられそうになかった。


自分ではないが、娘のアリスティールはあの二人にとって大事な存在なのだ。自分を『死なせるわけにはいかない』


両親だけではない。アリスティールは水越綾と違い、周りの人にとても大事にされていたのだ。隣のアリアスト家の面々や使用人たちも、色々怯えていた6歳の自分の言葉に耳を傾けてくれた。前世を思い出す前の人との積み重ねの記憶、そして5ヶ月の経験は純粋に周囲を大事だと思う気持ちを産んでいた。


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