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仕事で小説書いてる人はすごいなと、書いててあらためて思う日々です。


「うお、え?!なんか倒れちゃったんだけど」


さすがにやり過ぎたかと、ギースも焦ってキョロキョロする。手から一瞬注意がそれたのか、蛇はその隙にギースの手から逃げ出した。


一瞬呆然とした、アリスティールと従者の少年が声を上げて駆け寄った


「王子!!」


二人の呼び掛けはかぶる。それを聞いてギースが倒れた銀髪の少年を見る。


「王子・・・って、え?もしかして、こいつシグリート王子、げっ」

「逃げんな」


アリスティールは回れ右して逃げ出そうとしたギースの襟首を掴む。


「いや、怒られるし」

「逃げないで。怒られるだけではすまないわ。」


アリスティールはギースの緑の目をまっすぐ見ていい放つ。


「下手したら、貴方死刑よ。」


何も考えずに、気づいたら出ていた思いつき。真剣な怒りを含んだ口調に、ギースが黙って止まった。自分のせいで王子が倒れている現状に、何か気づくことがあったんだろう。


「大丈夫です。息はあります。頭も打っていないかと」


一足早く駆け寄り、床からシグリートを抱き起こしたのは執事だ。二人に従者の少年が寄り添い、少しほっとした顔をした。


「医師をお呼びせねば」

「駄目です。王宮に急ぎ戻らねばなりません」


従者は主人を抱き上げる。


「ちょっと待って」


執事と従者の二人の言葉をアリスティールは遮った。何かまた言いかけるのを


「ちょっと待って!」


と、制止した。自分で言った言葉が、ものすごくひっかかった。ギースをちょっと脅すつもりで大げさに言った死刑という言葉、もしかして本気であるのではないだろうか?王子に危害を加えて、病状を悪化させた。


多分、従者が王子を王宮にと言ったのは、「医師も魔術師も治療できず遠からず死ぬ」というシグリートの言葉から、民間るはひ死ぬなら王宮でなければ色々まずいと考えたからかもしれない。


あと、多分シグリートは本来ここにいるはずがない人間だから?ならこのままシグリートを帰すことは正解か?


治療が出来ない状態なら、帰れば遅かれ早かれ死ぬ。なんだか、ゾクゾクする。


「貴方」


従者にアリスティールは問いかけた。


「貴方たちここにどうやって来たの?」

「騎士団の馬車を借りて、馬車は一時間したらまた戻ってくる手筈になっています。それに乗って帰るしかありません。」

「それは正規の手段?非公式の手段?」

「非公式です・・・だから帰らねばなりません・・・」

「こっそり来たのね・・・」


帰ればうまく行く?この昏倒した状況で?抱えて入ればすごく目立つ。上手に根回しされているのかもしれないが、筋金入りの悲観主義には、誰何され大問題になる未来しか見えない。


1時間、そんなに話していないから、半時間以上ある。


「アルバートさん、治療魔法使えるお医者様か治療師急いで連れてきて、10分くらいで来れる人探して、秘密厳守できる人。」


執事に急いで命じた。シグリートの従者には隣に客間があるから、主人をベッドに運んでもらう。


「従者さんちょっと私とお話してください。馬車が来るまで、できる範囲でやれることをしましょう。」


能力チートはない。だが、見た目6歳でも、25年生きた大人の人生経験値がある。合計しても執事のアルバートよりは下だが、少なくとも従者の少年よりははるかに年上だ。


馬車が来て帰らせるのは、保身としては最善だし楽だ。だが、治らないと言われているとか鵜呑みにして医師を呼ばなかったことは、後でつつかれかねない。言い訳としても、最低限治療は必要だ。


「あと約40分、ちょっとどうするか考えましょうか」


できるだけ穏便にすむよう、誰も死なないですむように。


一瞬水沢綾の記憶がよぎる。人に嫌われないように気を回し、怒られない言い訳を必死で考えて行動して、考えすぎて余計嫌われた人間のことを。


また、やっぱり空回りかもしれない。


でも、子供が死ぬのは嫌だ、あまり良く知らない銀髪の少年でも。虐待のニュースとかは前世でもすごく心が痛かったから。まだ純粋だった中学生の頃とかは、想像しすぎて泣いてしまった事もあった。


『私がそこにいたら、絶対どうにかして助けてあげるのに』


そんな事を考えた、前世の自分。誰かを救い誰かに必要とされたかった水越綾、だから。


そしてこちらで出来た友人、カエル王子が罪に問われたら・・・と考えると凍りそうな寒さを感じ、アリスティールは自分で自分を抱き締めた。


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