10 ギース、王都に一時帰還へ(1)
長くなったので、2つに割りますm(._.)m
クー、ギース、アリスティールの三人は街の手前で、馬車からクーを下ろす。館までは戻ってきた御者に馬車の手綱を渡した。子供だけの遠出ではなかった風を保つためだ。
犬の檻はそのまま馬車の中で、館に着いた時に下ろしあ。珍しい魔犬なのだが、ガルムを直接見た人は少ないし、パッと見はちょっと変わった中型犬程度。街をウロウロは駄目だが、館に運び込むだけなら、問題ないとギースが言ったからだ。
ギースとアリスティールを出迎えてくれたソフィアに来訪者がいることを告げられる。誰かを聞いてギースの顔がちょっと曇る。出てきたのはギースの1つ年上のジルだった。ギースを迎えに来たのだと言う。話からするとギースは王家からの頼まれ物のため、一人でアリアスト領に戻っていたらしい。
ジルはすごい困った感じで、ギースに小声で話しかける。ギースは聞いて、すごく不機嫌になった。
「あの王子、気分で人をふりまわすなよな・・・。仕事は終わったし、犬を預けてくるからちょっと待ってて、ジル兄さん。」
「お前は領地に行って、ひどい風邪で一週間も寝込んでることになってるんだ。あまり信じてもらえてないみたいだから、急いでくれ。終いに催促兼見舞いに、うちの領地に医者と一緒に行くとまで言われてる。断るのが大変な状況なんだってさ。ちなみに、その犬が例の犬なのか?置いていくのか?」
「見舞いねえ、通り道に用があるんだろうな。犬は親犬に即連絡とれるわけじゃないから、ここが一番安全だと思う。」
ギースがアリスティールの方に、近づいてきて耳にささやく。
「ごめん、アリス。王都から呼び出しがかかったから、秘密の庭で犬を預かってくれないか?」
「どうして?」
「仔犬二匹返す時も、親犬も警戒して隠れていて、連絡とれるのに1日以上かかったんだ。貴重な仔犬だから、変な奴らがすぐ嗅ぎ付けて来る。だけど、守れる人手や場所がない。あと、ちょっと俺が1日待てそうにないんだ。」
「あの庭でいいの?」
「ここまでは、遠くから見えないように、馬車ごと結界張って移動してきた。あと、あの庭なら誰からも魔法で中は見えないし、犬自体があの庭なら檻から出せる。他と違って、侵入も出来ないし、脱走もまず出来ないから。あと、あのクーってのが強いのはよくわかったしね。できるだけ、こちらには直ぐ戻る。だから、長くて一週間くらいお願いしたい。餌はミルクや生肉をあげてくれれば大丈夫。」
「解ったわ。ただ、餌も預りも、母様にも言ってもらっていいかしら?動物を預かるなら、私の独断は難しいから。」
檻の犬を目を細めて見ていたソフィアは、ギースの願いを快く了承した。ちなみに、彼女は普通の犬を飼い主に返す話だと思っている。
ギースとアリスティールは犬の檻を、秘密の庭に運んだ。ギースは犬に言い聞かせるように、親に連絡をとるので大人しく一週間待って欲しい旨を話して、首に宝石の飾りが煌めくベルトをつけ檻から出した。
「アリス、親犬には仲介者から、仔犬の無事を伝えて、一週間後以降で待ち合わせ場所を決めてもらう。」
「犬とそんな約束ができるの?」
「親犬とは言っても神霊クラスの魔犬だから、話せるし魔法も使えるよ。仔犬でもこちらの話す言葉くらいは分かるんじゃないかな?野生なのに話せば、首輪を受け入れてくれたし、俺たちに警戒する様子もない。こっちは「ワンワン、バウバウ」にしか聞こえないけど。」
「そんなにすごい犬だったの?!」
神霊級ってのはすごいのはわかるが、イメージが難しい。後光が射したような犬を想像してしまった。
「攻撃力もすごいよ。仔犬を探して、四、五頭のガルムの群れがノクターヌ領や、通り道のアリアスト領を襲う可能性もあったんだ。来たら数分で、街が壊滅するくらいの破壊力はあるから、人間じゃ多分止められない。仔犬が生まれるのも10年とかに一回だから、親も必死だしね。だから、実は今回はジル兄さんも来て手伝ってくれてた。二人でちょっとがんばり過ぎて疲れたけど。」
「ギース、ジルを兄さんって呼ぶようになった?前は呼び捨てだった気もするけど。あと、なんだかジルの雰囲気も変わったわね。」
「昔は兄さんって呼んでたんだけど、最近は確かに呼んでなかったか。今回はジル兄さんが頑張ってくれて助かったから。捕らえた後の手配や世話はまかせられた。御しやすい仔犬を狙って、大量の奴隷狩人が辺境に流れこんでてね、自分でもパンクしそうだった。ガルムが希少すぎて、王家とかにバレないようにうちの親は動けないし。偶然ちょっとアリスのとこの近くまで来たから、寄ったら魔力切れで倒れて1日ロスしたから困ったよ。」
それだけ、疲れていたという事なんだろう。王家に情報を渡せないのは、大貴族たちが神霊級のガルムの仔犬を欲しがる可能性が高いかららしい。狩人から聞いたという仔犬につく懸賞金も高すぎて、命が危ういくらいややこしい。
横に座るアリスティールの肩に、ギースが頭を乗せた。
「でも、倒れたおかげでアリスに看病してもらって、一緒にピクニックもできて楽しかった。」
ギースが少し嬉しそうに、目を閉じている。
「看病したっけ?なんか、ギース甘えてる?」
「甘えてるのかなぁ?アリスに随分長く会えなくて、なんだかつまらなかったのに。会えても変な奴がずっと一緒だったし、なんとなくちょっと肩を借りたくなった。」
ギースが目を開き、解放された喜びに、走り回る黒い犬を見る。
「ただ、ガルムの仔犬はくれぐれも逃がさないで。またさらわれたり事故に合うと、親が怒って大変なことになる。必ず早めに戻ってくるから。」
「わかったわ。」
ギースはもう行くのかな?と思ったが、彼はアリスティールの肩にもたれ動かない。なんとなくだが、何か逡巡しているような気配があった。
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