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※3/30に、文章が長いので、読みやすくするため2の部分を分割しました。
ギースと遊ぶのは外遊びや体を動かすものが多かったが、雨の日や木から落ちた後は外出禁止令も出た。
そういう時は廊下で走ったり、書斎で本を眺めることも度々あった。そういう時に本を開きつつ、この世界では常識だろう事柄を質問し、確認していった。
正直大人には、中身が転生した異世界人だとばれそうで聞けなかったのだ。
7歳になったギースは案外勉強しているらしく、意外に頼りになった。家庭教師はいまだに再開していず、簡単な文章の書き取りや礼儀作法はお母様ソフィアがアリスティールに教えたりしていた。
アリスティールもこの数ヶ月外出していないが、ソフィアも全くと言っていいほど外出していない。アリスティールが心配なのもあるが、それだけではないのかもしれない。
今日はギースが地図を見せて説明してくれていた。白紙の中に今いるリンドアリア王国から少し離れて、ライトレイア神の信仰の中心である、広大なライトニッツァ教皇国が小さな属国を数個くっつけた状態で載っているのだという。それぞれの国に近いところは森や川の名がかかれているが、あとは白い不思議な地図。
「この白いところは海?」
と聞くと
「海はこのあたり、ライトニッツァ教皇国の上を差し、そこから繋がってこのあたりまで、狭いけど海が続いてる。内海って呼んでるらしいけど」
「なら、空白地帯は?」
「そこは辺境、って呼んでる危なくて地図が作れない地域。この地図、国として囲われた領域以外は基本人外の生物、魔物や精霊の領域なんだよ」
「リンドアリア国も250年前までは、辺境だったんだって、はい話すより分かりやすいから、歴史の絵本」
その絵本はミリアリアとアルタードという二人の恋と冒険の話だった。聖剣で魔王を倒し、二人で王となって仲良く暮らしましたというおとぎ話だ。
これ神話じゃなくて、歴史?
魔王を倒してこの国リンドアリアができたという話は知っていた。王家リンデンバウムの祖なんだろう。だが、それがたった250年前だとは思ってもみなかった。素直に感想を述べてみた。
「魔王がいなくなって平和になりましたって感じかな?」
「平和にはなったけど、魔王はいなくなってないかな、多分」
「そうなの?本では魔王が死んでめでたしめでたしっていうって感じだけど?」
自分が家庭教師や母のソフィアに歴史として聞いたのも、似たようなおとぎ話だ。
「俺さ、あまりに元気すぎるから妖精の取り替えっ子疑惑が出て、一回ぶちぎれた父上母上にうちの宝石の坑道にぶちこまれた事があるんだよね、四歳で。」
え、四歳で??
「よ、よく、生きてたね。」
「一応死なないようフォローしてくれるように、その洞窟を預かる妖精に話通してあったらしいんだけど。なんか俺暗い坑道から平気な顔して帰ってきたらしいんだよね。妖精から『これ預かるのは命いくつあっても足りない、契約外』って言われて、即返されたらしい。」
ギース、妖精からすら返品された?
「面白くて再度一人で行ってニコニコ笑って色んな話聞いてくるから、さらに取り替えっ子疑惑が高まったらしい。」
「はぁ。」
つうか、今も塀とかあるのに、うちの庭に神出鬼没で現れるけど、どこから来てるかわからないって言われてるギース。四歳にして、妖精に一人で会いにいく強者とは、アリアストのご両親がいつも怒ってるわけだ。
父上母上的には俺の矯正無理って、匙を投げたって言ってたわ、とギースは笑って言う。
「『好きな話一個だけしてやるから、終わったら帰れ』って、大体即返品だったけど」
・・・・ドワーフにも嫌がられてない?
「その時にドワーフのおっちゃんたちが言ってたのが、『光の大魔王』の話。ドワーフのおっちゃんのじっちゃんのじっちゃんの時代に光の大魔王が、地上に降りてきてドワーフのじっちゃんたちが自分の意思ではその地に入れなくなっちゃったらしい。それがこの辺」
と言ってライトニッツァの首都を指差す。
「国を作る時に、ライトニッツァでもライトレイア神が魔王を倒したか、封印したってこと?」
「なんかちょっと抽象的ではっきり言えないけど、大魔王の使徒光の小魔王が時折降りてきて、その領域の理の乱れを治して行くって言ってたから、倒されたって訳じゃなさそう。あと地図のこの辺りには」
地図の空白の右角を指す。
「水の魔王の領域とかが近くにあって、そこでは珍しい鉱物や植物があるらしいんだけど、そこの魔王はずっと前にドラゴンと同化して、ウンディーネとか中心の民を守ってるらしい。他にも変幻自在の肉体を持つ闇の魔王とか色んな魔王の話が聞けたよ」
「ここらへんは?リンドアリア王国はどうって?」
それはね、とドワーフの口調を真似たギースが続ける。
「我ら精霊や妖精、魔物と称される物質より魔力の構成要素が多い種族は、主がいる領域に住むということは、そこで引かれたルールに従う契約をするに等しい。嘘や裏切りが当たり前の人間種より、我ら妖精には見えないルールは強制力が強いのだ。だから、我らはライトニッツァの地には、自分の意思では入れない。人間種を保護し、その他の種族を入れないルールがあるからだ。リンドアリアに引かれたルールはそれより緩いが、この領域の主が歴史として流しているその本の内容も一つのルールだ。よって我らはそれについては嘘もつけないし、教えている内容を尊重しなければならない。よって、何も話せない。」
「長々言って話せないんかい?! 」
「感想だけ述べれば、我らが知るリンドアリアの成り立ちは、その本より幸せで、その本より悲しくて、その本より残酷だ。答えはいずれ自分たちで見つけるしかないものだってさ」
なんか、さらに丸投げされた気がする。
まぁ歴史書にも載ってない事実だよ、知ってる僕えらいでしょ、とギースが胸を張りまくっている。
「でも、すごいね、ギースんちは。裏庭くらいのレベルにドワーフがいて働いてるなんて」
「いや、山3つ越えた山脈の高地だが」
「四歳の子供が自力でも行けるっておかしくない!?」
「そこらは、ドワーフのおっちゃん機密だ」
口に人差し指を当て、内緒って呟き、片目つぶってウインク。
「うちの庭にも神出鬼没だよね」
「それも機密だ」
「うちの庭もなの!?」
「でも、それだけ妖精と仲良いギースのおうちってすごいよね。親御さんもドワーフとお話できるわけだし」
「何言ってるんだ、アリスんとこもでしょうが?」
「ソフィア様のメイドのサラちゃん、暗黙の了解で誰も言わないけどドリアードとの混血でしょ?緑の髪だし。領地で庭師してるサラちゃんのお父さんは生粋のドリアード。うちのドワーフと同じで、雇用契約結んでるし」
「妖精と雇用契約結べるの!?」
「ライトレイア神を国として信仰してるから、表だってみんな言わないだけで、どこも結んでるよ。契約すれば裏切らないから人より頼りになるし、利益をもたらしてくれる。」
顔が人型で、一応化粧でもいいから肌色で、手足が2本ずつで獣耳とかも隠せれば雇ってくれるらしい。人間ぽければOKらしい。
「基本人間とよく似た顔と、二本ずつの手足持ってたら魔物でも住める。リンドアリア王国は力の弱い妖精や人間亜種の楽園って言われてるんだぜ」
さすがに人を食べたり害する種族はダメだし、人と大きさが明らかに違う、小人や巨人族は、グレーゾーンで街とかでは見ないけどね。
アリスティールに優しく説明してくれるギースは、いつものワルガキではなく、ちょっと知的なお兄さんに見えてしまった。大人の目から見ても。
ギース大好きです