16 秘密の庭を開きたい
見ていただきありがとうございます。
アリスティールは夜の鍵開け挑戦をした後、母ソフィアの観察を続けた。合言葉も間違ってないし、やり方も間違ってはいなかった。
魔法がまだ使えないのが影響してるかもと、書斎の基礎の魔法の本を読んでみた。ついでに、ちんぷんかんぷんの高度な結界の本を寝ながら拾い読んだが、まーったく役立つ感じはしない。
正直、アリスティール的に転生までしてきたのだから、すごい魔力があるはずと思っていた、チート的に。
だけど、色々な元素の基礎魔法を練習してみて、『全く何も起こらなかった』のは、結界の扉が開かなかったことより正直凹んだ。初心者用の魔法陣とかも描いてチャレンジしたが、うんともすんとも言わない。フリーハンドで丸を描くのだけがうまくなっていく。
髪色から土魔法だけはいけるんじゃと期待してたのに・・・。
「魔法使える世界にわざわざ来て、魔法使えないってどういうことー!!」
アリスティールは吠えた。きっと先生とかに教えてもらえないと使えないようになってるんだ!アリスティールは自分に言い聞かせた。
それでもアリスティールは無駄に思えた魔法練習で、もしかしたら何か目覚めているかもと諦め切れなかった。そのため、二度ほどこっそり鍵を持ち出し秘密の庭にチャレンジしてみたが、結局結界を開くことはできなかった。
しつこく頑張ったのは、決してお父様の愛人を見てみたかった訳じゃない。遊び相手が居なくて暇という事もあったが、アリスティールがどうしても確認したい事があったからだ。
アリスティールは前世を思いだし変化してしまった。その自分に対するお母様の思いを好意的に変えたのは、多分生垣の中にいる人だと思っていた。領地に来たが、お母様が天才と絶賛し宗教にはまったように見えるほど、心酔している人は見当たらなかったからだ。そして、お母様は今はその人のことを話題にも出さない。
まぁ、そういう点では噂にある異教の祭壇に教祖がセットで、生垣の中にいる可能性もぶっちゃけ否定はできないんだけどね。
そうこうしているうちに、秋が来て少し深まったくらいで、アリアスト家が王都に行くためにやって来た。社交シーズンへのドレスの仕立て等の準備もあるから、忙しいのよとデライラ夫人は言う。そこで知ったが、ノクターヌ伯爵家は今年冬は領地で過ごすから、一緒に王都に行かないことになっていた。今年はお互い行き来も無かったので、二泊こちらに泊まって行くらしい。
長男のディルはアリアスト子爵が領地にいった時、帰りに同伴し、既に王立学園に戻っている。次男のジルはギースと一緒は嫌なようで、一人で本を読むと言って寄って来ない。
必然的にギースと二人で行動になる、都合良く。
もちろん話題は、入れない生垣の結界の話だ。
「ほんとだ、ここに黒い石があるね。ここが鍵なの?」
「うん、鍵穴も何もないけど、そこで鍵を回すと生垣が開くの。ただ、その奥の石でも何かをするみたいで、二重ロック形式みたい。それでいまだに入れてないの。」
「これは魔石だね。なんか色々魔力を貯めたり、効率的に魔法を運用するのにつかわれてるみたいだけど。この使い方はすごいね。この石、魔力で宙に浮いてるし。」
「お母様が触って、合言葉か呪文みたいなのを唱えると開いてた。中はちゃんと庭でお花咲いてたよ。」
あと、ちょっとしょんぼりしながら、アリスティールはギースに報告する。
「あと、ちょっと書斎の本を読んで試してみたんだけど、私魔法が使えないみたい。開かないのはそのせいかもしれない。」
「うーん、アリスティールは魔力はあるんだけどなぁ、俺もなんとなく感じるだけで、細かいことはなんかよくわからないんだけどね。」
ちょっと、ギースはギースで考えこむ。
「アリスティールはこの中に、どうしても入りたい?」
ちょっと真剣なギースの緑の目。
「うん、入りたい。どうしても確かめたいことがあるの。」
アリスティールは即答した。もしかしたらもしかしたらという、焦燥感にも似た疑問と期待。
「ちょっと来て」と呼ばれて、ギースに森の奥へと誘われた。生垣の中で人が聞いてる可能性が高いからと、結構森の奥に入って、倒木に成らんで座って話を始めた。
「手前の植物系の魔法は物理的な生垣の合わせ技で、ちょっと俺も手が出ない。まぁ、そっちは鍵で開くみたいだから大丈夫だけど。俺奥の魔石を鍵とした結界の扉ならなんとかなるかも。ただ、ここまで強い魔力で構成された結界だと、絶対開けられるとは保証できないけど、アリスティール試してみる?」
「方法があるの?」
「うん。」
ギースはゴツゴツした黒い石をポケットから、取り出してじっと見つめる。
「入りたいなら力を貸してあげる。ただ、今からする事は内緒にしてほしい、うちの親にも。アリスティール守れる?」
「うん、守る。」
目を閉じ、ギースが何かつぶやく。黒い石の上、空中に繊細な模様の書かれた魔法陣が出現し、くるくる光って回った後石に吸い込まれた。
魔法だ。なんかすごくかっこいい!アリスティールは今までギースが魔法を使ったところを見たことがなかった。他の人が使ってるのを見たのは厨房の人が食材を焼いたり、治療師の回復魔法とか。それらのどれとも違ってた。
「すごいじゃない!何?今の?!こんなすごいのに、ギースこれをどうして内緒にしなきゃいけないの?」
アリスティールはすごくワクワクしてきた、この世界に来て一番興奮してるくらい。
「ドワーフのおっちゃんたちに警告されたんだって。俺の力は絶対人に言ってはいけないって、親にも。色々な人に知られたらまともな人生は歩めなくなるって。といってもおっちゃんたちが、やり方教えてくれて、しごかれたせいで出来るようにたんだけど。」
「何か今のは世界を滅ぼすような魔法で、ギースが変な魔法生物認定されるとか?」
「それはないない、今のは普通に皆に知られてる魔法だよ。ただ、俺がこの年で、普通必要な魔法陣も儀式も必要もなく、訓練もせず簡単に使えるのが問題ならしい。」
「自慢できそうなのにね。」
「俺この魔石への魔法付与、ドワーフのおっちゃんとこで内職として、散々やらされてるのね。最初は色々手順を踏んでたんだけど、魔法陣描いたりするのが面倒で、無しでやってみたらできちゃった。」
できちゃったで出来るものなのだろうか?普通出来ないから、できたことが問題なのか。ギースはドワーフのおっちゃんちに遊びに行って、仕事の邪魔するなら仕事を手伝えとやらされたらしい。
「魔法器具には魔法を付与された魔石が入ってて、普通に明かりとして使われてたりするのは知ってるよね?明かりの魔法が簡単なせいもあるけど、例えば今作った魔石それの100倍くらいの値段で売れるらしいんだ。これはアリアスト子爵である父上や母上を通して売ってみた、実際の卸売り値段だから、市場だともっと高いんだ。」
利益は建前上、子爵4割ドワーフ6割で、実際はドワーフに渡る半分3割は内職代としてギースがもらってるらしい。
ただ、原料の石を掘って売るだけよりすごく高く売れて、遊びに行くと大歓迎されるようになったよ。ドワーフもその辺りの金銭欲は強いから。俺結構お金持ってるから、アリスに今度好きなもの買ってあげると、太っ腹なことを言われた。
「でも、そういう高価なものを沢山作れる7歳の子供がいたら、どうなると思う?」
アリスティールは息を飲んだ。さすがにこの世界が日本ほど治安が良くないのは気づいていたからだ。ギースは苦い顔をしながら話す。
「そういう子供は親が貧しければ、親に売られる。親は売らなくてもそういう子供がいると知られればさらわれて、一生お金儲けの道具を作らされるか、兵器を作らされる。そうすると二度と家族にも会えず、外を見ることもできなくなるだろうって脅されたよ。特に子供だとその危険度は跳ね上がるらしい。だから人に知られると、まともな人生は歩めなくなるらしい。こうしてアリスに会って話すこともできなくなる。」
ギースは何故か、アリスティールの栗色の頭を撫ではじめた。
「うちの親は多少俺が魔法を使えることは知ってる。口外してないからそこは信用できるんだけど。金の卵を産むガチョウと知れたら、閉じ込めたりはしないが、一生アリアスト領に縛り付けようとするかもしれないね。そうすると、自由に未来を決めづらくなるし、結婚にも制限が入る。うちの親お金にはシビアだから、さ。」
ああ、そういやギースの将来の生活心配して、今からうちに押し付けようとしてたっけ。確かにそこに子供の意思は二の次だったなと、妙に納得できた。そして、ギースはまだ頭を撫でつつ、にっこり笑った。
「ただ、今は俺の子分のアリスは真剣にあの庭に入りたいみたいだし。この石をあげるよ。まぁ、俺がいるこの二晩でチャンスあれば、一緒に開いて中を探検すればいいし。」
だが、デライラ夫人とソフィアは久しぶりだったので、夜は二晩とも酒を飲み夜中まで語り明かしていた。そのため、そのチャンスは来なかった。そして、アリアスト家は旅立ち、アリスティールは一人で鍵を開けることに挑戦する。
そして、この『石を渡して、庭に一人で入らせた』という選択に関して、後々ギースは色々な意味で後悔することになる。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます
。
アクセスしていただいてるのを励みに、一つの話の最後のエピソードに行くまで、毎日更新を目指して書いてましたがストックが尽きました。
文章がすぐ長くなるので、一本書くのに時間がかかってしまってるので(ToT)
土曜日は仕事のため、次の更新は日曜夜か月曜になるかと思います。
また、読んでいただけるいただけると幸いです。




