第6話 氷のマナを司る大精霊フェンリル
カインさんは弱くないんやで……弱く無いんや。
ただ油断してるだけなんや!
そんな無の状態を俺の目が、女神の目が見ていると彼らは動いていないと言うのに、はっきりと次の瞬間俺の目に、脳には何が起こるかが全て見えてしまったのだった。
勝利を確信し凍りついた敵に背を見せた青髪騎士カインが、漆黒のゼルに心臓を握りつぶされ、血を吐きその後頭をたたき割られ、首をチョンパされて死ぬ光景が見えてしまったのだ。
そして両者の睨み合いは、漆黒のゼルのつま先が少し動いた事によって終わりを告げた。
勢いよく二人は飛び出し、激しく金属音を響かせあいながら打ち合っている。
そして今見ている限りでは、青髪騎士カインが優勢の様に見えた。
実際に打ち合っている漆黒のゼルの拳と青髪騎士カインの剣は全く目では追えないスピードではあるが、漆黒のゼルの体に徐々に傷が増え始めていたのだ。
漆黒のゼルは気合いを入れ、自分を鼓舞するかの様に叫びながら乱打している。
「おら、おら、おら、おら、おら、おらぁぁぁぁあ!
さっさと一発食らってお陀仏しろや!」
そんな彼の気合いの乱打すら、青髪騎士は涼しげな表情で交わし、弾き、受け流し、漆黒のゼルを挑発した。
「ふっ所詮は魔族の下っ端か、声だけでかくなるだけで、威力は然程変わらないな」
「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、ぶっころぉぉぉぉぉぉぉぉす!」
怒り狂った漆黒のゼルの体は攻撃を繰り返すほどに、大きくなっていった。因みに頭はハゲたままだ。
それでも青髪騎士カインの表情はブレない、彼がポーカーフェイスだからブレないのか?いやそれは断じて違う、なら何故そんなにも余裕があるのか。
その答えは今に分かるらしい。 青髪騎士カインは、乱打を軽く受け流しながら言う。
「そんなにかっかしていると僕に拳は絶対に届かないよ、それじゃ終戦といこうか」
そう言うと彼は青白く輝きを放つ魔力を高めながら、ぶつくさと詠唱の様な事言い始めた。
「我が身は愛で出来ている、我が心は熱く燃えている、氷のマナを司る氷精フェンリルよ、我を包み込み心を冷やせ、愛を固めろ、我が体は狼精の氷で出来ていた」
すると青髪騎士カインの体は青白い魔力の輝きを放ち、髪の毛の色も氷の様に薄く青く輝き、とても美しい。剣からも青白く輝きを放つとても綺麗な魔力が溢れ出している。
そしてその力の解放と共に、漆黒のゼルの足は凍りつかせられ、動けなくされていた。
「人間ごときが大精霊を扱えるだと!」
「これで終わりだ、漆黒のゼル!」
そのかけ声と共に青髪騎士カインの剣は凍てつく風に包まれ、それを空高く掲げて更に青白い魔力をどんどんと高めいく。今にも全てが凍りついてしまいそうな程に、あたりの気温は下がっていった。そしてその込められていた青白く凍てつくとても綺麗な魔力を、漆黒のゼルにめがけて全て解き放った。
「氷精の一撃!」
青髪騎士カインがそう言って剣を振り下ろすと、巨大な氷の狼が口をあけ広げて、突風と共に漆黒のゼルを飲み込んだ。
「くそがぁぁぁぁぁぁあ!!!」
そして漆黒のゼルは巨大な氷塊の中に、目を開けたまま閉じ込められた。
それを見て勝利を確信したであろう青髪騎士カインは剣をゆっくりと鞘の中に納めようとした瞬間、禍々しい魔力を感知した俺は叫んだ。
「横に飛べ……じゃなくて飛んでカイン!」
その瞬間漆黒のゼルを閉じ込めていた巨大な氷塊が、漆黒の魔力に破壊され、そのまま王の間を半壊させた。
間一髪で俺の声が、青髪騎士カインの耳に届いたおかげで、漆黒の魔力を避けることができ、死ぬことが無いと安心したが、その安心は一瞬で崩れ落ちた。
大気に漂っている漆黒の魔力の中から、怒りに満ちた声を上げ漆黒のゼルが青髪騎士カインの後ろにに現れると、そのまま大きく腕を振りかぶり、心臓めがけてふりおろそうとしていた。
「ぶっ殺すって言ったよなぁ、氷精のカイン!」
最悪な光景が俺の目の前に広がろうとしている。
絶望的な瞬間が。
どうやったらよくなるかアドバイスがもっと欲しいでありんす!
素直に面白いって言ってもらえても嬉しいしあかんところはあかんて言ってくれると勉強になるから喜びます。
次の話でアリエル(優)をどう扱うか悩むなー。
ブクマしてちょ、求める姿勢は大事w