第5話氷精のカインVS漆黒のゼル
強キャラは果たして序盤で出していいのか……
アリエル(優)の最初の敵は何にしようかな。
逃げるチャンスなのでは?と思いながらも、まず無理だろうなとはわかっていたので、今現在俺とクソ女神はどうすれば魔王退治をせずに済むか、もしくは勇者の役割を誰になすりつけるかを脳内会議をして悩んでいる。
青髪騎士カインが必死に戦っていると言うのに、本当に呑気でどがつくほどのクズだ。
「なぁーアリエル、カインって結構強いよな?」
「そうね、彼はアストレア大国の中だと100番内の強さにはいるわ、まさか彼に魔王退治をやらせるつもりじゃないでしょうね?このクズ」
俺は少し考えた。 楽に勇者の役割をこなす方法もあるのでは?と。
今現在、青髪騎士カインの戦っている姿を見ながら。
見ている限りでは、五分五分の実力なのだろうか、拳と青い剣が火花を散らしながら、激しく音を響かせぶつかり合っている。
リリア姫も何やら余裕そうに見ているようなので、おそらく青髪騎士カインはまだ本気を出していないのだろう。
だかしかし一進一退の攻防は、スキンヘッドクソジジイの無意味な叫び声と共に崩れ、青髪騎士カインが押され始めた。
「ウヒヒ!それそれそれそれ!そんなものか?小僧!
その程度の実力でお姫様を守れまちゅかね?
ウヒャヒャヒャヒャヒャッ!ウヒャァァァァア!」
少し額に汗を流している青髪騎士カインは、余裕をアピールするかのようにリリア姫の方を見ながらニコッと笑った。
そんな余裕を見せる青髪騎士カインの事を、不覚にも俺は一瞬かっこいいと思ってしまった。
ゴミクズが憧れてはいけない者に、自分がなりたく無い者に、今さっきまで他者に押し付けようとした者に憧れてしまった。
そしてそんな物に憧れてしまった俺は、目をキラキラと輝かせながら、女神アリエルに問うた。
「なぁーアリエル、俺もあんな風に……なれるかな?」
すると女神は「フフ」っと笑ってから言った。
「なれるよ、なんていたってか弱く見えるこの体は神の体なんだから、君が頑張れば彼のように強くなれるし、彼よりも強くもなれるよ、だけどまぁ〜努力出来ない人にはちょっ〜と厳しいかな」
女神アリエルからそう言われると、少し俺は自分自身を見つめ直すことにした。
今までの全ての行いを、脳裏に思い浮かべながらその場に立ちすくんでいる。
思い出す事と言えば本当に気持ちの悪いことばかりである。 例えばかわいいミニスカートの少女の後ろをつけて、絶対領域と呼ばれる部分を凝視したり、服の隙間から見える胸元を凝視したり、よだれを垂らしてはぁーはぁーしながら嫁フィギュアをホッペにスリスリしたり……なかなかにヤバイ事しか思い浮かばない。
そして俺はそんなキモい自分に初めて嫌気がさした。
まともな人間になりたいと、そう思えたのだ。
全ては目の前で必死に戦っている、青髪騎士カインのせいだ。
彼が頑張るから、彼が本気でぶつかり合っているから、あとイケメンだから……そんな彼の様に俺は強くなりたいと、彼みたいになりたいと強く憧れてしまった。
だけどそう思っていても元々何もしてこなかった自分には何もないし、何もできない……今現在あるのは変わり果てた自分の体、小さくてとても弱そうな少女の女神の体のみ。
大きく輝く紫色の瞳に、腰したまで伸びたフワフワとした銀髪に可愛いらしい幼姿のみが取り柄だ。
そして俺は小さく呟く。
「強くなりたい」
女神は少し嬉しそうに言った。
「なら今は私の力を使うといいわ」
彼女がそう言うと俺の体からは、銀色に輝くオーラの様なものに包まれ、髪の毛がゆらゆらと揺れている。
紫色の瞳は銀色の瞳に変わり、何故か小さな体からとてつもない力が溢れてきた。
そしてそれに気づいたスキンヘッドクソジジイは、青髪騎士カインをそっちのけにし、俺に向かって特効してきた。
「お前のその魔力……面白い、面白いぞ人間! 魔王様の害になる者よ、 今ここで絶対に消してやる!」
自分の動体視力では追えない程の瞬間移動の様なスピードで、スキンヘッドクソジジイが特効しながら、とてもドス黒い真っ黒な邪悪な魔力を手に集中させ、俺の首めがけて手を伸ばしてきた。
その突然の特効に驚いてしまった俺はガードなど出来ず、再び自分の死を悟ったのだった。
「せっかく頑張ろって決めたのに、もう死ぬのか……」
「死ねぇーーーー!」
だがしかし俺は生きていた。「ガキンッ」と金属音を立てて、目の前に割り込んできた涼しげな表情の青髪騎士カインが、その禍々しい攻撃をギリギリのところで剣で弾き、守ってくれたらしい。
そして青髪騎士カインは優しげな目から、鋭い目つきになって言った。
「僕から目を離すなんていい度胸してるじゃないか、アストレア大国魔王軍幹部、漆黒のゼル」
「俺の漆黒の魔力を止めるとはな、流石はアストレア王国騎士団副団長、氷精のカイン!」
そしてその後、両者は睨み合ったまま動けずにいた。
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というか賞に応募するので頑張るしかないw