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Crap Ur Handz  作者: 石丸優一
12/34

I'm Going Back to Cali

『Cali…カリフォルニア』

 

 

「だはは!やっぱりだ!まったくふざけた話だぜ!」

 

路地裏に響く大声。

 

イシザキのものだ。

 

「何だと!?」

 

すかさずスタンリーが怒号を飛ばす。

 

まずは予定通りイシザキとのコンタクトだ。

 

「違うわ!内容がどうこうって話じゃねぇんだよ」

 

そう言いながらイシザキがロブスターを指差す。

 

「…?なんだよ、サムライヤロウ」

 

ロブスターが低い位置からキッとイシザキを睨み付ける。

 

「こんなクソガキがあの『ロブスター』だと!?

それを信じろってのがブッ飛んだ話だっての!

確かに話自体は魅力的だ。

えー…と…アイス・キャンディだったか?

スタンリー達とやろうとしてるアンタの提案は斬新で面白い。

しかし…!」

 

やはり。

 

少年であるロブスターの見た目が面倒となった。

 

「あぁ!ごちゃごちゃと、どうでもイイ事を気にする日本人だ。

おい、スタンリー!コイツ…始末しておけ」

 

短気なロブスターも負けず劣らず反撃に出る。

 

「正気か…!!イシザキのアガリは相当な額だぞ!?」


当然、この発言にイシザキは黙っていられない。

 

「冗談じゃねぇ!そのくらいで消されてたまるか!」

 

彼は大柄な身体の持ち主だが、ジャケットの内ポケットから何とも可愛らしい拳銃を取り出した。

まるで映画の中の女スパイが太股に仕込むピストルの様だ。

 

「チッ…面倒な物持ってやがる」

 

だが、そのくらいではここにいる誰に対しても大きな効果が無い。

 

軽くスタンリーが悪態をついただけだ。

 

「分かった分かった。別に揉めに来たわけじゃないだろう?

じゃあな、イシザキ。

好きに…」

 

「まぁ待てよ」

 

ここで諍いを起こしたくないキャンディが事を沈めようとしたが、なぜかイシザキは銃をしまってそう言った。

 

「伝説のロブスター様が、こんなクソガキだってのは認めねぇ。だが、アンタの用意した仕事内容は大したもんだからな。正直なところ、最近は車も武器も流れが悪い」

 

「なんだ?結局乗ろうってのか?」

 

「そうだな、スタンリー。『本気でやろうとしている』のであれば」


話が目茶苦茶だ。

 

彼の真意が見えない。

 

「調子のイイ奴だな」

 

「黙れ、チビ」

 

しかし、ロブスターとの口ゲンカは続行している。

 

「とにかく!事は大マジだ」

 

スタンリーが話題を変える。

 

「俺自身も、今しがたロブスターの口から詳細を聞いて、正直驚いてる」

 

もちろんそうだ。

教会で外していたスタンリーは、何も知らないままここまで来ていた。

 

予測の範疇を超えていたそれが、彼を燃え上がらせている。

 

「一見、バカげた話だと笑い飛ばす奴も多いだろう。

誰もやった事などない。いや、出来るなんて思いもしないだろう」

 

「なーに、語ってやがる?」

 

「何が言いたいか分かるだろう、イシザキ?本気でやるしかないんだよ。

本気でバカになりきるんだ。冗談や遊び半分でやる仕事じゃねぇ」

 

スタンリーはドンとイシザキの胸を拳で突いた。

 

「全米を飛び回るキャンディの働きぶりも頷ける。

すべてを盗み出す為にはな」

 

彼等が狙うのは、国を動かす程の…想像を絶する莫大な金。


 

そうか。泥棒か。強盗か。

 

そう言われて話が途切れてしまえばそこまでだ。

 

だが、思い付きや貧困の末に家の近所の銀行へと強盗に押し入る若者とはわけが違う。

 

 

始めはドープマン達、クリップスから命を奪われまいと必死の思いで口から発した出任せ。

 

だが、よくよく考えてみれば不可能ではない事に気付く。

 

もちろん限り無く低い望み。

1%の成功率も保障出来ない。

 

正直なところ、一度カリフォルニアを離れてしまった時点で、ドープマンの目からは逃れている。

ただ落ち延びるだけならば、すでに彼が動く理由など無い。

 

 

しかし、ドープマンは分かっていた。

そして、彼にもそれは分かっていた。

 

『成し遂げる』

 

他人を信じないが、自分を信じている。

 

 

「当たり前だ。俺は必ず勝つ。そう決まってるんだよ。

だが、すべてを奪うんじゃない」

 

フードの奥でギラギラと光る隻眼。

 

「すべてを『食らう』」

 

アイス・キャンディ。


 

 

闇ブローカーのイシザキが同志として加入した後。

 

キャンディ達の動きは加速していった。

 

ロブスターやスタンリーが呼び集めた連中や、アンジーのリストに乗っていた者。

ミシガンに隣接している地域であれば、すぐに赴く。

 

だが、むやみやたらと数を募ったわけでもない。

過去のデータも重要ではあるが、実際に会ってみた時点で、瞬時に対象者の質を見極める。

 

多くの名うての悪人共に会っていく内に、次第とそんな能力がキャンディの身についていった。

 

 

 

彼がホーキンスと共にデトロイトへ来て、半月近くが経っていた。

 

それが短いのか長いのかは分からないが、彼を取り巻く人間は二十人を超えていた。

 

予想外の事態。

 

デトロイトの後に周る予定だった都市はいくらでもある。

 

ロブスターというカリスマ、交渉を行なうスタンリーや、さらなる情報を落としてくるケーニッヒという仲間達のおかげで、かなり早い段階で充分すぎる人材が集まってしまったのだ。


 

 


教会前の空気は重い。

 

空は厚い雲で覆われているが、そのせいでは無い。

 

ポツリ。

 

一滴の雨粒がキャンディの手の甲に当たって、彼にヒンヤリとした感触を与えた。

 

今にも本格的に雨が降り出しそうだ。

 

「さてと…みんな揃ってるな?」

 

まず、重々しい空気感の中、アイス・キャンディが口を開いた。

 

「スタンリー」

 

「おうよ」

 

 

そこにはすべての人間が集まっていた。

 

それで異様な空気が漂っているわけだ。

 

ライバルの同業者だったり、仕事は違えど以前は対立していた人間、抗争やケンカにまで発展した関係の者達もいる。

 

当然この場は必要以上にギクシャクしていた。

 

「なんだなんだ!どうしてここにアンタがいるんだ、イシザキのダンナよう!

あの時の貸しを覚えてるんだろうな!」

 

やはり。早速始まった。

 

「あーん?誰だてめぇは!

いちいちてめぇみたいな雑魚の顔なんて覚えてられねぇんだが」

 

イシザキが挑発する。


「ふざけやがって!お前が勝手にウチの客に介入してきたせいで、どれだけの痛手を被ったと思ってやがる!」

 

「だから、てめぇは誰だ!さっきから人違いも甚だしいぞ!」

 

イシザキにつっ掛かっているのはプエルトリコ系の若い男だ。

二人は今にもぶつかりそうな程、接近している。

 

「人違いじゃないだろう!名前まで呼んでるじゃねぇか、イシザキのダンナ!」

 

「名前や背丈が同じ…そっくりさんじゃねぇか?」

 

「バカか、アンタ!ブッ殺す!」

 

周りの連中が笑ったりはやし立てる中、男がイシザキの肩を掴む。

 

「おい!そのくらいにしておけ!お前ら、仕事から下ろすぞ!」

 

スタンリーが言う。

 

ロブスターは退屈なのか、墓石に腰掛けてあくびをしている。

 

 

 

麻薬、車、女や子供、臓器などの人身売買、金融、武器、暴力…様々な生業をもつ人間達の前に、アイス・キャンディが立つ。

みんなの視線が再びキャンディへ。

 

彼はガラにもなく緊張していた。


「…近日、チケットを配る。ここにいるスタンリーやケーニッヒに連絡をしてもらう手筈だ。

それを受け取った奴は、もう後戻り出来ないぞ」

 

すぐに野次が飛ぶ。

 

「そんな腰抜けは始めからこの場にいないぜ!」

 

「そうだそうだ!」

 

便乗して、みんなが思い思いに叫び始める。

 

「…それは安心だな」

 

誰もが、彼等を乗せてカリフォルニアへ向かう飛行機になど、絶対に乗り合わせたくは無いだろう。

 

そう。

目的地はカリフォルニアだ。

 

すでにキャンディの心は決まっていた。

 

チェスの駒は揃った。あとはチェス盤に駒を配置し、その戦略と共に相手を打倒すのみ。

 

都市を周り、人材を集める事を早めに切り上げるのだ。

 

キャンディがキングならば、クイーンはアンジー、ナイトはロブスターやドープマン、ビショップはスタンリーとケーニッヒか。

 

キャンディの案をみんなから上手く利用されているように見えるが、チェス盤の主役はあくまでもキングだ。

 

キングが倒れなければ負けにはならない。

 

それを言い換えれば…

 

キングが死ななければ他の駒はいくら死んでも構わない。


 

 

その夜。

 

もちろん同志達は一度解散させた。

 

ロブスターやスタンリーとも別れ、アイス・キャンディはケーニッヒと二人で彼のねぐらへと戻った。

 

 

「よかったのですか?」

 

「何がだ?」

 

部屋に入るなり、ケーニッヒの口からぶしつけな質問。

 

「全米とミシガンでは、集まる人間の質が歴然です」

 

「充分だ。ポーン以外の駒を探していただけにすぎないからな」

 

「はい?」

 

「チッ…分からなければイイ」

 

何てバカな事を、とキャンディは舌打ちした。

 

自分自身に。

 

「いや…分からなくは無いですが。

そういう考え方は私も共感できます。

盤はカリフォルニアのどこだとお考えなんです?」

 

「ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴ」

 

「おや、サンフランシスコは意外だなぁ」

 

そう言いながら、彼はウィスキーをあおっている。

 

「アンジーと電話がしたい」

 

「どうぞ、ご自由に使って下さい」

 

ケーニッヒがニコリと爽やかに笑う。


 

「出ないな」

 

一度目は繋がらず、キャンディが受話器を下ろす。

 

二分後に再度コール。

 

「もしもし!」

 

すぐに繋がった。

 

「アンジーか?俺だ」

 

「んー…あ!キャンディかい!連絡待ってたぜー!」

 

電話の向こうの声は明るい。

 

「待たせたな。計画を変更したい」

 

「変更?どんな変更だい?」

 

「確か、前回の電話は『ロブスター』の件だったか」

 

「そうだぜー。デトロイトシティのドンだっけ?

アタシの知らない奴だよ」

 

キャンディはロブスターに出会った後、一度はアンジーと話しているようだ。

 

「ソイツからゴロゴロと面白い人材が出てきてな」

 

「へぇー!そりゃよかったじゃないか」

 

「しかもソイツらが、お前のリストに載っていた連中と比べても、見劣りしない程の腕を持っている」

 

キャンディの声が少し大きくなる。

 

「なんだか悔しい気もするねぇ」

 

「全てこの地に住む連中じゃないが、駒は充分に揃った。

チェスター・クリップの方はどうなんだ?」


「あははは!アンタの言い草からすると『ナイトが率いるポーン達』の事かい?」

 

相変わらず笑い声が強烈だ。

必要以上に耳に響く。

 

「さすがに飲み込みが早いな。

ドープマンとはしばらく話してないんだ。早めに帰って、あまりにも兵隊が不十分では話にならない」

 

「そうさねぇ。でも余計な心配はいらないぜー。

ドープマンはまだ若いけど、OGの中のOGだ。

みんな、そこんとこは認めてるよ。つまり、最終的には何事も彼次第さ」

 

OGはオリジナルギャングスタの略で、筋金入りのギャングスタを表す。

 

「クリップス達の協力は必要不可欠だ。今、俺とこっちにいる商売人達とは使い勝手が違うわけだからな。

いざという時に、好き勝手やられては困る」

 

「いつ帰るんだ?」

 

彼女が話題をガラリと変える。

 

「一週間以内だろうな」

 

「へぇー!早くアンタの話に乗った連中のシケたツラを見たいところだよ!」

 

「それじゃ、切るぞ。ドープマン達…特にレモンには俺が帰る事はまだ伝えなくてイイ。空港に迎えに来られたりしたら厄介だ」


「何だかよく分からないけど、みんなには黙っといてやるぜー!」

 

アンジーが了承する。

 

 

ここでケーニッヒが席を外した。

トイレなのか、キャンディに気をつかったのかは分からない。

 

「しかし…結局、四千九百万ドルだの五千万ドルだのという話は無くなりそうだな。

悪く思うなよ、アンジー。お前のせいじゃない」

 

「なーに言ってんだい。きっちり金はいただくつもりだよ」

 

ケーニッヒがそばにいるだろうが、このくらいの会話なら聞かれても別に問題はないだろう。

 

「ふん、お前の情報に頼ったりはしていない。

事実、リストに挙げてあった連中はほとんど使えなかったぞ」

 

「バカだね!アンタがそうやって、デトロイトでたくさんの人間と出会えたのはどうしてだか分からないのかー?」

 

「…?」

 

「アタシがデトロイトにいる誰かの名前をリストに書いていたからじゃないか!

そうでなければ、アンタはそこにいない」

 

「バカヤロウ!いくらそうであっても、動いたのは俺だ!感謝はするが、要求の満額を払ってやるとでも思ったのか」


恩着せがましいにも程があると、キャンディが声を荒げた。

 

「何だとー!ケチ!」

 

「当たり前だろう!まったくとは言わないが、四千九百万だなんて夢みたいな話だろう」

 

キャンディの言い分は正しい。

 

「夢なんかじゃないぜー!どでかい金稼ぎだからな!」

 

「そういう意味じゃなくて!お前自身の事だろう!」

 

もちろんアンジーが分かっていてとぼけているのは、誰の目から見ても明らかだ。

 

情報屋はキレ者。

時としてバカな役を演じ、人を騙すこともしばしばだ。

 

 

ケーニッヒが部屋に戻ってきた。

 

すでにアンジーとの通話は終了している。

 

「カリフォルニアのお仲間は女性だったんですね」

 

「ん?あぁ、そうだが…前から分かっていた事を訊くな。

ん…!」

 

ケーニッヒの耳にはイヤホンがついていた。

 

「自分の電話の通話内容は、24時間いつでも録音していますからね。

しかし…ロイヤリティがお高い事で」

 

「悪趣味だぞ」

 

「仕事ですから」

 

ケーニッヒがため息をつく。


「どちらにせよ、有り得ない額だろう?」

 

「そうですか?確かに全員に同じ額を分配するとなれば話は別ですが、彼女の言うように『夢』物語でも無いでしょう。

B.O.A…楽しみですね」

 

「ふん…」

 

 

 

数日後。

 

 

キャンディとケーニッヒが空港の前で待っている。

 

すでにチケットは全員に配り、日取りも伝えている。

 

「どのくらい集まりますかねぇ?みんなが約束を守ってくれると助かりますが」

 

正面玄関の前、周囲の人間の嫌な顔も気にせずにケーニッヒはタバコをふかしている。

 

「見ろ。おいでだぞ」

 

そこへ乗り付けてくる様々な車。

 

まずは、タクシーからロブスター達が降りてきた。

 

次々と停まってドアが開くが、メルセデスのSクラスやロールス・ロイスのファントム、かたや今にも壊れそうなスズキ・サムライやダッジ・ラムと、裏家業でも厳しい現実の差が見てとれる。

 

だが、一つだけ確かなのは彼等がすべて『貪欲である』という共通点を持っている事だ。


 

予想通りの異様な光景。

 

どれだけ一般人に成り済まそうと振る舞ったとしても、この数ではあまりにも目立ってしまう。

 

ザッと見ても三十人は下らないだろうか。

路地裏の主役達は、ゾロゾロとキャンディの元へと歩いてきた。

 

「よう、アイス・キャンディ」

 

ロブスターが声を掛けてくる。

 

「よく来たな、ロブスター。

これで全員か?」

 

「そうだ」

 

「ヘイ!キャンディ!」

 

横からまた別の者に名前を呼ばれる。

 

ジャラジャラとした鎖や鋲、革のジャケットやブーツ、コテコテのパンクファッションに身を包んだゲルマン系の男だ。

派手なモヒカン頭で、髪の毛は真っ赤に染められている。

 

名前はジャック。

通り名は『スズメバチ』。

 

かつて路上で四人の人間をナイフで滅多刺しにした危険な男だ。

 

「よう、ジャック。機内に刃物は持ち込めないぞ」

 

「分かってら!カリフォルニアで調達すりゃイイだろ」

 

「それにその服…裸にならないと搭乗前の金属探査で日が暮れるな」


ガチャガチャとナイフを近くにあったゴミ箱に投げ捨てるジャック。

 

「これでどうだよ!」

 

「だから、そのギラギラした服はどうするんだって話だろ!

磁石でも投げつけてやりたい気分だな!」

 

スタンリーが横から野次を飛ばしている。

 

「あぁん?スタンリー、俺の戦闘着をバカにしたらタダじゃおかないぜ!

アンタこそ、エラく洒落たスーツじゃねぇか。ダウンタウンのマフィア気取りか?」

 

言われたスタンリーは、ズート・スーツと呼ばれる服を着ていた。

一昔前にアメリカの若者の間に流行ったスーツで、膝下まではあろうかという長いジャケット、それは肩幅が広く見えるようなラインに作られている。

ズボンはブカブカで太く、ベルトを通す腰の辺りだけ引き締まっている。

それらはグレーの生地に細いピンクのストライプ柄だ。

 

インナーには黒のワイシャツを着て、真っ白なタイを結んでいる。

さらに、頭にはスーツの柄と同じハットが乗っていた。

 

ジャックの言う通り、まるでダウンタウンのマフィアだ。


「これは遠出用の服なんだよ!仕事の時には着ない!」

 

「苦しい言い訳だぜ!」

 

 

「おーい。お前らは行かねぇつもりなのか?」

 

相変わらずのB-Boyスタイルのロブスターが二人を呼ぶ。

 

「…あ」

 

彼等がつまらない言い争いをしている間に、アイス・キャンディ御一行はぐんぐん搭乗口の方へ向かって歩いていたのだ。

周りも見えないくらい真剣だったのか。

 

「やべっ。おい、スタン!この勝負はカリフォルニアまでお預けだ」

 

「ふん…」

 

 

ピーッ。

 

「うっ」

 

「はい、すいませんよ」

 

警備員がジャックを呼び止めている。

 

「だはは!アイツ見ろよ!」

 

「何やってんだ、スズメバチよぉ!」

 

周りの同志達からは大きな笑い声。

 

「クソぉ…」

 

ジャックはいさぎよく、パンツ一丁になって金属検知のゲートをくぐり直した。

 

もちろんクリアだ。

 

 

一般客が恐れて道を空ける。

 

四番の搭乗口。ロサンゼルス国際空港行きの便。

 

大犯罪者達が、新たな戦場へと旅立った。


 

 

「もしもーし!はいはい、アタシだよ!」

 

真っ暗な部屋の中。

 

電話が鳴れば、明かりなどなくとも受話器は取れる。

長らく慣れ親しんだ部屋だ。

彼女にとってそんなことは造作も無い。

 

しかし、時刻は正午。

部屋の中が真っ暗なのは、遮光率99%の分厚く黒いカーテンが閉めきられているからだ。

 

「はー?アタシは、ちゃんと教えたじゃないか!上手く使えないアンタの責任だろうが!人のせいにするんじゃねぇよー!」

 

声の主はアンジー。

 

クライアントとの情報のやり取りにズレが生じたようだ。

 

パチリ。

 

天井でピカピカと点灯管が反応して、黄色い蛍光灯がパッと点いた。

 

「いーや。やっぱり間違いないぜー!」

 

何かの紙を見つめながら、甲高い声を上げるアンジー。

 

「ふざけるな!ちゃんと仕事はしたんだから残りの半分も振り込みな!」

 

プツッ。

 

「あれ?おーい!…クソったれめ!」

 

受話器を投げるのと同時に、外から雷鳴が聞こえてきた。

 

「…」

 

カーテンを開けて空を見る。

 

「キャンディ…?もう、着いたのか…」

 

女の勘は妙に当たる。


 

 

ガクン!

 

車輪が路面をとらえると、機体は大きく揺れた。

 

続いて、タイヤが拾ってくるノイズがわずかに機内に入ってくる。

 

「んー…よく寝た」

 

キャンディの隣の座席にいるロブスターが、座ったまま上半身だけ背伸びをしている。

 

「カリフォルニアー!俺はやってきたぞー!」

 

後ろの方で大声を張り上げているバカ者はイシザキだ。

 

 

飛行機はしばらく滑走路を走った後、ターミナルへ近付いて停止した。

 

「皆様、ロサンゼルス国際空港に到着いたしました。

長い時間お疲れ様でした」

 

スチュワーデスが挨拶をし、扉が開く。

 

ロサンゼルスは曇天。

 

雷が遠くで光っている。

 

「おいおい!西海岸はカラッと晴れてて椰子の木が風に揺られてるもんじゃないのか?」

 

スタンリーが少し残念がっている。

 

「常夏の土地にも、こんな日だってありますよ」

 

真っ黒いビジネススーツを着たケーニッヒが、そう言いながらツカツカと飛行機から降りていった。


「さて、ぐずぐずするなよ。移動だ」

 

キャンディが指示を飛ばす。

 

「どこに行くんだ?」

 

「コンプトンだ。分かるか?」

 

キャンディの返答に、同志達から「おぉ」というどよめきが起こる。

 

「名前くらいは知っているようだな。

タクシーから下りたら気をつけろよ。特に白人は目立つ。

俺について歩けば大丈夫だ」

 

「そんなに危険なのか?知らなかったぞ」

 

ロブスターだ。

両手をぶらぶらさせながらキャンディの真後ろを歩いている。

 

「なぁに、デトロイトとそう変わらない。通りはぼんやり歩けないからな。

ただ、西の人間は暑さで頭がイカれてる。口よりも先に引き金を動かす連中も少なくない。

…カラーギャングは?」

 

「ラティーノの?」

 

ロブスターは、あまり他の土地の事を知らないようだ。

 

「コンプトンは黒人の街だ。

ブラックパンサーやクリップス。たまにテレビでやってるだろう」

 

「なんだそりゃ?でも『カラーギャング』って言うぐらいだから、同じ服着てウロつくんだろ?」


「確かに、青い服やバンダナを身につけてはいるな」

 

カリフォルニアに来てもやはり、キャンディはフードを被っている。

顔を隠す事に慣れている彼は、ケーニッヒに顔を作ってもらおうとも思わないのだろう。

 

 

コンベアに乗って荷物が流れてくる。

 

「おい、アイス・キャンディ。サツだ」

 

スッとそばに寄ってきたスタンリーが言う。

 

一か所に固まって荷物を待っている彼等は目立っていた。

 

別に警察官でなくとも、アイス・キャンディ御一行は気になるだろう。

 

「心配いらない。誰も武器やヤクを持ち込んではいないからな」

 

「まぁ…そうか」

 

その通り。

警察官は彼等をジロジロと見てはいるが、ただそれだけだ。

 

 

空港の建物から出た。

 

「キャブを…」

 

「ヘイ!タクシー!」

 

キャンディの言葉を遮って、ロブスターが声を張る。

 

タクシー乗り場はイエローキャブでいっぱいだ。

別に呼ぶ必要などない。

 

「五、六台適当に選んで乗れ!ついて来い!」

 

キャンディがみんなに向けてそう言い、目の前にあったタクシーに乗り込む。


「ハーイ!いらっしゃーい!お客さん、カリフォルニアは、はじめまして!?」

 

妙な言葉とテンションで話し掛けてくる黒人ドライバー。

 

隣にケーニッヒとロブスターが乗った。

 

「いや…違う」

 

まさかと警戒するキャンディ。

 

しかし、ドライバーの後ろ姿は短く刈り込んだボウズ頭。

ドレッドではないな、と安堵のため息。

 

 

さらにこの車。

 

フォードのクラウン・ビクトリアではなく、リンカーン・タウンカーだ。

 

「で、どこに行くんだー?」

 

「コンプトンまで頼む」

 

「お!コンプトンか!センスがイイな!」

 

そう言いながら、ドライバーはカセットデッキのスイッチを入れた。

 

N.W.A.の曲が大音量で流れ始める。

 

サービスのつもりか知らないが、迷惑だ。

 

ケーニッヒは黙っているが、ロブスターは顔をしかめて舌打ちしている。

 

「んじゃ、出発!我が故郷『コンプトン』へ!」

 

アクセルが開かれた。


 

 

タクシーが発進して五分程経った頃。

 

「ん?ちょっと待て」

 

「どうした?」

 

「はい?」

 

キャンディが車内の異変に気付き、ロブスターとケーニッヒが返す。

 

「おい、ドライバー。メーターが無いが、ジプシーじゃないのか?」

 

「…!!」

 

ドライバーがビクリと反応する。

 

キャンディが指摘したのは、料金メーターの事だ。

 

ジプシー・キャブ…

つまり、ぼったくりタクシーだ。

 

「まったく…L.A.は油断ならないですね」

 

ケーニッヒが人ごとのように言った。

 

「俺達が観光客に見えたのか?料金チョロまかすならリッチなアジアンにでもしときな」

 

ロブスターがドライバーの座席をガンガンと蹴って嫌がらせをしている。

 

「タクシー営業のライセンスも持ってないんだろ。

もっとマシな商売を思い付かなかったのか?

すぐに割れるぞ」

 

「チィ…!バレちゃあ仕方ねぇ!

今、この場で有り金全部置いていきな!」


タクシーを急停止させ、振り返ったドライバーとキャンディの目と目が合う。

 

ドライバーの右手には小さなナイフが握られていた。

 

だが。

 

「…」

 

「…」

 

固まるドライバーとキャンディ。

 

ロブスターは「なんだなんだ」と騒ぎ、ケーニッヒはドアロックを開けようとしていた。

 

「ひ…ひさしぶり」

 

「黙れ、マザーファッカー」

 

二人は顔見知りだった。

 

そう。

 

髪型や車は違えど、本人に変わりはなかったのだ。

 

「キャンディ。帰ってたのかよ」

 

「いよいよこれが本業になったのか、レモン?

車もグレードアップしてるじゃないか」

 

「レースの賞金で買ったんだよ!あと、俺を酸っぱいあだ名で呼ぶな!」

 

ボウズ頭へとイメージチェンジしたレモンが叫ぶ。

 

「俺との仕事の前に捕まっては、元も子もないが?」

 

「バレなきゃイイんだろ!」

 

「バレてるじゃないか」

 

やはり、バカな性格は変わっていない。


「自慢のヘアスタイルはどうした?」

 

「…」

 

ガクンと落ち込んだ表情になるレモン。

 

「…ん?どうした?」

 

「…切られたんだよ、チクショー!」

 

レモンの悲痛な叫びが車内に響く。

 

「ほう。誰にだ?」

 

「リッキーとドープだよ!アイツら俺が寝てる間にバリカンで…クソ!」

 

バリカンの音や振動で目が覚めないものかと思われたが、そこは置いておく。

というより、自分からふったのだが、この話題にキャンディはまったく興味が無い。

 

「それは災難だな」

 

「え!?適当な反応してんじゃねぇぞ、キャンディ!」

 

「分かったから早く出せよ、へっぽこドライバー」

 

ロブスターが再びレモンが座る運転席を後ろから蹴っている。

 

「なんだ、この偉そうなチビは!」

 

「ハゲが!俺に八つ当たりするなよ!

黙って早く車を出しな、グズ。後ろが詰まってるだろうが」

 

確かに、他の同志達を乗せたタクシーが一列に並び、ちょっとした渋滞になっている。


もちろんその後続車からはクラクションの大合唱だ。

 

「あぁ!世の中、分からず屋ばっかりだ!」

 

ブンブンとエンジンをふかし、ギアをドライブに入れるレモン。

 

もちろん、そんなことをするものだから…

 

キュルキュルキュル!

 

車はタイヤから白煙をまき散らしながら発進した。

 

「おいおい!出せとは言ったが、後ろがついて来れなきゃ意味が無いぞ!」

 

ロブスターが慌てている。

 

レモンがレースの時のように本気で運転してしまっては、誰もが置いていかれてしまう。

 

 

しかし、レモンは聞く耳を持たない。

 

ぐんぐんと加速して、サイドミラーの彼方へと後続車を消し去った。

 

キャキャ!

 

急ハンドルを切りながら、コーナーを曲がる。

 

「いてっ!おい、アイス・キャンディ!

何なんだ、このドライバーは!」

 

横にかかる重力のせいで、ロブスターは窓に頭をぶつけている。

 

「コイツは…俺が今回の大仕事のドライバーとして指名した男だ…!」


 

 

一行はコンプトン市内へ。

 

途中、キャンディが機転を利かせて、レモンに「スティーブ、仲間と待たないと」呼び掛けると、すぐに彼の暴走特急は落ち着きを取り戻したのだ。

 

しばらくスタンリー達が追いついてくるのを待ち、そしてようやくアンジーが待つ家の近くまでやってきていた。

 

 

「レモン、ここでイイ。助かったぞ」

 

「お安い御用…おい!キャンディ!

また黄色いあだ名で俺を呼んだな!?誰が心のビタミン剤なんだよ!言ってみろ!」

 

「発想が豊かだな」

 

「え?ありがとう!」

 

会話がおかしい。

 

「それで料金はいくらなんだ、ジプシー野郎?」

 

ロブスターが言った。

 

「200ドルだよ、バーカ!」

 

「やっぱりそこはぼったくるのかよ!」

 

レモンが提示した料金は、LAXからコンプトンまでの距離で支払うには高すぎる。

 

「仕事が終わったら倍以上にして払ってやる。だから待ってろ」

 

キャンディの言葉は優しかったが、裏を返せば「料金は支払わない」という意味だ。


 

バタン!

 

キャンディが降り、ケーニッヒが続く。

 

そして、最後にロブスターが降りてきたが…

 

「チービ!チービ!」

 

運転席の窓からレモンが叫んでいる。

 

「うるせぇぞ!いつまでもつっ掛かってくるな、おっさん!」

 

「誰がおいしいフルーツだ!バカヤロウ!」

 

「言ってねぇだろうが!どう聞き間違えたんだよ、お前!」

 

ちゃんと相手をしてやるロブスターも笑える。

 

スタンリーを含めた同志達も、次々とキャンディの後ろに続いて歩き始めた。

 

「ロブスター!いつまで口ゲンカしてるつもりですか!行きますよ!」

 

ケーニッヒがロブスターを呼ぶと、彼は最後にタクシーのドアを蹴って、駆け足でやってきた。

 

「あぁぁあぁ…!!」というレモンの情けない声が聞こえたが、全員無視した。

 

 

アンジーの家はすでに視界に入っている。

 

しかし、車を降りた場所からのわずかな道のりに複数の人影。

 

「チッ…

チェスター・クリップか」

 

キャンディが舌打ちをする。


「あれがカラーギャングか?」

 

ぼそりとスタンリーがキャンディに耳打ちする。

 

「あぁ。普通ならば『危険だから関わるな』と言うところだが、今回はそうもいかないだろう。

それに、俺達はこの人数だ。心配はいらない…」

 

この辺りは雷が聞こえてはいても雨は降っていないので、クリップス達は地面に座り込んでいた。

 

もちろんキャンディ達を物珍しそうに見つめながら。

 

「アンタら、仮装大会でもあるのか?」

 


一人が話し掛けてきた。

 

ギャングスタ達の人数は全部で七人。

 

その彼等からドッと笑いが起きる。

 

おそらくスタンリーやジャックの格好を見ての発言だろう。

 

「ほら見ろ、スタンリー!お前、笑われてるぞ!」

 

「貴様…自分の恥を人に押し付けるな。

これは正装だ!」

 

この言い争いは見苦しい。

 

「ん…あれ?コイツは、アイス・キャンディじゃねぇか?

おい!みんな見ろよ!アイス・キャンディだぞ!」

 

「…」

 

最初に質問してきた男が早速気付いた。


「エラく人気者だな、アイス・キャンディ?」

 

ロブスターが冷やかす。

 

「面倒だ。さっさと行くぞ」

 

ジッと間近で顔を見ていた一人のギャングスタを押し退けるキャンディ。

 

「何しやがる」

 

悪態をつくが、手は出してこない。

もちろん人数的なものもあるが、相手がキャンディではチェスタークリップもバカは出来ない。

 

デカい仕事の話がドープマン達によってしっかりと浸透しているのだ。

 

 

ガンガン!

 

「…」

 

ドアをノックする。

 

後ろに大人数の荒くれ者を引き連れて家を訪れているのだ。

傍から見たら恐ろしい光景だろう。

 

ガンガン!

 

「…」

 

「はぁい」

 

二度目のノックで家の中から反応があった。

 

 

ガチャ。

 

「誰だーい?あ…」

 

言葉と共に扉が開くと、アンジーの顔があった。

 

「よう。珍しい事もあるものだな。

訪問者を確認せずに、お前が扉を開けるなんて」


「ちょいと、食事にデリバリーをお願いしてたんでね!そっちかと思ったぜー!」

 

「そうか。コイツらが俺の集めた人間だ」

 

「ま、早く入りなよ」

 

アンジーがみんなを家へと招き入れる。

 

彼女は髪を上げて結び、デニムにタンクトップ姿。

リラックスしていたようだ。

 

「さすがに長い時間、家の前に人だらけだと目立つからな」

 

アンジーに続いて家に入ったキャンディが言った。

 

「どこにいたって目立つぜー」

 

キャンディが初めてこの家に招かれた時に入った部屋。

 

相変わらずガランとしている。

 

キャンディが潰したダンボールも今は無い。

 

だが、部屋に何も無い事がよかった。

なにせ、この人数を一つの部屋に押し込むことが出来たのだから。

 

 

ガンガン!

 

ガンガン!

 

「はぁい。今度こそデリバリーだな」

 

アンジーが玄関へと向かう。

 

ガチャ。

 

「毎度どうもー!ピザの宅配です!」

 

「おー、やっぱりそうだ。キャンディ、手伝ってくれないかー?」


「はぁ?なんなんだ…」

 

なぜかアンジーに呼ばれ、部屋から玄関へ向かうキャンディ。

 

「ほら、これだぜ!運んでくれ!」

 

「なんだこれはっ!」

 

玄関先にあったのは、大量のピザの箱。

 

ザッと三、四十人分はある。

 

「…いつも一人でこんなに食べるのか?」

 

「アンタ、バカかい?もちろんみんなの分だぜ!

はい、お代。釣りは取っておきなよ」

 

アンジーが宅配員に金を握らせると、彼は「ありがとうございました」と言いながら帰って行った。

 

どう見てもスリーターでは配達不可能な量だ。

トラックかバンにでも積んで来たのだろう。

 

「…どうしてだ?」

 

彼等が今日、この時間にやってくる事はアンジーに伝えてなどいない。

 

「こんなにたくさんのお客さんが来るのは初めてなものでね。

気を利かせてみたのさ」

 

「違う。そういう意味じゃない。

どうして…俺達がやってくる日取りだけでなく、時間までも分かっていたんだと訊いてるんだ」

 

「あはははは!

アタシが誰だか、忘れちゃいないか?」

 

彼女は甲高い声で笑った。


「…そうだったな」

 

納得する。

 

確かに少しカリフォルニアから離れている間に、アンジーの事を見くびっていた様だ。

 

「連中、ほとんどデトロイトからかー?」

 

「そうだな。多くはそうだ。

色々と予定通りにはいかなかったが、なんとかいけそうだ」

 

「ほら、運んだ運んだ!」

 

せっかく応えたキャンディに対して、早くピザを運ぶように促すアンジー。

 

キャンディが眉間に皺を寄せたのは言うまでも無い。

 

 

 

「聞け」

 

同志達が円形になり、キャンディが床に大きな地図を広げる。

 

もちろんこれはカリフォルニア州の地図だ。

 

「サンフランシスコ、ロサンゼルス、そしてサンディエゴ」

 

キャンディが、名前を呼んだ都市の場所をトン、トン、と指をさす。

 

「サンフランシスコ?なぜロングビーチじゃないんだ?」

 

これはスタンリーだ。

 

確かにコンプトンからアクセスしやすい都市ならば普通はそうなる。

 

「不満か?北、真ん中、南でちょうどイイだろう」


「まぁ、それはそうだが…極端に離れすぎちゃいないか?」

 

「…」

 

キャンディの目論みを知るケーニッヒは、腕を組んで黙っている。

 

決して、熟知しているわけでは無いが、彼は『サンフランシスコ』の意味を知っている。

 

「三十一人か…三点に振り分けるのか?」

 

ロブスターが発言した。

 

「そうだ。だがみんな分かっているだろうが、『こちら』にも同志がいる」

 

数人から納得の声。

チェスター・クリップの事だ。

 

キャンディが続ける。

 

「さらに、ターゲットとの内通者を用意する必要がある。だがこれはすぐに済むだろう」

 

「当てが?」

 

「ここにいる、アンジーだ。

少しは仕事をしてもらわないとな?」

 

キャンディがアンジーを指差すと、ロブスターは彼女をジッと見た。

 

「そう言ってくるかもしれないとは思って、リストは作ってるぜー」

 

「助かる」

 

「ところで、キャンディ。さっきから気になってたんだけど、この子供は誰だ?

何で一緒にいる?」

 

「あぁ。電話で話しただろう。彼がロブスターだ」


 

アンジーの顔が固まる。

 

周りの同志達からは様々な野次が飛び始めた。

 

「ははは!信じられねぇだろ!」

 

「俺は未だ、このクソガキがロブスターだなんて認めてねぇぞ!」

 

「彼がロブスターだぜっ!間違いない!」

 

「俺は誰がロブスターだとか、そんなことはどうでもイイや!大事なのは金稼ぎだけ!」

 

 

アンジーがさらに近付いて、まじまじとロブスターの顔を見る。

 

「…何だ、めんどくせぇ。なめるなよ、女」

 

「あはははははははは!!」

 

「!?」

 

こんな至近距離で耳に響く甲高い声で笑われては、たまったものではない。

 

ロブスターが耳をふさぐ。

 

「うるせぇぞ、コイツ!

スタンリー!黙らせろ!」

 

「おう」

 

 

「悪い悪い!もう大丈夫だ。

こんなクソガキがデトロイトの裏通りをと思うと…

まぁ、さぞ大した力量なんだろうぜ」

 

指示を受けたスタンリーがアンジーに手を回そうとしたが、自然と落ち着きを取り戻してくれたようだ。


「まったく、失礼な女だぜ…!

おい、アイス・キャンディ。本当にコイツはお前のビジネスパートナーか?

頭がいかれたアバズレにしか見えないぜ」

 

「もう、そのくらいにしておけ。

互いに足を引っ張るんじゃない」

 

キャンディが二人に言った。

 

「チッ…」

 

「よし…アンジー、内通者の準備にどれくらい必要だ?」

 

「どれくらいだって?さぁねぇ。三か所周るからさ。

アタシ一人でやれって言うなら、少し時間をもらう事になるよ」

 

何とも投げやりな回答だ。

 

「そうだな…ドープマン達は?」

 

「多分、自宅にいるぜー。

連絡を取り合う仲では無いからね。

でも、アイツらの動きはほとんど把握してるよ」

 

「バカな事をしてなければそれで構わない。

レモンはジプシーキャブなんかで稼いで、ふざけてたけどな」

 

同志達には話の内容がちんぷんかんぷんだ。

 

「アイス・キャンディ。

個人的な会話は後ほど楽しんで下さい。

まずは同志達の配置分けですか?それともクリップスを?」

 

ケーニッヒが言った。


「配置のつもりだったが、気が変わった。

クリップスを呼ぶ」

 

「分かりました」

 

「とはいえ、セット内の全員を…ってわけにもいかないがな」

 

取り出したままの地図を見つめてキャンディが言葉をこぼす。

 

「セット?なんだそりゃ」

 

誰かが言った。

 

「セットってのは、ギャング達の一つ一つの集まりみたいなもんだぜー。

チェスター・クリップってセット名で徒党を組んで活動してる連中とアイス・キャンディが仲良しなのさ」

 

アンジーが説明する。

 

「西でギャングだとかギャングスタだとか言われてる奴等は、一体何をしてるんだ?

映画やTVショウでは、のらりくらり暮らしているようにしか見え無いぜ?」

 

この声はジャックだ。

 

もちろん、ついさっき質問をした人間ではない。

 

「確かにそう見えるかもしれないな。

普段は定職には就かずにぶらぶらしてる奴が多い。

もちろん、盗みを働いたり、ハッパみたいなヤクを捌いたりしてる。

東西南北に路地裏のルールの大きな違いなど無い」


「なんだ、やっぱりのらりくらりしてるだけじゃねぇか」

 

「路地裏とは言っても、平屋で住宅街を形成してるところがお前達から見ると面白いかもしれないな。

…まぁイイ。俺はクリップスの頭と会ってくるから、みんなはしばらく待っててくれ」

 

「話が飛びましたね。同行しても?」

 

ケーニッヒだ。

 

ドープマンの家へと向かおうとするキャンディに呼び掛ける。

 

「…?なぜだ?

どちらにせよ、彼はすぐにここへ連れて来るつもりだが」

 

「なんとなく…ですよ。迷惑でしたら、遠慮しますが」

 

短い沈黙。

 

「…好きにしろ。みんな、すぐに戻る」

 

「どうも」

 

キャンディが応え、二人は扉を開けた。

 

 

 

いつの間にか、ざぁっと激しい雨が降りつけていた。

 

雷はゴロゴロと、まだ遠い。

 

「これは…濡れるな。傘かコートが欲しいところだが、このまま走るぞ?」

 

「仰せの通りに」

 

目の前を、先程キャンディに絡んできたギャングスタ達が雨に打たれながら駆けて行った。


 

 

「ははは!マジで笑えるぜ!なぁにをやってんだか!」

 

「…」

 

「暖房でも使うかー!?」

 

「助かる」

 

快適な車内。

 

会話をしているのはレモンとアイス・キャンディ。

 

 

キャンディとケーニッヒは、雨の中へと飛び出して、しばらく走っていた。

 

一瞬にしてずぶ濡れとなった二人の横に、一台の黄色いリンカーンのキャブが通りかかり…というわけだ。

 

 

「どこまで行く気だったんだ?」

 

「ドープマンの家だ」

 

キャンディがフードを被ったままで、水を含んだそのフードを絞っている。

 

「え!?おい!ここ、車の中じゃない!?」

 

ミラー越しでも、レモンはキャンディの動きを見逃さなかった。

 

「ん?あぁ…そうだが」

 

「『そうだが』じゃねぇよ!

濡れた服を絞るな!

そういや、さっきのクソガキも俺の新しい車に…!」

 

ギュッ。

 

「おぉ、確かによく出ますね」

 

ケーニッヒが悪乗り。

 

「おらぁ!この、クソハンサムぅ!」

 

罵りなのか褒めなのか分からない言葉だ。


「イイ車だな、レモン?大したセンスだよ」

 

「ん、そうだろー?分かってるじゃねぇか!」

 

話題を変えると、すぐに機嫌が良くなる。

 

「…じゃねぇよ!また、唾が出そうになるあだ名を呼んだな!?

俺はスティーブだ!髪が短い爽やかなスティーブ!」

 

「アイス・キャンディ。ロドリゲスを覚えていますか?」

 

レモンを無視して、ケーニッヒがキャンディに話を持ちかける。

 

「きけ!ススス…スティーブだ!」

 

「写真屋か?」

 

「えぇ。ホーキンスが撃たれた時の写真の現像を頼んだ、彼です」

 

「あぁ、もちろん覚えてる」

 

すると、ケーニッヒが尻のポケットから一枚の写真を取り出した。

 

それが少し湿っているのは、雨のせいだ。

 

「読みが外れたので、すっかり忘れていたのですが…念の為、確認を」

 

「カリフォルニアの王者、スティーブ!!」

 

「読み?」

 

キャンディが写真を見る。

 

「はい。スタンリーあたりではないかと思ったんですが…写っていたのは見知らぬアジアン。

ホーキンスの事件とは無縁に思えて、貴方に言う事も忘れていたんです」

 

「最速のイケメン、スティーブ!」


キャンディは『アジアン』という言葉にギクリとする。

 

もちろん彼の頭に浮かぶのはニューヨークで出会ったヤクザ、『リョウジ・ゴンドウ』。

 

だがそんなわけは無いと心の中で呟く。

 

「どうしました…?」

 

「いや…」

 

写真に写っていたのは、キャンディも知らない人物だった。

 

胸を撫で下ろしてイイのかどうかは難しいところだ。

 

「俺も知らない男だ。

たまたま近くにいただけの可能性は?」

 

「もちろん考えられます」

 

「身なりは上等だな。チャイニーズ系の可能性がある」

 

写真をケーニッヒに返す。

 

「中国にさえその名を轟かす、スティーブ!」

 

「…レモン、早くドープマンの家に向かってくれないか?」

 

そう。

 

車は進んでいない。

 

「決して他の名に返事をしない、スティーブ!」

 

ケーニッヒがレモンを指差して、おそるおそるキャンディに助言する。

 

「…彼は、構ってもらいたいのでは?」

 

「あぁ。それを分かっていて、無視してる」


「圧力には屈しないヒーロー、スティーブ!」

 

叫んでいる内に、彼の中で自己啓発が起こったのか、テンションが高くなり始めたレモン。

 

「あぁ!うるさい奴だ。また、服を絞るぞ!」

 

「え!?お、脅しにはビビらない、スティーブ!…発進!」

 

低いエンジン音が響いて、タクシーが進み出した。

 

レモンは、敗れた。

 

 

 

ガンガンガン!

 

「うぅ…早く開きませんかね」

 

ケーニッヒがブルブルと震えている。

肌にピッタリと密着した水分が、体温を奪うのだ。

 

結局二人は、タクシーから玄関先に走るまでの間に濡れてしまっていた。

 

ガンガン!

 

「…」

 

ガンガンガン!

 

ガチャ。

 

「うるさいなぁ」

 

悪態と一緒に扉は開いたが、パッと見ても部屋の中には誰もいない。

 

「おや?誰もいない…どうして扉が開いたんでしょうか?」

 

「下だ、下」

 

ケーニッヒの後ろに控えていたキャンディが言う。


「え…?」

 

「ハロー」

 

車椅子に乗ったドープマンが、ケーニッヒを見上げていた。

 

別に、見失う程に低い位置ではないのだが。

 

「あぁ。これは失礼しました」

 

「おわ!こんなに雨が降ってたのか!

で、どうしたの?アンタは誰だい?」

 

ドープマンは相変わらず青色をしたロサンゼルス・ドジャースのキャップやシャツを身に着けていた。

膝の上にはコーラの缶が一つ。

 

子供っぽい口調も変わっていないようだ。

 

「あ、私はケーニッヒと申します」

 

「そうなんだ?後ろに誰かいるのかい?」

 

ドープマンは初対面のケーニッヒの事よりも、後ろの人物が気になっている。

 

「…よう、ドープ」

 

ケーニッヒが間に立っているので、キャンディからドープマンの姿は見えていない。

しかし、声は聞こえていたのでキャンディは挨拶をした。

 

「だーれだ?」

 

プシュ、と缶のフタを開けながら上半身を左右に揺らすドープマン。


「俺だ」

 

ぬっ、とケーニッヒの横から姿を見せたキャンディ。

 

ドープマンは口を大きく開いて缶を手元から床に落としてしまった。

足拭きマットにコーラが染み込んでいく。

 

「アイス・キャンディ!!帰ってきたのかい!」

 

「あぁ。仲間を引き連れてな」

 

「そうかそうか!まぁ入ってよ!

クリスティーナ!アイス・キャンディだよ!」

 

ドープマンは車椅子を反転させて、すーっとリビングへと走って行った。

 

「では、お邪魔させていただきましょうか」

 

ケーニッヒが先に家に入り、キャンディが続いた。

 

 

ずぶ濡れの二人がリビングに着いた時、ドープマンは耳に電話の子機を挟んでいた。

 

「もしもし。ダグ?あ、うん。

そうなんだ?へぇー。リッキーは一緒にいるの?」

 

クリスティーナはソファの上で寝息を立てているので、ドープマンの呼び掛けには応じなかっただろう。

 

キャンディにとってはアンジーの件もあって、クリスティーナと一緒にいるのは少し気まずい。


「じゃあ、それが終わったら来なよ。

うん、うん。へぇー。

え?雨?すごく強いね。

どうしてって、キャンディが帰ってきたからだよ。

あはは!分かった。それじゃ、また後でね」

 

ピッ。

 

「リッキー達か?」

 

「うん。雨だから自分の車で外に出るのを渋ってたけど、レモンを呼び出すってさ」

 

「レモンは多分、家にいないから連絡がつかないと思うが?」

 

キャンディの言葉にキョトンとするドープマン。

 

「へ?何で分かるの?」

 

「ここまでタクシーで送ってもらったからな。

車を買い換えてたよ。髪型も違ったな」

 

「ぷぷっ…!どうして髪型を変えたのか聞いたかい?この話が傑作なんだよー!」

 

へっくしょん、とケーニッヒが大きなくしゃみをしている。

 

「…?うわ、よく見たら二人共びしょびしょだね!服とシャワー貸そうか?」

 

「…うぅ。助かります」

 

ケーニッヒは即答だ。

 

「確かにこのままでは体調を崩してしまいそうだな」

 

キャンディも悪寒を感じている。


 

 

二人がシャワーを浴びて、ドープマンのスポーツジャージに着替え終わった頃、リッキーとダグがやってきた。

 

「ようよう!ホーミー!帰って来たってのは本当だったみたいだな!」

 

「元気か、ニガー?」

 

リッキーは大声で叫びながらキャンディの肩を叩き、ダグはそれとなくぼそりと話し掛けてくる。

 

「久し振りだな、二人共。俺がいない間に妙な事してなかったか?」

 

「なんだよそれ!いきなりダメ出しか!」

 

噛み付いたのはもちろんリッキーだ。

 

「ん…」

 

「はっ…!!」

 

クリスティーナが寝返りをうち、ギャアギャアと騒いでいたリッキーが凍り付く。

以前受けた傷は、かなりのトラウマになっているのだろう。

 

彼の中では『クリスティーナ最強説』が浮上している。

 

「何をそんなにビビってるんだか。仮にも俺の彼女だよー?」

 

ドープマンはムスッとしてしまった。

 

「ビビってなんかねーよ!」

 

「ん…」

 

「はっ…!!」

 

繰り返し。


 

「はい、どうぞ」

 

「さ…てと。雨も止んだし、服も乾いたみたいだ」

 

傷跡が目立つ顔が露だと落ち着かないキャンディ。

ドープマンが衣類用の乾燥機からフード付きのスウェットを持ってくると、すぐにスポーツジャージからそちらへとチェンジした。

 

彼の酷い顔を見るのはチェスター・クリップのメンバーやケーニッヒにとって初めての事ではなかったので、誰も気にしている様子は無かったが。

 

「兵隊は揃ってる。しかも一兵卒クラスじゃなく、将校クラスのキレ者達だ」

 

「えー?難しいなぁ。

頭でっかちだけじゃ基地での討論ばかり。誰が戦場で銃を手に取るのさ」

 

「将校の腰のホルスターだって玩具じゃないさ」

 

「屁理屈ぅ」

 

ドープマンがニコリと笑う。

 

「この白人は誰だ、キャンディ?」

 

これはダグだ。

 

「今更ですか?ヒドイなぁ…ケーニッヒです。以後、お見知りおきを」

 

「奴等に引き合わせる。ついて来てくれ」

 

幸か不幸か、クリスティーナの寝息は続いていた。


 

 

「『ここで間違いないか、ニシノ?』」

 

「『はい』」

 

「『誰から仕入れた?』」

 

「『車屋ですよ』」

 

立派な高層マンションのエントランス。

 

黒服に身を包んだ男達。

 

「『車屋?』」

 

「『はい。車両購入の際に提示された名前は偽名でしたが、住所を実在のものでした。

当たってみるだけの価値はある、というお達しです』」

 

「『そんなバカなミスを、アイツがするってのか?』」

 

サングラスを取り、にらみつける。

 

「『分かりません。ゴンドウさんからですよ、オニクラさん』」

 

彼らはRGの持つヤクザ組織の残党。

 

「『女か?』」

 

「『おそらく』」

 

「『セキュリティは?』」

 

「『心配ありません。管理人を買収しています』」

 

カッカッ、とオニクラは笑い始めた。

 

「『一流マンションが聞いて呆れるぜ』」

 

「『おっしゃる通りです』」

 

ポーン、とエレベーターの到着を知らせる音が鳴る。

 

「『行くか』」

 

「『はい』」

 

エレベーターに乗り込むなり、彼等は懐から武器を取り出した。


 

フロアに出る。

 

廊下の壁面には、よく分からない絵画が飾られている。

 

「『居心地が悪いです』」

 

「『はぁ?』」

 

ニシノは精悍な顔立ちの青年で、とてもヤクザのような裏社会の組織に属しているようには感じられない。

爽やかで、歳はクサナギなどよりも上だろうが、まだまだ迫力が足りない。

 

対してオニクラは頭が禿げ上がった中年の男。

体系も筋骨隆々なニシノとは違い、でっぷりとしている。

 

しかし、鼻の下から顎まで続く髭は均等な長さにきっちり整っており、ダンディだ。

オーダーメイドの黒いダブルスーツ。大きく開いたワイシャツの胸元からは、純金のネックレスの他に、右からは虎が、左からは龍が、それぞれ顔をチラリと覗かせていて何とも賑やかだ。

 

「『こんなに大層な造りをした建物には慣れないものですから…』」

 

「『人を傷つけるってのは、怖いもんだ』」

 

オニクラはニシノの気持ちを察した。

 

彼が感じているのは、この建物の居心地がどうなどという事ではない。

 

大事を成す前の、極度の緊張。


「『…』」

 

ドアを背にして張り付く。

 

銃を構え、息を殺す。

 

「『行けるか?』」

 

「『…はい』」

 

「『よし…そりゃっ!』」

 

ガン!

 

ドアを蹴り開ける。

 

「『邪魔するぞ!どこだ、出てきやがれ!』」

 

オニクラが怒鳴った。

 

 

部屋は目茶苦茶に散らかり、足の踏み場も無い。

 

「『なんだこれは…ヒドイ有様だな』」

 

「『すでに誰かにやられてしまったのでは…?』」

 

「『商売柄、有り得ないとも言えないな』」

 

しかしそれは違う。

 

『元から、この部屋は散らかっていた』のだ。

 

何に使うのか分からないガラクタも多いが、銃器やナイフなどの武器も多く散乱していた。

 

それらをガチャガチャと蹴り、あるいは踏みつけながら部屋を散策する。

 

「『チッ…いないか。ひきあげるぞ、ニシノ』」

 

「『…はい』」

 

 

 

二人が去った後、部屋のクローゼットが開く。

 

「日本語か…?まったく物騒な世の中だよ」

 

女は、深いため息をついた。


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