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始まりの日①

ー2012年7月 20日7時 静岡県浜松市 土岐野村ー

(痛ってぇ!)

一軒家の2階の部屋から数十メートルは離れているであろう近隣数軒に響き渡るかというほど、大きな声を発してしまった。

何かが俺の鼻を掴んでいる•••


ク••••クワガタ???


痛みで、飛び起きた俺の名前は黒乃睡蓮、地元でも有名なヤンチャ坊主。歳は11歳、小学6年生だ。


しかし俺にも勝る村一番のヤンチャ娘がこの家にはいる•••••

俺の姉の黒乃レイ17歳。


俺は飛び起きた後、6畳の畳部屋を見渡し、部屋の扉裏にこそこそと丸くなって隠れているレイを見つけた。


「おーはよーレン君!!❤ 朝だぞ〜遅刻するぞ〜!!」ニヤニヤ


この女は本当に小悪魔だ、、、

上目使いで、可愛らしい笑顔でこちらをみてくる。


通常の男ならこの笑顔で心を射止められてしまうに違いない。

しかし俺は騙されない。



せっかく気分良く寝ていたのに、なんと言うことをしてくれたのだろうか・・・



「レ~イ姉ちゃん。お・か・え・し!!」


俺は少し意地悪な顔をして

俺は手に持っていたクワガタをレイ姉の鼻に近づけた。

サク••••



クワガタがレイ姉の鼻を掴んだ。キャー!!!!



レイ姉は甲高い声で悲鳴あげ手をバタバタさせながら

片方の手でクワガタを掴み俺に向けて投げてきた。



睡眠のじゃまの恨み•••ニヤ



その後、悲鳴をあげながら逃げる姉をクワガタを武器に

二階建ての3LDKの家中を10分程追いかけ回してやった•••••



浜松駅より北に25キロほどの位置にある人口1000人に満たない土岐野村に住む2人の姉弟。


姉のレイは地元の湖北町高校に1時間かけてバスで通う17歳の女子高生だ。


性格は天然?ですらっとした体型、160cm程の身長に長い黒髪の目はなの整った清楚な女である。


地元のみならず浜松市内でもかなり有名な美人で、、、。


というのも、毎年春になると地元で行われる、

姫様道中という、籠に入れられた女の子が、江戸時代のお姫様の格好をして街中を移動するイベントがあるのだが、今年抜擢され、その際に容姿が淡麗であることから、話題となったのである。


たまに市主催のキャンペーンガールなんかのアルバイトもやってるらいしのだが•••


そんな姉を持つ俺、黒乃睡蓮は短髪黒髪、身長150センチ。目つきが悪く、いつも気だるそうにしている。

目立ったところと言えばツンツンした髪の毛と、ちょっと身体能力が他の人間より優れている点だろうか・・・


地元では仲の良いことで知られている俺たちだが、それには理由ある。

幼い頃に両親を失っているのだ、、、、


父親は俺が産まれる1ヶ月前に死んだ。


生前の父親は考古学者であり、遺跡にあったトラップにひっかかり・・・という何とも情けない死に方をしたのだが、詳しく聞いたことはない。


それを追いかけるように母親は、精神的な疲労も相まって、俺が産まれた数日後に突然死んでしまった・・・。


だから、俺にとって姉は唯一の肉親であり、母親のような存在である。

一見不幸にみえるかもしれないが、俺はそんな風に感じない。

だって両親が残してくれたこの大きな家で、姉と仲良くすごしているのだから•••



朝の朝食をさっと済ませ、俺は学校の支度を終えた。


「レイ姉、学校行ってくるよ〜。レイ姉も今日終業式でしょ!遅刻しないようにね!」


「はーい。気をつけてね!行ってらっしゃい」



1階右手奥の姉の部屋で制服に着替えていた姉に、玄関越しで話しかけ、家をでた。


学校までは歩いて3キロ。

家は少し高い丘の上にあり、田舎ということもあって、学校にいくまでの間には家が10軒ほどしかないのもこの地区の特徴だ。


600メートルほど坂を下ったあとに、川幅3メートル程の小川の上の木の橋を渡る。


その後平坦な農道と田んぼ道が続く。


1キロほど歩いたところに満開屋という小さな商店があるのだが、店の前で俺は足をとめた。


「タカ、グッドモーニング」



店のシャッターを開けて店内に向かって声をかける。


すると奥から、一人の男の子が出てきた。


「朝からうるせぇよレン。お前はイチイチこえがでかいんだよ」


そういいながら出てきたのは俺の親友の新城鷹信だ。


身長は140cmで小柄、つり上がった目、髪は俺と違ってストレート。


鼻までかかるぐらいに伸びた前髪で右目がいつも隠れている。モテ男だ・・・


「今日も恋人とイチャイチャしたのか、レン。羨ましいぞ」


タカが心のこもっていない棒読みで馬鹿にしてくる。


「恋人じゃないから!あのやろう!今日も朝から庭でクワガタ捕まえてきて、俺の鼻に挟むんだぜ、最悪の寝起きだよ、、、」

半ば呆れたように俺は返答した。



「楽しそうでいいじゃん。うちなんて、むさ苦しい親父が一人と、ダサい兄一人、年取った爺ちゃん一人だぜ」


タカはいつも通りクールに淡々と話す、、、


俺は、タカの家のムサくるしさを想像して笑った。

「確かに!タカの家も住み辛そう・・・」


そう言いかけたところで、シャッター奥から、身長190cmはある男が顔を覗き込み、タカの首根っこをヒョイと、持ち上げた。


「誰が、ダサいだ」


低い声で怒ったように睨みつけてきたのは、新城炎斗。レイと同じ学年で、同じ学校に通う、タカの兄だ。



先ほどタカがダサいといったのは、いくつか理由があるのだが・・・


まず名前が如何にも厨二病っぽいのだ。

本人は高校2年になった今でも大いにそれを気にしている。

先日も名前をふと呼んでしまった後輩の男の子が、彼の逆鱗にふれ、校舎裏に呼びだされたと聞いた!


まぁ、名前はしょうがない


本当にダサイと言われる所以はもうひとつの方である。


レイ姉に対し全く頭が上がらないのだ・・・。


どうやらレイ姉に好意をいだいているようで、レイ姉の顔を見るとすぐにかしこまる。


しかも普段は冷静なくせに、話すときは常に声がどもる。赤髪に、軽く100kg程度のバーベルを上げられる筋肉・そして凛々しい眉毛が特徴的な端正な顔立ちなのだが・・・


その体格と容姿からはとてもじゃないが想像できないほど、小動物のようになる。


その姿にタカはダサいと感じ、心底あきれているのだ、、、


「さっさと行けタカ、遅刻するぞ」


「わかってるよ、うるせぇよ、くそ兄貴め」


タカが兄に対し不機嫌そうに返事をし、小学校に向かって歩き出した。


そして。数十m進んだところで振り返り、

高校行きのスクールバスに乗り込む兄の方を向いて

右手中指をたてたあと走りさって行った。


それを追いかけるように俺は走り出し、1km程先の小学校に向かった。


学校に到着ご、早々に朝の会が始まり、その後体育館で終業式がはじまる。


「~ですから、みなさん夏休みだからといって、はねを伸ばし過ぎないように!早寝・早起き・宿題をやる事を忘れずに、充実した日々を過ごしてください。以上です」


校長の話はやはり長い。

「炎天下の体育館で10分もたたされるとか、ばかじゃねえの」

就業式が終わり、教室で帰り支度をしてため息交じりに独り言を言っている俺に、一人の女の子が近づいてきた。


「レンお兄ちゃんそろそろ帰ろ~、もうおなかすいたよ~」

彼女の名前は輪道実花りんどうみか

タカの家の近くに住む4つ年下で小学2年生の女の子だ。

耳にかかるぐらいの短くまっすぐにおろしたショートの髪型に、丸いクリっとした瞳・身長120cmの小柄な体型だ。


髪の毛の一箇所を結っていて、犬の顔が描かれたヘアピンをしている。


家の方面が近いこともあり、下校は基本的には彼女とタカと3人一緒なのだ。


「悪い悪い、早く帰ってタカのおっちゃんの飯食おうぜ。」


ランドセルにお道具箱やリコーダーやら、全てをぎゅうぎゅうに詰め込んだあと、部屋に残っていた3人の同級生に挨拶をし、教室をあとにした。


ミカと一緒に、2階の一番西に位置する6年生の教室から階段を下り、東西にのびた校舎の中央に位置する下駄箱まで一直線に向かう。


そこで、今にも噛みつきそうな狂犬のごとく俺を睨み付けながらタカが待っていた。


「遅せぇ、支度に20分もかけてんじゃねえよ。死ね」


「悪い、荷物が多かった」


すごむタカに少したじろぎ謝罪をする。

すると、空気の読めないミカがすぐにおいうちをかけてくる。


「ほんとだよ~、最終日まで荷物ため込むなんて、おバカだよ~」


「ばかって・・・」


年下のミカがバカにしてきたので、一瞬ムカッときて言い返そうとした・・・

しかし、ほとんど荷物がなく、身軽そうなタカ・ミカに目をやり、ほんとに自分のせいだな、と感じて反論を口にするのをやめた。


それを見抜いたのか、平坦な田んぼ道を歩く下校中には、ここぞとばかりに

「ば~か、ば~か」

と息ぴったりで2人で俺をおちょくってきたが、

「うるせぇ」の一言ですべて返したのだった。

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