2話 同期
仕事で理不尽に怒られむしゃくしゃした私はこの日、寄り道をすることにした。
適当な居酒屋に入り、カウンター席に座る。
なにやらわいわい楽しそうなサラリーマンを横目にビールとアテを注文する。
周りから、1人?と思われているような視線を感じるがそれさえもう気にしなくなった。
おひとり様は気楽でいいんだよ、なんて思いながらビールを疲れた体に流し込む。
アテに頼んだスジ肉の煮込みも青菜のおひたしもとても美味しくてお酒もすすむ。
「お姉さん大丈夫かい?」
なんて店主に心配されるほどに私は酔っていた。
『だいじょーぶ!ちゃんと帰りますからー!』
なんて言って返事をしたとき、ちょうど後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。
「こんなところでおひとり様か?」
振り返ると職場の同期である藤城 廉が呆れたような顔で私を見ていた。
『ふじじゃん、どしたの?』
もうすっかり出来上がった私の隣に座って慣れたように注文する藤城。
どうやらこの店の常連らしい。
「女が1人で居酒屋って…まぁお前らしいけど。」
なんて笑う藤城は職場でも人気な爽やかイケメン。
夏を越して少し焼けた肌がさらにイケメン度を引き上げている。
スーツのネクタイを少し緩めるその仕草も様になっていて、あぁ、こいつのモテる理由がわかるな、なんて思いながらアテをつつく。
私、紗倉 瑠菜とこの藤城は歳も同じの同期でなんやかんや仲はいい。
『いーでしょ、別に。』
そういう私にせっかくだから一緒に飲もうぜとか言うふじ、結局は優しいやつ。
「お前今日部長に怒られてたな。まぁ別にお前悪くないんだし、気にすんなよ。」
そういって慰めてくれるのも入社した時から変わらない。
それからしばらく、ふじは私の愚痴をただ相槌をうちながら聞いてくれて、溜まっていたことをすべて出し切った私はお酒の酔いと眠気に負けそうになっていた。
「おい、起きろー?そろそろ帰んぞー!」
そう言いながら優しくゆり起こそうとするふじの声は聞こえたような気がするけど、そこから先の記憶はない。