96 きちゃった♪
ファーストキスはどれか、なんてつまらない言い争いが、一段落し、今度の話題はこの前のことに。
「そういえば、この前急に三人で帰ってきたが、偶然会ったのか?」
「ううん、蕾さんの家で遊んでたんだよ。 まぁ部屋を見せてもらったり、お風呂に入ったり、色々したね」
まぁお風呂は少し遊びとは違うね、広くて楽しかったけど。
「そうか‥‥奈留、俺と、おふ「入りませんからね」‥‥」
こういうことって、兄が言うのおかしくないですか?
「そもそも、遊んだって話をしていたのに、なんでそこだけピックアップするんですか」
「いや、お風呂って聞こえたから」
聞こえたからって何ですか‥‥。
「理由になってません!」
「お風呂といえば俺だろう!」
聞いたことないよそんなこと!?
いやでもまぁ兄妹だし、別に入っても問題ないのかな?
「いやいや、とにかく、一緒には入りませんからね」
「そうだろうな、半分は冗談だ」
いや、残りの半分‥‥。
しかし、考えてみれば最近兄さんと兄妹らしいことをすることも少なくなっちゃったし‥‥。
お風呂はなしだけど、兄さんと久々に一緒に寝ようかな。
「でも、一緒に寝るぐらいならまぁいいですよ」
「うぉ!? マジか!」
あ、両手離れた。
今のうちに逃げよう!
「じゃあ私、ご飯の支度しますから」
「おう!」
兄さんめちゃくちゃテンション上がってる‥‥。
喜ばせようと思って言ったけど、さすがに、ここまでとは。
そんなことを考えながら、少し後悔していると、ピンポーン、というインターホンの音が鳴り響いた。
誰だろう、宅配じゃないよね?
私は玄関に行き、扉を開ける。
「あれ? 由南ちゃん?」
「こんにちは、奈留。 いきなりごめんね」
連絡もなく来るなんて由南ちゃんにしたら珍しい。
広葉なら特に気にせず入ってくるが‥‥。
「ううん、それは全然いいんだけど‥‥どうしたの?」
「それが‥‥「とうっ! こんにちは奈留ちゃん! この前のことで来ちゃった♪」‥‥と、言うことなのよ」
物陰からいきなり、祈実さんが!?
何故由南ちゃんと一緒に?
でもいつ見ても美人さんですね、笑顔が輝いてらっしゃる。
来ちゃった♪ってとてつもなく可愛いです!
あ‥‥いけない、いけない。 久々だったので、慣れたと思って油断してしまった。
それはそれとして、この前のことってなんだ?
「こ、こんにちは、祈実さん。 それで、この前のこととは一体‥‥」
「これだよこれ!」
すると祈実さんは、鞄を持ち出し言った。
「泊まりに来ちゃった♪」
‥‥‥‥え!?
◇◆◇◆◇◆
「よし、帰れ」
兄さん、笑ってるけど、セリフが合ってないよ!
さっきとは打って変わって、不機嫌オーラがすごい‥‥。
「あ、はい。 わかりました」
由南ちゃん、そんなあっさり!?
「いや、灘実さんはずっといてくれて構わない。 貴様だ祈実!」
「えーなんで私だけー!」
その後も兄さんと祈実さんが言い合っていた。
「でも、突然ですね。 連絡してくれると思ってました」
「奈留ちゃんに連絡しようとしてたんだけど、何故か送れなかったんだよ~」
あれ? そんなはずはないと思うんだけど‥‥この前携帯壊れて、新しくしたときに設定とか間違えちゃったのかな?
「それはすみません!」
「あはは、それは全然いいんだけど、それで、陸に連絡したのに全然出ないし、既読もつかないし‥‥」
兄さんからそんなこと全然聞いてないけど?
「兄さん?」
兄さんも携帯の調子がおかしいとか?
「大丈夫、ちゃんと届いていたさ。 だがあえて全部無視した!」
おい! 何やってんの!
しかも、なんで、してやったりみたいな顔してるのさ!
「もー! なんでそんな意地悪するのさー! 何度もお願いしてるのに!」
「ダメなものはダメなんだ。 それに今日いきなり来られて準備できてるわけ「いえ、一応準備は出来てますよ♪」‥‥」
いつ来るかわからなかったので、言われていた少し後からいつでも来ていいように準備はしていた。
「さすが奈留ちゃん!」
あれ? ということは、祈実さん今日、家に泊まるの!?
部屋の準備は出来ても、心の準備が‥‥。




