95 兄との休日の過ごし方
休日、私は特に何も予定がない兄さんと共に、家にいた。
元々インドア派の私はあまり用事がない場合は外にでないことが多い。
最近では友達と遊んだりすることが多くなり、家にいる時間も減りつつあるのだが。
その事を複雑な顔で見ている人間がいる。
まぁ、兄さんなんだけど‥‥。
『奈留が外に出ていく姿を見るのは嬉しく思うが、俺との時間が減って寂しい!』
そう言う兄さんなのだが、それなら小乃羽ちゃんとの時間を増やせよ、と思わずには、いられないが、まぁ私も兄さん嫌いじゃない。
いや、むしろ好きなので、こうして休日を兄さんとの時間にとっている訳だけども。
今日ぐらいはゆっくりしようかな、と何処かおじいちゃんみたい‥‥なんだかもう完全に精神が中学生をはるかに超えているわけだか、まぁ兄さんもそんな感じだし。
私も大体の家事は、やってしまったのでテレビを見て、ゆったりしている。
しかし、これは‥‥。
「まぁゆっくりは出来てるんだけど‥‥」
「どうかしたか?」
後ろから兄さんの声が聞こえる。
「いや‥‥うん、その‥ね‥‥。 テレビ見にくくないの?」
何故か今、私は兄さんの”膝の上”に座っている。
いきなり、言われたときは何言ってんの、と思ったが兄さんがしたいなら別にいいかなと思って座っているわけだけど。
「バッチリ見えてるぞ!」
そんな、嬉しそうに‥‥。
「いや、でも、重たいだろうし、そろそろ‥‥」
「大丈夫だ、一キロのダンベルのように軽い!」
いや、確かに軽いかもだけど!
それを言うなら、もっと羽のついたように軽いみたいにさ。
いや、別に羽のついたダンベルって言ってほしいわけじゃなくてね‥‥。
なんだろうな‥‥まずダンベルが重たいものってイメージがあるからその表現はおかしいよ!
「ていうか、これで兄さんに何の得があるのさ」
「え? 得しかないだろ?」
なに不思議そうな目で見てるの! 不思議しかないからね!
まぁ一応自分でも考えてみよう。
私が兄だったとして、得をするのか。
元々兄だった訳だから想像しやすいな。
えーと、妹が膝の上に‥‥‥‥ヤバい地獄だ‥‥。
何これ‥‥殺意しか湧いてこないけど!?
つまり、今は私が妹な訳だから‥‥。
「兄さんに殺される?」
「何処からその発想が出てきた‥‥」
「あはは、まぁ冗談だけど。 でも座ってるのはいいんだけど、抱きつくのは無しの方向でいいかな?」
何故か、がっしりと私のお腹を兄さんの両腕で掴んで離さない。
シートベルトか何かですか?
「どうして?」
「‥‥どうしてって、暑いですし」
「どうして?」
「いや、だから暑いですから」
「どうして?」
意地でも離さん気がこいつ!
もういいですよ、別に‥‥。
それにしても、こんな兄さんで恋愛の方はちゃんとできているのか?
「兄さん、最近は小乃羽ちゃんとはどうですか?」
小乃羽ちゃんとは、部活の時に話してはいるが、兄さんからは聞かされてないからなぁ。
「まぁ楽しくやってるよ」
「本当に?」
「あぁ」
それならいいんだけど。
でも、客観的に見ると、こうやって彼女の話をしているのに、妹に抱きついてるって大丈夫なのかこの兄。
「デートとかしてます?」
「まぁな」
一応は、してるみたいでホッとした。
あの一回だけじゃないんだね。
まぁプライベートなことなので、特に聞くつもりはないが。
あ、初回は例外です。 気になる方が勝ったんで。
「キスとかしました?」
「一切したことないな!」
何故そこだけ力強く!?
まぁ、小乃羽ちゃん奥手そうだし、仕方ないのかも?
「初めてのキスは大変かもしれないですね」
「まぁ基本的に、初めては家族に奪われてるんじゃないか?」
いやそんなこと言っちゃったらもう、コップとかペットボトルとか色々ありでしょう。
やっぱり初めての恋人のキスがファーストキスということにしておかないと!
「そういう家族とのキスはノーカウントですから!」
「え!?」
「なんでそこで驚いてるんですか!」
当たり前ですよそんなの!