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94 親切心

 昼休み、廊下を歩いていると、小乃羽このはちゃんがこちらに小走りで、向かってきた。

 何かあったのかな?


「こんにちは、小乃羽このはちゃん。 どうかしたの?」


「こんにちは、御姉様♪ いえ、来月の部活の予定を渡しとくようにって」


 そう言う、小乃羽このはちゃんの手には紙の束が。


「またらん先輩ですか‥‥」


「あはは、偶然出会ったので」


 それでも嫌がらず、一生懸命やるなんて、なんて健気なんだ。

 あの兄さんの彼女に小乃羽このはちゃんはもったいないと思わずには、いられないね!


「手伝うよ、小乃羽このはちゃん」


「え? でも‥‥」


「二人でやった方がすぐ終わるよ」


「‥‥ありがとうございます、御姉様」




 ◇◆◇◆◇◆




 女子テニス部の部員は多い。

 部活の時に渡せれば早いのだが、今日は部活がお休みになったので、こうして今渡している訳だけど。

 その事もあり、結構な時間を要した。


「中々多いね。 これを一人でやろうとしていたなんて‥‥何て言うか、もうちょっと人に頼ってもいいんだよ?」


「出来ることは、頑張りたいんです。 頼るとなんだか弱くなったような気がしてしまって」


 まぁわからないことはない。

 前世の私は、あまり人に頼ろうとしなかった。

 迷惑をかけたくない、というのと同時に助けられるというのがなんだか嫌だった。


 だからなのか広葉こうよう祈実きさねさんにも決して頼ろうとはしなかった。

 今思えば、もう少し打ち明けたりしたら気が楽になったかもしれないと思わないでもない。


 でも、今は違うからといって、小乃羽このはちゃんの考えを否定するつもりはない。


「でも、いつでも頼っていいからね」


「はい、ありがとうございます、御姉様」


「あはは、ちょっと恩着せがましくなっちゃったかな。 違う話をしようか」


「そうですね」


 とは言っても特に話す内容は決まってないので、次の言葉が出てこない。

 やっぱりちょっと気になる兄さんとのことを聞いてみようかな?


「最近、兄さんとはどう? 兄さん失礼なことしてない?」


「大丈夫ですよ。 優しいですから‥‥でも少し不満があるとすれば」


 不満!?

 不味くないか、それ。

 一体何なんだ!


「なにその不満って?」


「優しくしてくれているのはわかるんですけど、私も御姉様や森田もりた先輩みたいに軽い感じで接してほしいんです!」


 あ、そういう不満ですか。

 でもまぁその分丁寧に扱われているってことの証明だと思うけど、小乃羽このはちゃんからしたらそうじゃないってことだもんね。


「中々それは難しいね。 さすがに今すぐはできないかもね。 でもでも、大切だからってこともあると思うよ!」


「そうなんですかね? それならいいんですけど‥‥」


 まぁ付き合いが長くなればそのうち本性が出てくると思う。

 いや、出たらいけないんだけど‥‥。


 その後も、兄さんとのデート話や色々聞けて、充実した昼休みだった。


 それはそれとして、らん先輩には後できちんと抗議をしておく、ということも忘れずに実行しなければ‥‥。




 ◇◆◇◆◇◆




 帰り道、今日は皆の予定が合わず、一人で下校していた。

 とある先生に手伝いを頼まれ、その後も片付けなどをしていたら、少し暗くなり始めていたので、急いで帰っている最中だ。


「まさか部活がないのに、こんなに遅くなるとはね」


 今日は早く帰れると兄さんに伝えておいたから、心配してないといいけど‥‥。


 普段より、急いで歩いていると、前の方から女の人が歩いてきていた。


 うわ、綺麗な人だなぁ、 大学生ぐらいかもしれないが、なんだか大人っぽい。


 そうは思ったが、特にそれ以外に思ったことはなく、私はそのまま通り過ぎようとした。

 すると、前の方から歩いてきていた、一人の女の人が私に話しかけてくる。


「ねぇ」


「は、はい!?」


 後ろから肩を掴まれたので、驚いてしまう。

 え、何々?


「あ、驚かせてしまってごめんなさい。 少し、道を聞きたいのだけど‥‥」


 あ、そういうことですか。

 それなら知らない人から話しかけられるのも納得。

 尋常じゃなくビックリしたけど。


 それにしても近くで見ると、本当に綺麗な人だなぁ。

 でもなんだか似たような雰囲気の人を知っているような‥‥。

 ‥‥気のせいかな。


「あ、はい。 いいですよ」


「この近くに公園ってある?」


 公園? まぁ最近よく行っている公園ならすぐ近くだけど‥‥。


「あそこの交差点を右に曲がって、まっすぐ歩けば見えてくると思いますよ」


「そう、ありがとう。 あなたに聞いてよかったわ。 それじゃあね」


「あ、はい‥‥」


 女の人はそのまま歩いて行ってしまった。


 そのあと、私は少しの間固まっていたが、急いで帰っていたのを思いだし、私は、また早歩きで家に帰っていった。

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