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90 お風呂

 私が女になってから十三年、こういう場面は確かにあった。


 水泳の授業前の着替えとか。

 しかし、それに関しては、私はできるだけ隅っこにいて見ないようにしていたし、皆、意外に器用に隠して着替えているので私は恥ずかしさに耐えながらも乗り切れたわけだ。


 あとは温泉や銭湯などは行かなければいいだけなんだから行かなかったし。


 だが、今回の場合は‥‥。


「いやだ!! 心底いやです! それだけはどうしてもいやなんです! もう私おうち帰るー!!」


 私は全力で抵抗することにした。

 もう水泳の着替えとかと次元が違うでしょ!

 いくら女の子に慣れたりしたとはいえ、見てはいけないものと認識してしまっているものを無理矢理変えるのは難しいし、自分としても恥ずかしい!


 しかし、逃げようとしているのだが、二人に腕を捕まれ、逃げられない。


「まーまー、良いじゃないっすか。 女の子同士仲良く洗いっこするっすよ~」


 それが一番だめだ、あり得ない!

 逃げる! しかしまわりこまれてしまった!


「まぁ奈留なるが裸を見られるのを恥ずかしがってるのは知ってるけど、ここは‥‥ねぇ」


 いや、違うんだよ由南ゆなちゃん。

 見られるのが恥ずかしいのではなく、見ることが恥ずかしいだけなのだ。

 つまるところ、別に見られるのは構わないということだ。

 まぁ隠れて着替えていたりしていたから、そう思うだろうけど。


 それに由南ゆなちゃん、完全に面白がってるでしょ!


「そもそも、部屋に入るために、なんで体を洗わなきゃいけないのさ!」


「それは当たり前のことっすよ。 精密機器などに出来るだけ想定外のものが入ることを少なくするためっすよ」


 言い分はわからなくもない。

 そりゃ、ちゃんとしたところのクリーンルームとかは、服を変えたりして清潔にしてから入るってことを。


 でも、ここ家だったはずだよね?

 まぁ、つぼみさんのことだからなんかそういう空間も作っちゃうことあるかなぁとはまだ考えられる。


 でもさ‥‥なんでそんなガチのところに入らせようとしてるのさ!

 はじめに言ってくれたら、別に行こうなんて言わなかったよ!?


つぼみさんも毎回洗ってから入るの?」


「いやいや、別に洗わなくても、清潔な服に着替えれば‥‥‥‥いえ、ちゃんと洗ってるっすよ」


 おい、早速ボロが出たじゃないか!

 じゃあ別に洗わなくても‥‥。


「清潔な服を貸していただければ‥‥」


奈留なるは不潔なまま入るということね」


 ちょっとそれ言い方おかしくないですか!?

 別に毎日お風呂に入ってるんだから、不潔と言われるのは心外だ!


「なん‥‥だと。 ‥‥そんなに言うなら、入ってやろうじゃないですか!」


 えぇ、私怒りましたとも!


「‥‥フッ、計画通り」


 はめられた!?

 この一筋縄ではいかないと言われた、私を!?


奈留なるちゃん、やっぱりちょろいっす‥‥」


 ちょろいっていうなー!




 ◇◆◇◆◇◆




 結局のところ入ることになりました、お風呂には。


 えぇ、一人でね!

 頑張って説得しましたとも!

 なので、先に二人が渋々入っていった。


 そのあと私は脱衣室から、二人が出てくるのを待っていた。


奈留なるちゃん。 次どうぞっす~」


 それから私はつぼみさんにタオルと服を借りて、入るとこにした。

 やっぱり服借りるなら、別によかったんじゃ‥‥まぁもういいけどね。


 さすがというかなんというか、他の部屋と同様に、お風呂も広かった。

 こんな広いお風呂に入るの久々だなぁ。

 前世だと温泉行ったりしてたけど今世だとなかったし‥‥。

 ちゃんと体を洗い、私は広い湯船に浸かった。


「ぷはぁ、気持ちいいなぁ~」


 ゆったり足を伸ばせるのは、こういう広いお風呂の特権だよね。

 いや、家のお風呂でも伸ばせるのは伸ばせるけど‥‥。


「まぁ体を清潔にするだけだし、もう上がろうかな‥‥」


 すると、ドアの向こう側から何故か物音が。


「もう一回、入りたくなったので私、蔭道かげみちつぼみ、はいらせていただくっす!」


奈留なるー入るわよー」


 ちょ! 待っ───!?




 ◇◆◇◆◇◆




「‥‥見ちゃった」


 今、人生で一番の罪悪感かもしれない。


奈留なるが隠すから何かあるのかと思ったけど別に普通だったわね」


 いや別に隠してたわけじゃ、ただ水泳の時も見るのを避けるため、離れて着替えてたりしただけで‥‥。

 ていうか、由南ゆなちゃんわかってたでしょ!


「逆に綺麗でビックリっす。 なんで隠してるのかわからないぐらいっす」


 そ、そう言われると何だか照れるなぁ~。

 あれ? これで、喜んでいいのか私!?


 それと別に隠してるわけじゃなくて、見るのがつらいってだけで!

 これさっきも心のなかで言ったな!


「それより、早く入ろうよ! 何で作業部屋に入るためにお風呂に入ったのに、目的が変わってるのさ!」


 いつの間にか、見るために頑張る、みたいになってらっしゃるけど?


「ま、そろそろ入るっすか」


 ふぅ、ようやくだぁ。

 真っ白な服に身を包み、私は作業部屋にようやく入れるようだ。

 下がっていた気分を上げる。


「ようやく入れる~」


「作業部屋に? それともお風呂に?」


「作業部屋だよ!!」


 由南ゆなちゃん、何もう一回お風呂に入らせようとしてるのさ!

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