89 予想外の連続
「着いたっすよ、ここが私の家っす!」
連れてこられたのは、高層マンションの最上階。
いや~眺めがいいねぇ‥‥いやいやそんなことじゃなくて!
「ロビー通ったときから少しおかしいなとは思ってたんだけど‥‥ここに住んでいるの!?」
完全にお金持ちが住むような感じっていうか、こんなところにそもそもこんな高層マンション建ってたっけ!?
「そうっすよ」
「凄いわね。 ご両親はご在宅なの?」
「え? 何言ってるんっすか由南ちゃん、冗談きついっすよ。 住んでないっすよ、独り暮らしっす」
はぁ!?
いやいや、蕾さんの方が冗談きついっていうか、本当に!?
まさかの中学で独り暮らし‥‥。
「いや、お金とかどうしてるのよ」
「親から離れるため、自分頑張ったっす! もちろん金銭面も。 あ、でも別に勝手に家を出たとかじゃないっすよ? ちゃんと許可はもらってるっす」
いやもう完全におかしいよ!
さっきから驚くことしかしていないけど、なんだかそれを納得してしまっている自分もいたりする。
驚きつつも私達は蕾さんの家に足を踏み入れた。
◇◆◇◆◇◆
「広いね」
「うん、広いわね」
リビングに案内された私達はその広さに圧倒されていた。
その前の廊下にもたくさんのドアがあり、たぶん部屋がいくつもあるはずなのに、この広さ。
これ何㎡あるのかな?
「でも、独り暮らしなら友達とか普通に呼んだりできるんじゃないの?」
別に親とかそういう問題はないわけだしね。
「まぁできたとは思うっすけど、時間とかの問題で、特に友達と遊ぶとこをあまりしなかったっすから。 今は時間がようやくできたって感じっす」
「へぇ、忙しかったってことね」
中学生のはずなんだけど、今の蕾さんはなんだか大人に見える。
というか、何してるのかすごく気になるんだが。
「蕾さん、一体何者なんだ‥‥」
「ただの中学生っすよ。 それで、飲み物何にするっすか? 紅茶? コーヒー?」
なんだか、そういう飲み物で、もてなされると余計に大人に見えるっていうかなんというか。
いや別に見た目は小さいままなんだけど。
まぁここはコーヒーが苦手な私は紅茶を選択するしかないわけで。
「紅茶で!」
あと砂糖が欲しいです!
と言うのはなんだか少し恥ずかしいので、見栄をはって言いません。
「コーヒーをもらうわ。 別に種類はなんでも飲めるけど、砂糖とかはつけなくて大丈夫よ」
由南ちゃん甘いもの苦手だもんね。
「了解っす。 あ、紅茶はダージリンしかないっすけどいいっすか?」
「うん、大丈夫だよ」
大丈夫、私の舌は紅茶の種類なんてわからないから。
そもそも飲んだことがあるかも疑問なところだ。
「じゃあちょっと行ってくるっす~」
こうして蕾さんはキッチンの方に向かっていった。
◇◆◇◆◇◆
リビングにて、三人でお喋りをして、少し時間が経った頃、私はとあることが気になっていた。
「ねぇねぇ、蕾さん」
「どうしたっすか奈留ちゃん?」
「あの頑丈そうな扉の先には何があるの?」
そう、私が気になっていたのは、リビングの壁に他の扉とは明らかに作りや素材が違う、頑丈そうな扉があったからだ。
「あ~そこは作業場っすね。 何かを考えたり作ったり、プログラミングしたり、色々してるっす。 中入って見るっすか?」
家の中にあるってどうなんだそれ‥‥。
いや、そんなことより!
「え、入れるの!?」
「いいっすよ~」
「凄くあっさりしてるわね‥‥」
いやでもこんなチャンスほとんどないだろうし、ここはね。
「よし、行こー!」
「じゃあその前に‥‥一緒にお風呂に入るっすよ」
‥‥‥‥へ?




