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番外 前世の広葉視点 墓の前では

※注意 この話は前世の広葉視点です

陸が死んでから時間が経ってます

シリアスが多め

初めてシリアス書いたので、慣れてない


それでもよろしければどうぞ‥‥。

 一年前、俺の親友の陸は殺された。

 俺はその時から何かぽっかりと穴が開いたように喪失感に苛まれていた。


 俺は正直、あの妹はいつかやるんじゃないかとは思っていた。

 だから俺は少しでも可能性を少なくするため色々やった。

 出来るだけ妹と一緒にいる時間を少なくしたり、アイツがストレスを出来るだけ外では感じないように努力したり。

 でも陸はどんどん追い込まれている表情をしていた。


 俺に何の力も持ってないからって陸は俺の親友だ。

 陸の助けになりたかった。

 哀れみとかじゃない。 ただ俺はアイツと一緒に笑って過ごしたかった。

 だが、まだ高校生の俺には限度があった。


 だが陸の親が離れて暮らすのを許さないのなら、独立すればいい。

 そう思った俺は、バイトもしたし、就職先も頑張って捜していた‥‥。

 あと少しだったんだ。 あと少しで妹から解放できたかもしれない!

 なのになんであのタイミングで‥‥。


 ‥‥ほんとは理由なんてわかってる。

 自分が気づかない内に余計なストレスを与えていたのだろう。

 自分に余裕がないときでも、陸は周りに気を使っていた。

 バカだよなぁ。 自分のことだけを考えればいいのに‥‥。

 あんな妹の世話なんて放り投げたらよかったのに‥‥。


 今の気持ちは、もしかすると喪失感ではなく自分に対する失望なのかもしれない。




 ◆◇◆◇◆◇




 俺は何かあるとすぐに、陸の墓に行くようになっていた。

 自分でもおかしいとは思うが、墓の前に行くと何か楽しかったあの日々に戻った気持ちになった。

 それと、独り言も増えたような気がする。


 まさかあの頃はこんなに早く親友の墓を見ることになるとは思わなかった。


「それでな陸。 大学の友達が、も‥‥‥‥何やってんだろな俺は‥‥」


 たまに自分が我に返るときがある。

 それに、こんな話をしたところで、陸が喜ぶとは思えない。


「またくるよ、陸‥‥」


 帰ろうとしたその時、こちらに女性が向かってきていることに気付いた。


「こんにちは」


 女性が俺に向けて挨拶してきた。


「よお、転校生」


 俺はこの女性を知っていた。

 俺が高校二年の時に転校生してきた確か名字が‥‥磨北まきただったか?

 陸がよく見ていたので別のクラスだったが、顔はよく覚えている。


「あはは‥‥もう転校生ではないですけどね。 森田さんも夕闇くんのお墓参りですか?」


「お墓参り‥‥まぁそんなもんだ。 ていうか俺のこと知ってたんだな」


 話したことはない‥‥はずだ。


「森田さんが気になってた人の近くにいたから知ってました」


「それってつまり‥‥」


「‥‥はい、私夕闇くんのこと好きだったんです。 なので、近くにいる森田さんも知っていました」


 それを聞いても俺はあまり驚かなかった。

 大体予想がついたからかもしれない。

 そんなんじゃなかったら普通墓参りなんて来ないだろうからな。


「なんで好きだったのか聞いてもいいか?」


 別に聞く必要はないのだが、何となく聞いてみたくなった。

 転校生は少し考えたような顔をした後、なにかを決意したようにこちらを見た。


「私が好きになった理由は教えます。 だから私の知らない夕闇くんのことを教えてもらえませんか?」


「何で知りたいんだ? 聞いたってお前にはもう何の意味もないだろうに」


「それでも知らないのは、すこし寂しくて‥‥」


「‥‥わかった」



 その後、転校生は俺に理由を教えてくれた。

 昔の知り合いに雰囲気が似ていて、陸が気になりだしたと。

 関わってみて、陸の優しさや思いやりに気づいたら好きになっていったそうだ。


 よく聞きそうな話だが、俺は何となく本当なんだろうなと聞いていてわかった。


「という感じです‥‥」


 転校生は顔を真っ赤にしながら恥ずかしがっていた。


「あぁよくわかった。 ‥‥お前が陸の生きているときに、陸の隣にいたら、少しは変わったのかもしれないなぁ」


「え?」


「いや何でもない!」


 後半、心の声が漏れてしまっていたようだが、聞かれてはいなかっようだ。 あぶないあぶない‥‥。


「じゃあ森田さん。 教えてもらえませんか? 夕闇くんのこと‥‥」


「あぁ約束だからな」


 そのあと俺は、俺が知っていることをほぼすべて話した。

 どういう育ちかたをしたか、どういう性格だったか、そして‥‥どういう死だったか。


 何故こんなに喋ったのか、自分でもよく分からないが、俺は聞いてほしかったのかもしれない。 陸の事を好きだというこの子に‥‥。




 ◆◇◆◇◆◇




「今日はありがとうございました」


「俺も何だか今日は楽しかった。 ありがとう」


「また、お話しませんか? 今日みたいに」


「あぁ、またいつかな」


 そうして俺たちは、別々になって帰った。


 しかしこの出会いを最後に俺はその子に会うことは二度となかった。

次回からは、また今世妹の視点で楽しく書いていきます。

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