表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/780

番外 蕾視点 ただ、貴方に会いたい‥‥

この話は蔭道蕾さん視点です。

一応番外にしてますが、80話までの内容を知ってからこちらを読むのをおすすめします。

 今でも思い出す、あのときの記憶。


 辛かったこと。

 楽しかったこと。


 そのすべてがあの頃から変わっていった。




 私、蔭道かげみちつぼみが小学校の低学年だったとき。

 ‥‥私は‥いじめられていた。


 今でこそ悪口を言われたところで、特になにも思わないが、あの頃の私の精神は年相応だといってよかっただろう。


 今でもよくやっているが、私はものを作ったり、考えたり、発明したりすることが大好きだった。

 実際、クラスで私だけ浮いていることは、わかっていたが、私は一度考えると授業中でも関係なく別のことをしてしまう。


 別に友達とかもいなかったし、その当時はとても暗かったので出来ないのは当たり前だったのかもしれない。

 しかし私には必要なかったのでそれでいいと思っていた。


 しかし、そのせいで私はいじめの標的になった。

 特に庇う人間もいない私。

 突然助けてくれる、王子様やヒーローのような人間も私にはいるわけがない。


 ただ適当にいじめる人間にはもってこいの人間が、無表情で暗い私だったというだけだ。




 ◇◆◇◆◇◆




 彼と出会った日も私はいじめられていた。


「キモいんだよ、お前」


「あはは、かっちゃん言い過ぎだって。 まぁ、実際キモいんだけど」


「お前も言ってるじゃねぇか」


 なんでこの人達はこんなに楽しんでいるんだろう。

 そんな事を当時は思ったものだ。


 何故か無意味にいじめてくる数人のクラスメイト。

 それを光景を無視する教師と他のクラスメイト。


 周りの大人からは勝手に天才だなんだと騒ぎ、親は私の脳にしか興味がない。

 その時は本当に生きている理由が見つからなかった。




 学校を終えた私は急いで学校を飛び出した。

 あの空間に長くいるのが耐えられなかったからだ。


 公園を通って帰った方が近道だと知っていた私は公園を通っていた。

 公園では、少し年上の中学年か高学年くらいの男子が何か投げ合って遊んでいた。




 ◇◆◇◆◇◆




「なーこうよう。 やっぱりずる休みは不味かったんじゃねーか?」


 水風船を投げながらりくが言う。


「あはは、もう今さら仕方ないだろう。 それより、りく! 俺のことはこうようではなく、ひろばと呼べ! それが真の名前なんだ」


「先生が名前読み間違えただけだろうが。 お前は気に入ったのか知らないけどさ」


「なにをー! くらえ! ひろばひっさつあたーく!」


「うわっ! 五個同時はズルいぞ、こうよう!」




 ◇◆◇◆◇◆





 ───私、一応走って帰って来てるはずなんだけど、なんでいるんだろう。

 学校違うのかな?


 なんとなく、そんな疑問があったが私は特に深くは考えずに横をすり抜けることにした。


 すると、左足に地面とは違い柔らかい感触がしたと思ったら、一変、私は地面に顔面をぶつけていた。

 すごい衝撃と、痛みが私を襲う。

 何かにつまずいてしまったらしい。


「うおっ! おい、大丈夫か?」


 近くにいた方の男の子が私を心配してくれる。

 でも、痛いのと、他人が怖く見えて、返事が出来ない。


 すると遠くから何か叫び声が聞こえる。


「ひろばスーパーキャノンをくらえー!」


「おい! こうよう待てって! うわ!」


 すると、何故か私はびしょびしょになっていた。

 私は誰がしてきたか理解できず、またクラスの男の子がしてきたと思い、怖くなって、今までこういうことで、泣くことはなかったのだが、その時、私は初めて大泣きした。




 ◇◆◇◆◇◆




「ずみまぜんでじた!」


 私が涙で見えなかった視界が泣き止んだことにより、見えるようになったとき、一番始めに見た光景は、私よりぼろぼろの男の子が土下座しながら、謝罪しているところだった。


「え‥‥あの‥」


「全くこいつは。 君、ゴメンな。 君に水風船をぶつけた元凶はこうやってぼこぼこにしてるから」


「反省してるから! ほんとだから!」


 笑顔で暴力する男の子に、私は少し怖くなった。

 なんでこんなことする人ばかりなんだろう。



 その後、男の子が落ち着いて謝らせてほしいということで、ベンチで話をすることになった。


「ごめんね、気づかなかったんだ!」


「気づかなかったからいいってもんじゃねーだろうが!」


「痛い痛い痛い! 耳はやめて! 耳は!」


 痛そうなので、やめてあげてと言おうとしたら、そのやられてる人の表情を見て、なにも言えなくなった。

 暴力を振るわれているはずなのに、この人はやめてという感情ももちろんあるのだろうが、なんだか嬉しそうだったから。


 なんだか二人を見ていると、怪我も濡れていることもあまり気にならないようになった。


「そういえば、君、名前は?」


「‥‥つぼみ‥です」


「俺はりくで、こっちが‥‥」


「ひろばだ!」


「おい!」


 暴力的な人がりくさんで、暴力されて喜んでいる人がひろばさん。

 なんだかよくわからない人たちだな、とその時はそう思った。




 ◇◆◇◆◇◆




 でも、この人達が‥‥いや、ひろばさんが、私の人生を百八十度変えてくれた。

 その転んだ日の数日後、私が公園でいじめられているところを偶然見かけた、ひろばさんが助けてくれたからだ。


「な、なんだよお前!」


「俺の大事な友達に何してくれてんだ!」


「ひ‥‥ひろばさん?」


 あのとき以来会ったことがなかったはずなのに私を助けてくれた。

 友達と呼んでくれた。

 それだけで、私は何が変わったような気がした。


「年上がでしゃばってくるんじゃねーよ!」


「喧嘩で歳とか関係ないから! くたばれ!」


「うわ! やめろ! くっそ! みんな逃げるぞ」


「ま、待ってよ、かっちゃん!」


 いじめていたクラスメイトが帰っていく。


「二度と友達をいじめんじゃねーぞ! ‥‥よし蕾ちゃん、これで、先日のことはチャラってことでどうかな? ダメ?」


 その時、私はいないと思っていた、王子様に出会えたような気がした。

 少し、おかしな人だけど。




 ◇◆◇◆◇◆





 あの後から私はひろばさんと公園でよく話すようになった。

 その日も私はひろばさんと二人で公園のベンチに座っていた。


「ねぇ、ひろばさん。 いじめられない方法ってあるのかな?」


「それは難しいんじゃないかな。 別につぼみちゃんが何かしてるわけでもないんでしょ?」


「そうですけど‥‥」


「いじめられるのは止められなくてもさ、それ以上の友達を作ればいいんじゃないかな」


 その作り方も私は知らないのだが。


「徐々にでいいからさ、もっと笑ってみたらいいと思うんだよ。 やっぱり不機嫌な顔をしているより、笑ってる人の方が話しかけやすいと思うしさ」


「そんなことで出来るとは思えませんけど‥‥」


「でもきっと友達まではいかなくても、しゃべってくれる人はいてくれると思うよ」


 ひろばさんからそうアドバイスされて、私はそれを実践することにした。

 はじめは、やっぱりおかしな目で見られたが、少しずつ仲良くなって行けそうな気がした。




 ◇◆◇◆◇◆




 それから数ヶ月が経ち、いじめられることはなくなり、友達と呼べる人も出来てきて、私は好きな人ができた。


「ひーくん! 今日はなにして遊ぶ?」


 呼び方が、変わり私はひろばくんのことをひーくんと呼ぶことにした。


 いつも公園にいるひーくんに私は毎日会いに行った。

 今日もどさくさに紛れ、私はひーくんに抱きついた。


「う~ん今日はどうしようかな‥‥」


 ひーくんは特になんの反応もなく、考えているようだった。

 少しぐらい、恥ずかしがったりとかないのかな。

 ううん、でもきっといつか、ひーくんを振り向かせてやろうと私は心に誓った。


 私はひーくんに好かれようと、とあることを聞いてみた。


「ひーくん、何か困ったこととかない? 私がなんでもしてあげるよ!」


 困ったことを解決したら、好きになってくれるんじゃないかと私は考えた。


「困ったことかぁ。 飼っている猫‥‥いやそれはいいか。 結構前にゲームが壊れたこととか困ってるけど‥‥まぁつぼみちゃんにはあまり関係ないか」


 へぇ、猫飼っているんだぁ。

 いや、今はそれより!


「それ、私が直してあげるよ!」


「え? でも‥‥」


 これでも色々作ったりしているのだ。

 直したりはできるはずだ、


「いいから、ね?」


「うん、わかった」




 ◇◆◇◆◇◆




 数日後、修理したゲーム機をひーくんに手渡した。


「すげー! つぼみちゃん、どうやったの!」


「私が直したんだ~♪」


「すごいなぁ! ありがとう!」


 また会う約束をして、その日は帰った。

 これで、もっともっと仲良くなれると思っていた。

 しかし、現実はそうじゃなかった。




 そのあと私はひーくんと会うことはなかったのだ。


 親から急に習い事を通うように言われ拒んだが、私は公園に行くことが出来ないほど、無理矢理、多くの習い事を通わされることになった。

 それでもひーくんとのことを思い出せば、少しは気が休まった。



 そして、ようやく公園に行くことができたのは一ヶ月後。

 しかし、いつも公園にいたはずのひーくんはいなかった。


 ひーくん、風邪でも引いちゃったのかな?


 偶然かと思い、そのあとも習い事を抜け出しては公園に行き、待っていたが、私はひーくんに会うことは出来なかった。


 ‥‥ひーくん。


 その時、私は自分の失敗に気づいてしまった。

 私は彼の家どころか、歳も、名字も、何も知らないことに。


 な、何か知っていること‥‥。


 そうだ! そういえば、初めて出会った時、私の学校が終わってすぐだったのに、公園にいたのは別の小学校だからかもしれない。

 あと他に何か、なかったっけ‥‥。


 聞くのが恥ずかしかったとかそういうことを思ってしまった過去の自分をひどく憎みたかった。


 会いたい、会いたいよ‥‥ひーくん‥‥。




 私はその後、何年もひーくんを探した。




 何年も‥‥‥‥。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ