8 兄って実は‥‥
聞きたいこと‥‥。
現時点で由南ちゃんが兄さんのことをどう思っているのか。
あまりよく思ってないなら、私は諦めるしかない。
今世、一番の親友だし、由南ちゃんには幸せになってほしい。
自分事を巻き込むわけには行かな‥‥。
「カッコいいと思うよ」
‥‥え?
「い、今なんと‥‥」
「え? だからカッコいいと思うって言ったんだけど?」
き、キターーーーーーー!!
これは聞き間違いじゃないよね!
「ほんとにほんと!?」
「えぇ、それはそうとあんた、本当にブラコンすぎない?」
「違うよ! ちょっと心配性なだけだよ! で、で、由南ちゃんは、どんなところがカッコいいと思うの?」
何だか自分の事を聞いてるみたいで恥ずかしいが、ワクワクしてくる。
「いや別にないけど?」
へぇーそんなところがー‥‥‥‥え?
あれ?なにかおかしいな?
「カッコいいとは思うんだよね?」
「そうだね」
「なのにないの?」
「客観的に見てカッコいいとは思うよ? だから私たちが一年の時は結構噂になってたじゃない」
ん? 今、理解不能な言葉が並べられていたな‥‥。
まず確認したい。
「客観的に?」
「うん、あれだけ人気があったんだから、そりゃカッコいいってことになるでしょ? さすが奈留のお兄さんね」
えぇ!? 由南ちゃん自身はではなく回りの反応で言ったってこと!?
聞き方が悪かったのかな? でも直接聞くわけにもいかなかったし‥‥。
いやいやそれより気になることをいってたな!
「噂って何?」
「え?」
「一年の時の噂って?」
「え!? あんた知らないの? あれだけ騒がれてたし、お兄さんの事だから知っていると思ったんだけど‥‥」
「知らないけど‥‥?」
何! どんな感じで噂になってたんですか!
しかもなぜ私、知らないんですか!?
え? 何? 友達少ないから? 喧しいわ!!
「まー奈留ってこの手の話全然興味なさそうだったし、知らないのも仕方がないのかもね」
「そういう話はまぁ‥‥そうだね」
興味がないというより、会話に中々はいれないというのが真実だが‥‥恋愛の駆け引きとか怖いし!
「で、肝心の噂っていうのが、今の話の流れでモテていたってのは分かるわよね? まぁそういうこと。 人気あったみたいよ」
な、なんだと!?
あり得ない、家では全く女気無さそうだし、後輩にまでとどろくなんて、兄に限ってあるわけない!
あ、自分の事を言ってるみたいで心が痛い‥‥。
「で、でもモテる要素がわからない‥‥」
そうだよ! 兄がモテているのなら、前世私がモテなかったのは理解できない!
「それは、簡単だよ。 部活だよ、部活。 お兄さんサッカー部のレギュラーだったじゃない」
それかぁーーーー!!!
それが前世と今の違いですか!
はい私、前世でサッカー部には入っていません。
そこまで興味もあるわけでもなかったが、部活に入らなかった、一番の理由はご察しの通り妹が原因だ。
体育の授業の日でも砂がついて汚いとか意味不明なことで、暴力を振るわれていた私である。
部活に入りでもしたら、暴力を振るわれる理由が一つ増えることになる。
そんな理由もあり私は部活をやらなかったんだが‥‥‥‥やってたらモテたのかーー!!
そりゃサッカー部試合とかよくしてるし、見る人も多いしなぁ。
ちなみに今の兄がサッカーを始めたのは、私の一言らしいがそれは今はいい。
てか家では全くそんなモテている空気ないんだが?
妹にたいして隠し事とはいい度胸だよ兄さん。
「そっか、兄さん、人気あったんだぁ」
「まースポーツも、勉強もできて顔もいい方、そして優しい。 ほら、要素いっぱいでしょ?」
「そうだね‥‥」
「まぁ告白とかも結構あったみたいだし‥‥大丈夫、奈留?」
「え? あぁ大丈夫だよ、由南ちゃん。 今、兄さんにどういう風に説教してやろうか考えてたとこなんだから」
「どの部分に説教する必要があるのよ!」
あれ? そういえばなんでこんな話になってるんだ?
そう考えたと同時にチャイムの音が鳴り響いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
────八年前、公園にて
『お兄ちゃん、ボール蹴って何してるの?』
『なる、これはなサッカーっていう遊びなんだぞ』
球技名を聞いた訳じゃないんだけどまぁいいか。
『お兄ちゃん、蹴るの上手だね、カッコいい!』
子供は誉めれば伸びる。 俺と兄が同じなら。
なので誉めよう。
『ほ、ホントかホントにカッコいいか!?』
『うん! お兄ちゃん、カッコいい!』
『サッカーしてる、兄ちゃんどう?』
『好き!』
『‥‥‥‥兄ちゃん、サッカー選手になる!!』
と、言うのが兄がサッカーをしていた理由だそうです。
ヤバい私、全然覚えてない!!