332 最後まで
『小乃羽、落ち着いた?』
「う、うん‥‥さっきよりは‥‥」
あのよくわからない人が去っていったあと、私は夕闇さんのことでパニックになっていた小乃羽を何とか落ち着けた。
「どうしてこうなっちゃったのかな‥‥」
『わからない。 でも、偶然ではないでしょうね‥‥』
腕時計はちゃんと設定をして渡した。
夕闇さんがそれを弄るはずがない。
腕時計の誤作動も出発する直前も特に不具合があったわけではなかったからありえない。
「私の‥‥せいかな‥‥」
『なんでそうなるのよ』
「もっと仕事を頑張って、準備も早く終わらせていたら、お姉ちゃんよりも早く着いていたはずだから‥‥」
『なに言ってるのよ。 私も準備してたし、そもそもこんなことになるなんて思ってなかったんだから、どうしたって夕闇さんより早くなんて行けなかったわよ』
「それは‥‥そうだけど‥‥‥‥」
でも、やっぱりそう思わずにはいられないんだろう‥‥。
「アイちゃん、タイムマシンで戻ったらさ、ちゃんと生きていた状態のお姉ちゃんを助けられるかな‥‥?」
『わからない。 でも、それが私達と一緒にいた夕闇さんとは限らない。 それに‥‥私達は知ってるでしょ、一人の生死を覆すのがどれだけ大変か‥‥』
それに夕闇さんがこうなったのは腕時計を使いすぎた結果だ。
夕闇さんが戻らないという選択はしないだろうから、何故体が小乃羽の体にならなかったのかわからない以上、戻っても同じ結果になる可能性が高い。
小乃羽の体を使わない限りは、もう夕闇さんは生きられなかったんだから‥‥。
今のこの世界でどうにかしようにも、もう正直小乃羽の体でも無理かもしれない。
それだけ、自分の体に無理に戻ったことで、夕闇さんの精神はボロボロになっている。
腕時計を使うのもリスクが高いし、世界から世界への移動も、もはや不可能だろう。
「なんで、こうなるのかな‥‥。 こんなことになるならお兄さんなんて助けなくたって‥‥‥‥ごめん、言っちゃいけないこと言った」
『私達にとっては夕闇さんの方が大事だものね‥‥。 それで、これからどうする? 難しくても夕闇さんを助ける方法を探す?』
今のところは全く方法が思い浮かばないけれど‥‥。
戻ってもほとんど意味がないだろうけど、どうにかして小乃羽にならなかった理由を突き止めることができれば‥‥。
「確かに今すぐにでも助ける方法を探したい。 だけど、お姉ちゃんが望んだことはお兄さんを助けることだから‥‥私は最後までやらなきゃいけない。 私は‥‥この桜を守るよ」




