320 朝、私は思い出す
「空綺麗ですね~」
「ホントだね」
星空を見るのなんて久々かもしれない。
いつも夜になっても空を見上げることなんてしないしね。
まぁ、街中で明るいとあんまり星なんて見えないし、ただ真っ暗な空って感じだからね。
『二人とも、自転車に乗りながら上を見たりして、危ないですよ』
アイちゃんにそう言われて、私は空を見るのをやめて、前を向く。
「いいじゃん、別にこの辺車通ってないし、というか人がいないし」
『人はいなくても転倒するかもしれないでしょうが。 ほら、暗いんだしちゃんと前を見る』
「わかったよ~。 にしても、このままだと日を跨いじゃいそうだね‥‥」
『そうね、やっぱり泊まればよかったかしら』
「今更だよね~。 でも、正直疲れたのか少し眠いよ」
確かに私も結構な疲れがきていた。
ペダルは軽くて、漕いでいても疲れないが、長時間同じ姿勢でいるだけで結構な疲労が押し寄せてくるので、今の疲れは恐らくそれだろう。
『ま、頑張ればそれだけ早く着くんだし、頑張りましょう』
「そうだね、頑張ろー!」
そして、私たちが家に着いたのは、日を跨ぐギリギリ前くらいだった。
◆◇◆◇◆◇
「ふぁ、もう朝か‥‥」
昨日家に帰って‥‥何だか眠たくてすぐに寝ちゃったんだよね。
何故かベットには小乃羽ちゃんも熟睡していた。
まぁ、小乃羽ちゃんも頑張っていたから、寝ぼけていても仕方ない‥‥かな?
ベットから体を起こすと同時に改めて私は昨日のことを思い出す。
「私、本当にお兄様と別れたんだよね‥‥」
必要なことだからと、自分のなかではもう割りきっていると思っているが、それでも心にぽっかりと穴が開いたような‥‥喪失感を覚えていた。
もう、お兄様と話すことができない。
以前ならそれでも特に気にならなかったことだが、お兄様と話す楽しさや幸福感を覚えてしまった今は、それがとても辛いことに思える。
私はその喪失感を紛らわせるため、朝食を作ろうとキッチンに向かう。
そして、今ある材料を見るが、二人分の朝食を作れるだけの材料がなかった。
そういえば、旅行に行く前に買い物行かないとなぁと思っていて、急に旅行が決まったから、買い物できてなかったんだっけ‥‥。
それでもここまでなかったっけと疑問になるね‥‥いつも結構ためてることのほうが多いのに。
「ないなら買いにいかないとね‥‥」
スーパーは‥‥まだ開いてないな。
じゃあ、コンビニでもいいか‥‥でもなに買おうかぁ‥‥。
私は身支度を済ませて、外に出ることにした。
 




