318 感謝の言葉に‥‥
「じゃあ、私はもう行く。 本当に乗っていかなくていいのか?」
先生は車の窓を開けて私に話しかける。
「はい、これでも体力はある方ですから」
「そうか‥‥‥‥あ、そうだ。 一つ言っておかなきゃいけないことがあったんだ」
「え、なん‥‥ですか‥‥?」
何かあったのかと私はかなり身構える。
「陸‥‥いや、奈留に言われたんだ。 もし、自分を生まれ変わらせてくれた人がいたならお礼を言っておいてほしいって。 だから、ありがとう」
「え、いや私は‥‥‥‥」
私はその先の言葉を言うことは出来なかった。
「それじゃあな」
先生はそう言って車の窓を閉じた。
そして車はすぐに発進し、数秒後には見えなくなった。
「私は‥‥感謝されるような人間じゃない‥‥」
私が犯した罪によって起きたことだ。
責められることはあっても、感謝されるような人間ではないのだ。
そもそも御姉様はそれが夕闇奈留だったってことを知らないからこそ、そう言っているのだろう。
知っていれば、きっと‥‥。
『確かに色々と間違いは犯したかもしれません。 でも、夕闇さんが償おうと‥‥頑張ろうとしていたことを私は知っています。 だから、もうそんなに自分を責めなくてもいいんじゃないですか?』
「ありがとう、アイちゃん。 だけどね‥‥私が許せないんだ。 ‥‥ごめんね」
まだ私は自分を許すことが出来ないのだ。
きっと御姉様が万が一にも許してくれたとしても、それでもきっと変わらない。
『いえ、気にしないでください。 それでは私たちも行きましょうか』
「うん‥‥」
◆◇◆◇◆◇
「でも、よかったですよ」
『よかったって、何が?』
「いや、お姉ちゃんが森田さんの車で帰らなくて‥‥もし帰っちゃったら私だけで帰るはめになってましたから」
流石にそんなことは‥‥う~ん、流石に車に自転車二台は入らなかったか‥‥というよりかは透明のまま車で隠れていられるのかっていうね‥‥。
「流石に小乃羽ちゃんをおいていくことはないよ。 それに私がいなくてもアイちゃんがいるし、ひとりぼっちというわけではないよ?」
「自転車でアイちゃんと二人きりだと私はたぶん耐えられないと思います。 主に体力が‥‥」
行きしも体力をつけされるとかって言ってたもんね。
『じゃあ、いつかそうなった場合は私は置いていくわね』
「ごめんなさい、ひとりぼっちはもっと嫌です!」
まぁ、アイちゃんがいてくれているお陰でどの道を通れば近道かとかもわかるし、ありがたい存在だからね。
『わかったから。 じゃあ小乃羽、帰りは休憩なしね』
「お姉ちゃん、助けてください!」
『冗談よ。 そんなことより早く帰りましょう』
私達は家に向かって走り出した。




