314 あるわけない
お兄様に旅行の一日目のことを何となく聞いて、やっぱり楽しそうで、少しだけ早く行って参加しなかったことを後悔した。
‥‥いや、蕾ちゃんがいるから、結局は参加できなかったかもだから落ち込んでも仕方がないけども‥‥。。
一日目の途中で参加したのだそうで、流石にそこから蕾ちゃんにだけ見つからないようになんて無理だからね‥‥。
そして、旅行の話が一段落ついたとき、私は別れを切り出すべきかどうか、実際言った方が正しいのか言わない方が正しいのかはわからないが、アイちゃん達にやると言った以上は、途中で止めるなんてあり得ない。
「お兄様‥‥」
「ん、どうした?」
折角二人きりなのだから、今ここで言わなきゃ、またいつ言えるかわからない。
私は覚悟を決めて、言うことにした。
「お兄様‥‥‥‥私と別れましょう」
言ってしまった‥‥もう後戻りは出来ない。
いや、これでよかったんだ‥‥これで‥‥‥‥。
お兄様は一瞬は驚いた表情をしたが、だけどすぐに真剣な表情になった。
もしかしたら、お兄様は何となくそういう話になるってわかっていたのかもしれないな‥‥。
「それはやっぱり‥‥‥‥転校するからか?」
改めて、お兄様に言われて、私は嘘をついていることを心苦しく思う。
だけど、本当のことなんて言えるわけないし、私はまた嘘をついた。
「そうです‥‥。 もう会えないかもしれないくらい遠くなんです。 そんな離れる人間がお兄様を縛り続けるなんて、耐えられませんよ‥‥」
会えないかもしれないじゃなくて、もう会えないけれど‥‥でも、もし少しでも可能性があるのなら‥‥いや、そんな期待は持っちゃ駄目だよね。
私はお兄様には自由にのびのびと生きてほしいのだから。
「俺は別に離れていても問題ないと思うけどな」
離れるにしたって、海外と別の世界では‥‥ね‥‥。
本当に海外に転校ならよかったのにな‥‥。
「私が嫌なんです‥‥すみません、こんな我が儘言っちゃって‥‥。 私から告白したはずなのに‥‥」
「いや、元々聞いていたことだし、それを長引かせたのは俺だしな。 まぁ、こんなに早く時間が過ぎるとは思ってなかったわけだが‥‥。 でも、愛想尽かされたわけじゃないってことに少しほっとしてる自分がいるよ」
「愛想を尽かすなんて、そんなのはあり得ませんよ。 今までもこれからも、私はお兄様のことが好きですから」
お兄様を嫌いになることなんてない‥‥あるわけない‥‥。
大好きだからこそ、私は何度も戻って‥‥そして、今回も戻ることを決めたのだから。




