313 たどり着く
「‥‥お姉ちゃんの決意は固そうですね、私が何を言っても変わらなそう‥‥‥‥お姉ちゃんがそれで納得しているのなら、私はこれ以上言っちゃいけないですよね」
『ま、別れろって言ったのは私ですし、私も何も言えませんね。 夕闇さんは後悔はないんですよね?』
「お兄様を助けるために別れるんだもん、後悔はないよ」
元々の目的に戻っただけだ。
そもそも、付き合っていても変わらないことがわかったときに本来なら別れてもおかしくなかったんだから、夏休みまで待ってくれたことに感謝しなきゃ。
『それなら、いいんです。 じゃあ、腕時計も早めに渡しておいて正解だったかもしれませんね。 ‥‥あ、一応時間の設定もしているので、起動するだけで飛べるはずですよ』
「ありがとう、アイちゃん」
そんなことまでしてくれていたとは‥‥まぁ、私って大事なところで間違えちゃったりとかあるかもだから、アイちゃんの気遣いは本当にありがたい。
「小乃羽ちゃん、ごめんね。 また体を‥‥」
「お姉ちゃん、何度も言ってると思いますが、そんなこと気にしないでください。 お姉ちゃんはお兄さんを助けることだけ考えていてください。 ‥‥じゃあ、行きましょうか」
そして私たちはようやく旅館にたどり着いた。
◆◇◆◇◆◇
戻ることを決めた以上は早めの方がいいよね‥‥。
旅行をお兄様と一緒に過ごすのは出来そうにないし、お兄様にこれ以上気を使わせたくない。
でも、そんないきなり言って、お兄様は納得してくれるだろうか‥‥。
そんなことを考えつつも私はお兄様に着きましたと連絡をいれる。
小乃羽ちゃんたちは散歩してくると言っていたので、近くにはいない‥‥と思う。
一応、お兄様には一人でと書いておいたので、一人で来てくれると思うけど‥‥。
「福林さん」
振り向くとお兄様の姿があった。
「お兄様、遅れちゃって申し訳ありません」
「いや、もしかしたら来ないのかなぁと思ってたから、頑張ってきてくれてありがとう」
まさかのお兄様の笑顔の感謝に私はかなり照れる‥‥。
でも、頑張ったってお兄様、私が自転車で来たこと知っていらっしゃる? と一瞬思ったが、たぶん頑張って時間を作ってくれてってことだよね。
お兄様は何だか何でも知っていそうな、そんなイメージが私のなかにはあるんだよね。
「お兄様、一日目の旅行どうでした?」
「楽しかったよ。 何だかここまでいろんなやつがいてワイワイやるなんて今までなかったしな」
確かにお兄様が大勢と一緒に遊んだりって、どの世界でもあまりなかったような気がする。
本当にこの世界って他とは違うんだな‥‥。