312 決断する
『もうそろそろ着きますね。 ‥‥でも、もう旅行はかなり後半で‥‥ほとんど終わりですね』
「でも、私はこれくらいの方がいいかも。 あまり長くいてもお兄様に気を使わせてしまうかもしれませんし」
『夕闇さんがそれで納得してるならいいですけど‥‥小乃羽、漕ぐのが遅いわよ』
「だ、だから‥‥私はもうすでに限界が‥‥」
小乃羽ちゃんは疲れすぎていて、少し私との距離が開いたりしていた、
その度に私の方が合わせたりしていたので、見えなくなるまではなれるとうことはなかったと思うが‥‥その度にアイちゃんに色々と言われて、二重の意味で大変そうだったね‥‥。
『あ、見えてきましたね』
「あれかぁ‥‥お姉ちゃん、これからどうします? まずはお兄様に会って、そのあと温泉とかそう言った感じですかね?」
蕾ちゃんにばれないように変更するのはかなり大変そうだけど‥‥。
旅館に着く前に私は二人に決意したことを話すことにした。
「ねぇ、二人とも少しだけ話いいかな?」
「え、お話ですか?」
『どうかしましたか? 改まって話だなんて』
二人とも何だかあまり楽しい話ではないとわかったのか、あまりいい表情はしなかった。
でも、ここでちゃんと言っておかないと、別れるっていう決意も揺らいじゃうかもしれないしね。
「私、今日お兄様に会うときに別れを切り出そうと思うんだ」
「わ、別れって、お兄さんとの恋人をですか? ‥‥嫌です! そもそも別に今日別れなくてもいいじゃないですか! まだ期間はありますよ!」
まさか、小乃羽ちゃんからそこまで拒否されるとは‥‥自分のことのように考えてくれる小乃羽ちゃんは本当に優しい。
「今日が一番丁度いい日だと思うんだ。 それにまた腕時計を使って戻るのは決まってるんだから、早めの方がいいだろうしね」
「‥‥戻るの、夏休み終わってからじゃなかったんですか?」
「なんだろうな‥‥このままズルズルと引きずるのもよくないかと思ってさ。 思い出ももう十分作ったしね」
「確かにお兄さんをすぐに助けたい気持ちは理解できますけど、それでも旅行に来たんですから‥‥」
「きっと、蕾ちゃんから隠れながらなんて無理だし、それこそ二人に迷惑をかけちゃう」
『私は別に迷惑だなんて思いませんけどね』
「私も同じです! 自分がしたくてやってるんですから迷惑だなんて思うわけありません!」
二人の優しさは本当に嬉しい。
だけど、今甘えてしまうとこれから先も同じように二人に甘えてしまうかもしれない。
「ありがとう、二人とも。 だけど、やっぱり今日言うべきだと思うんだ」




