304 作れるものは作る
行かないつもりでいた旅行に行くことになるかもしれない。
まさか二人があんなに行ってほしいと言うなんて思わなかった。
私としては行きたくないわけではない、というよりも本当なら行きたい。
だけど、私が行くことにより誰かに迷惑がかかるのなら私は旅行になんて行ってはいけないと思ったのだ。
小乃羽ちゃん達の負担にもなりたくないし、バスに乗ることによってお兄様に迷惑をかけたくない。
違う行き方が未だに見つかっていない以上、行くことはないかもしれないけど‥‥。
どんどんと旅行の日にちに近づいていっていているし、お兄様にも行けなくなるとは一応行っておいた。
だから、行かなくても問題ない。
行っても行かなくても、もうこの世界に長くはいないのだから‥‥。
◆◇◆◇◆◇
お昼過ぎ、私は気分転換に外に出ようと思い、玄関の扉を開けてみると、外で小乃羽ちゃんが何やら作っているのが見えた。
何だか一瞬だけその姿が小乃羽ちゃんではなく蕾ちゃんに見えて、少し懐かしき気持ちになる。
小乃羽ちゃんは蕾ちゃんの弟子な訳だから、段々と蕾ちゃんに近づいているのかもしれないな‥‥いや、私が蕾ちゃんをよく知っているから無理矢理繋げているのかもしれない。
「小乃羽ちゃん、なにやってるの?」
そういえば、改めて考えると小乃羽ちゃんが何か作ってるのって初めて見たかも‥‥。
いや、仕事とかのならいくらでも見たことはあるが、あまり蕾ちゃんみたいに自分の発明品っていうのは今までなかったような気がする。
「お姉ちゃん。 この前の話で出た自転車を自分なりに考えて、改良していたところだったんです」
「自転車を改良?」
この前っていうと、旅行のことだよね。
自転車で行くって、あれ結局どうなったのかな‥‥。
そもそもなにを改良するところがあるんだろうか‥‥でも、改良ってことは少し便利になるってことなのかな?
「一応どんなのかと言いますと、少し漕ぐだけでめちゃくちゃ進むっていう‥‥」
『まぁ、ほとんど電動アシスト自転車よね』
「あ、アイちゃん」
「ちょ! アイちゃん! せっかく頑張って作ってるのにやる気を失くさせるようなこと言わないでよ」
『別に電動アシスト自転車でもいいじゃない。 何がそんなに不満なのよ』
「だって何だか普通のもの作ってるなぁって感じじゃん! 師匠ならもっとすごいもの作れるのに」
ま、まぁ蕾ちゃんのものは少し‥‥というかかなり非現実的なものばかりだもんね。
『いや、あれはマスターが特別なだけでしょ』
「それはそうなんだけどさ‥‥」
『ま、買うより作る方がお得だから作れそうなものはどんどん作って行けばいいと思うけどね』




