301 夏休みに入って
「もしもし、おはようございます、御姉様。 今ってお忙しいですか?」
私は御姉様に旅行に行けないということを伝えておこうと思い、御姉様に連絡をした。
本来なら森田先輩に最初に連絡するところだろうけど、私あの人のメールアドレス知らないんだよね‥‥。
『ううん、大丈夫だよ、小乃羽ちゃん。 それで、何かあった?』
「あの‥‥旅行のことなんですけど‥‥。 やっぱり行けないかもしれないです」
『ど、どうして? 何か用事でもあった?』
本当なら一緒に行きたいところではあるけれど、もうこれは仕方のないことだ。
‥‥でも、何だか御姉様が少し落ち込んでいるような声になった気がして、私は罪悪感のようなものを感じていた。
少しでも御姉様を元気付けようと思い、私は小さな嘘をついてしまった。
「はい‥‥大変申し訳ないんですけど‥‥。 もし、少し遅れてもいいのでしたら、行けると思うんですが‥‥」
時間があったところでバスに乗れないんだから、行くことは出来ないが‥‥でも、御姉様は少し元気になったような気がする。
そのあとはお兄様のことについての話があった後、会話が終わり、電話を切った。
◆◇◆◇◆◇
「中学校では夏休み‥‥羨ましいです‥‥お姉ちゃん、立場を変わってください!」
「変われるのなら変わってあげたいけど‥‥」
夏休みに入って、特別何か変わったというところはない‥‥まぁ、小乃羽ちゃんが更に忙しくしているくらいだろうか‥‥。
『夕闇さん、夏休みの宿題をやっていらっしゃるんですか?』
「うん、特別やることもないし」
「お姉ちゃん、でもあまりやっても意味がないのでは? 提出もしなければ、お姉ちゃんもう何度も同じような宿題やってますよね?」
夏休みまでとはいえ、宿題を始めにすぐに終わらせてしまう私としてはやってないことが少し抵抗があるというか‥‥。
「まぁ‥‥確かに授業も習ったことをもう一回やっている状態だからね‥‥」
一応復習として聞いてはいるけど、何度もやっているので必要のないことまで覚えてしまっている。
あれは教科書の何ページでとか、確実にいらないよね。
「なんか知っていることをもう一度やられるとソワソワしません? 私嫌いなんですよね~。 やっぱりなんでも新しいことをする方が楽しいですから」
「う~ん、私はそれほどではないけど、でも流石に別の勉強をしながら聞いてたね」
私も知らないことを勉強した方がいいと思うしね。
ま、小乃羽ちゃんは私と違って元々頭が良いし、余計にそう思うのかもしれないなぁ。