表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/780

72 程々に

「ふぅ、ごめんね。 もう本当に大丈夫だから」


 祈実きさねさんが、そう言うので、私達は二階の私の部屋からリビングに戻った。

 リビングに戻るとしんくんと兄さんが向かい合って座っていた。

 何処の面接ですかあなた達は‥‥。


「お、もういいのか? あまり時間も経ってないぞ」


 時計を見ると、まだ二階に上がってからそこまで時間は経っていなかった。

 でも、本人もうあまり酔ってなさそうだし‥‥。


奈留なるちゃんが、私だけ、のために介抱してくれたからすっかり元気だよ」


 なんで、私だけ、を強調して言ったんですか!?

 それに私全然なにもしてないよ?

 添い寝したぐらい? いや添い寝したっていうか引っ張られてなったっていうか。


「なんだと!? き、きさま‥‥。 奈留なる~俺も気分悪い~」


 なんで悔しそうなんですか。

 そもそも兄さん、あなた、生き生きしてらっしゃるじゃないですか!


「大丈夫ですか? 廊下になら布団敷きますよ?」


「優しさと意地悪が混在してる!?」


 本当だったら、心配して看病もしますけど、今日はさすがに騙されたりはしませんよ。

 目がキラキラしていらしたし。


「そういえば、しんくんと兄さん何か話してるみたいだったけど、なに話してたの?」


「え? あぁ、学校での奈留なるの様子を聞いてただけだよ。 な、磨北まきた弟?」


「は、はい」


 ふ~んそうなんだぁ。

 いやいや、なんでしんくんにそんなこと聞いてるんですか!

 一瞬流しそうになりましたよ。


 あとなんかしんくんがおかしいような。

 兄さんが祈実きさねさんと話している内に、小声でしんくんに、聞いてみた。


しんくんどうしたの?」


「いや、奈留なるさんのお兄さんって色んな一面があるんだね‥‥」


 何の一面ですか!?

 とても気になるんだが‥‥いやただ妹のことを熱く語る兄かもしれない。

 由南ゆなちゃんが家に来たときも、言ってたから。


 兄さんとは同じ人間だとこれまでもこれからもずっと思うけど、出来れば、その一面は私にはないことを祈るばかりです。




 ◇◆◇◆◇◆




奈留なるちゃん、暗くなってきたね」


「そうですね」


 先程から特に何かするわけでもなく会話を楽しんでいたのだが、いつの間にかすっかり夜になろうとしていた。


「なってきたね、じゃねーよ! そもそもいつ帰るんだよお前ら」


 まぁ実際結構な時間いますからね。

 兄さんが怒るのも無理ないとは思いますが、私は楽しいので、いていただいていいんですけどね。


「今日は泊まっちゃおっかな~」


「きさねぇ、それはさすがに」


 まぁいつかはしてみたいですけどね。

 着替えとか、その他の準備は今日ないだろうし、さすがに難しいかな。


「また今度できたらしたいですね」


「やったー! 今度ね」


 あれ、楽しそうだったから言ったけど、考えてみたらヤバくないですか、私の心臓の方が。

 えぇ、緊張で死んじゃうかもしれません。


「でもきさねぇ、もうそろそろ帰った方がいいんじゃないかな」


「も~しんくんまでそう言うなら仕方ないなぁ。 じゃあもう帰るよ」


 うわ、兄さんすごく嬉しそうな顔してる‥‥。




 ◇◆◇◆◇◆




 帰り道はわかるというので玄関で見送ることになった。


「じゃあね、しんくん。 また学校でね。 今度は避けないでよ」


「あはは、了解。 また学校で、奈留なるさん」


 しんくんは笑顔で答えてくれた。


祈実きさねさん、今日はありがとうございました。 また遊びましょうね」


「うん。 次は絶対にお泊まりセット持ってくるから」


「絶対持ってくるんじゃねーぞ! 本当にもう来ないでくれ」


「またね」


 そう言って祈実きさねさんとしんくんは帰っていった。

 祈実きさねさんのことだから次呼んだとき、多分お泊まりセット持ってくるんだろうなぁ。

 いつでも来れるように準備しとかないとね。


「そういえば奈留なる


「どうしたの兄さん?」


祈実きさねが、言ってたよな。 なんでもしてくれるようにお願いするって」


 そういえば、ありましたね。

 そういうことばかり覚えてるんですから。


「言ってましたね」


「じゃあそれで今度から、あいつら来たら追っ払うっていう‥‥」


 そこまで来るのイヤなのか!

 でも祈実きさねさん達に悪いですし‥‥あ。


「言ってましたけど、そのあと祈実きさねさんからお願いされてないので無効です♪」


 その後、外に出た兄さんは大きな声で叫んでいた。


祈実きさね───!! 戻ってこ────い!! お前に頼みがあるんだ───!!」


 近所迷惑ですからやめてください!

 あと、私がなんでもしてくれるように祈実きさねさんに頼むんじゃなくて、祈実きさねさんに直接言った方がいいと思いますよ。


 兄の声はその後も祈実きさねさんに届くことなく、むなしく響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ