296 一番いい方法を
『でも、夕闇さんにとってはあまり腕時計の発明品に良い印象がないんじゃないですか? 別に無理をして使う必要はありませんよ。 それに大丈夫と言っても、それは根拠なんてありませんし‥‥』
「確かに良い印象はないかもね‥‥だけど、この世界に来るときも使ったし、恐怖みたいなものはないよ」
『‥‥まぁ、私としてはどちらでも構いませんよ』
アイちゃんとしては自分のやることが一つ減って別のことが出来るし、私としてもアイちゃんや小乃羽ちゃんにあまり迷惑をかけたくないから、腕時計を使うというのが一番良いと私は思う。
「小乃羽ちゃん、ごめんね。 この体は小乃羽ちゃんの体なのに‥‥」
「いえいえ、そうしないとお姉ちゃんが危ないですし、そもそも私は一生このままでも良いと思ってますしね」
いや、流石にそれは‥‥。
小乃羽ちゃんがそうやって言ってくれるのはありがたいが、私は当初通り、お兄様を助けられたら返そうと思っている。
誰がなんと言おうとも、これだけは変わらない。
『では、どのくらいでいきますか? すぐに?』
「お姉ちゃんどうします? こういうのって早い方がいいのかな‥‥あ、駄目だよ、アイちゃん! 夏休みはお姉ちゃんはお兄さんとデートしなきゃ!」
いや、別に決まっているわけじゃ‥‥。
『じゃあ、別れるのと同時くらいに行くって事になるけど』
「それがいいかもね」
私が何か言うことなく、今後のことがどんどんと決まっていく‥‥まぁ、自分で行動してもあまり良かったためしがないから、ありがたくはあるんだけど‥‥。
『じゃあ、夕闇さん。 そのタイミングになったら言ってください。 腕時計をお渡ししますので』
「あ、うん。 わかった」
◆◇◆◇◆◇
「お姉ちゃん、色々と頑張ろうとしてくれてるけど‥‥体調とか心配になってくるよね」
お姉ちゃんが部屋に戻っていき、私達二人きりになった。
『そうね。 まぁ、夕闇さんからしたら、小乃羽の方がってなると思うけどね』
「ま、まぁ‥‥そうかも? ‥‥それで、腕時計で行くってことになったけど、やっぱり一人は心配だよね」
『確かにね。 一つ前の世界だって一人でやろうとしてあんなになってたからね‥‥。 流石に今回はそんなことにはならないにしても、見ていた方がいいかもしれないわね』
「何だかお姉ちゃんに知られたら、信頼されてないとかって思われそうだね‥‥」
『ま、私達が心配性なだけよ』
「あはは、そうだね。 じゃあ、やっぱり仕事は一通り終わらせておいた方がよさそうだね」
『そうね、頑張りましょうか』




