287 現実的じゃない
「風が気持ちいいですね~」
「そうだね」
私はこの前小乃羽ちゃんが来ていた場所にまた訪れていた。
小乃羽ちゃんも後からきて、現在は二人きりだ。
「そういえば、小乃羽ちゃんいつも透明になるのにここだと透明にはならないんだね」
「なんか透明化装置のことがわからない人が今の言葉だけ聞くと、絶対私お化け扱いされそうですね‥‥。 いえ、特にお姉ちゃん以外に回りに誰もいない状況ですから、いいかなって思いまして」
まぁ、確かにここまでくる人は中々いなさそうではあるけどね。
回りには木々しかないし。
「それに、お姉ちゃんも見えていた方が話しやすいかなと」
「そうだね、声だけ聞こえるのは怖いね」
アイちゃんも声だけの時があるけど、毎回ビクッとなるし。
「そういえば、お姉ちゃん。 この前のデートはどうでした?」
「え、楽しかったよ。 特に何かあったわけではないけどね」
特に以前とは変わらず、お兄様と行きたいと思った場所に二人で行くくらいだ。
変わったことがあるとするなら、お兄様が以前に比べて色んな思い出を作ろうとしてくれているところだろうか‥‥。
「そうですか‥‥‥‥お姉ちゃん。 お姉ちゃんは夏までということには納得はしてるんですか?」
「‥‥うん、納得してるよ。 というか、逆にそんなギリギリまでで申し訳ないって気持ちかな?」
「そうなんですか‥‥すみません、お姉ちゃんのことなのに私はまだ納得出来てないみたいで‥‥お姉ちゃんが納得しているなら、私はなにも言いません」
「ごめんね、小乃羽ちゃん」
色々と心配して言ってくれているんだろうから私としては感謝しかない。
「いえいえ、私も何度も同じようなことを聞いてごめんなさい。 そろそろ帰りましょうか」
「そうだね」
◆◇◆◇◆◇
『小乃羽、やっぱり近場にいい桜の名所がないわけだから、燃やすしかないわよ』
「いやいや、なんでそういう発想になるかな‥‥ほらもっと平和的に解決できる案は思い付かないの?」
『‥‥一つ思い付いたけど、流石に現実的じゃないのよね』
「え、思い付いたの!? それならそうと言ってくれればいいのに!」
『いや、本当に冗談みたいなものなんだけど‥‥』
現実的じゃなくても平和に解決できるならやってみるべきでしょ!
「それで、その方法は?」
アイちゃんはしぶしぶ口を開いた。
『‥‥私達で桜の名所を作ることよ』
「‥‥現実的じゃないね。 というか、絶対に無理だね! 一年でどうこうできるものじゃないよ!」
『いや、時間の方はタイムマシンがあればどうこうできるかもしれないけど、お金がね‥‥ないのよね‥‥』
あー確かにタイムマシンがあってもお金がね‥‥。




