277 未来では‥‥
そして、数分も経たずしてアイちゃんは家に戻ってきた。
「早かったね。 ‥‥いや、流石にそんなにすぐに調べることが出来るとは思えないから、何か不具合?」
『‥‥‥‥』
アイちゃんの様子がおかしい。
いつもならすぐに小乃羽ちゃんに返事をしつつ、ちょっとした小言を挟むのに‥‥。
「ちょっと返事くらいしてよ‥‥‥‥え、こいつ死んでる!?」
『別に死んでないわよ、そもそも生き死になんてAIにはないわよ』
「そういう返しが出来るんだったら、なんでさっき無視したのさ」
『うるさいわね、別にいいでしょ』
何だかアイちゃん、いつもと雰囲気が違う‥‥怒ってる?
「もー! 何なのさ! 何かあるなら喋ってよ! その口は何のためについて‥‥‥‥あ、AIに口ないや」
ちょっと小乃羽ちゃん! もうわざととしか思えないからね、この発言!
もっとアイちゃん怒って、話してくれなくなっちゃうよ‥‥!
『はぁ‥‥さっきのことだけど、きちんと調べてきたわ。 ‥‥いや、一部分だけど充分わかったといった方が正しいわね』
「どういうこと? もしかして何かよくないことでもあった?」
アイちゃんの表情が曇る。
言いにくいのか中々声に出さず、少しの沈黙があり、数十秒後ようやくアイちゃんが話し始めた。
「来年の春、このままお付き合いをしていたら陸さんは死ぬわ」
「え‥‥」
小乃羽ちゃんと私はただただ驚くしかなかった。
◆◇◆◇◆◇
驚くことしか出来なかった私にかわり、小乃羽ちゃんは驚いてはいたもののすぐにアイちゃんに対して疑問をぶつけた。
「どういうことなの!? だって、お兄さんを死なせないようにするために付き合ってたんじゃ‥‥それなのに一年も早くだなんて‥‥」
『私だって付き合うことが最善だと思ってたわよ』
「そもそも亡くなる原因は!」
そうだ、どうやって亡くなったのか知らなければ‥‥。
『‥‥デートで桜を見に行こうとしてバスの事故で亡くなる。 陸さんと付き合っている人が違うだけで、状況は以前と一切変わってない』
‥‥え? なんで‥‥だって、前だってバスを見るだけでもあんなに恐怖だったのに、未来であのときと同じように桜を見に行こうとするなんてそんなこと‥‥。
「ちょっと待ってよ、そんなのあり得ない‥‥!」
『えぇ、私だってあり得ないと思うわよ、今でも信じられない。 でも、未来ではそうなっていた。 間違いなくね』
未来を見てきたアイちゃんにそう言われれば小乃羽ちゃんもなにも言えなくなってしまった。
『だから夕闇さん。 陸さんと別れてください』




