257 突然の終わり
御姉様が見ていたとは全然気づかなかった。
お兄様は知っていたのかな?
でも、周りを見渡しても、御姉様の姿は見えないし‥‥。
う~ん、人も多いしわからないね。
「福林さん、これからどうする?」
「どうしましょうか‥‥少し、カフェとかで一息入れますか? 映画の話もしたいですし」
「そうだね。 そうしよ────」
「あ、見つけた! 陸ー!」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
まぁ、お兄様にこんな風に声をかけるのは一人しかいないけど‥‥。
「何してるんだよ、広葉」
お兄様は何だかあきれているようなそんな顔をしている。
「いやー二人のことが気になって、隠れてこっそり後ろを付けてたんだけど‥‥‥‥あ、いや、嘘だよ、別になにも尾行なんてしてないよ?」
「全部喋ってから否定しても意味ないだろ。 そもそもこっそりだったらなんで話しかけてくるんだよ」
「いや、途中で見失っちゃって、でも偶然見付けたから嬉しくなっちゃって。 いや、別に邪魔するつもりじゃなかったんだよ?」
「今もう邪魔だからな?」
まぁ、森田先輩らしいといえば、らしいですけど‥‥。
お兄様、怒ってるかも‥‥。
でも、何だか流石にこんなことで喧嘩になるのは私としては駄目だと思う。
友達はやっぱり仲の良い方が色々と楽しいからね。
「お兄様、映画で十分楽しかったですから、今日はもうお開きにしましょうか」
「え、でも‥‥」
「また後日、映画の感想を聞かせてください。 それでは」
映画をお兄様と一緒に見ただけでも私としては満足だしね。
ただアイちゃん達に何を言われるか、そこだけが心配だけど、まぁ今回は許してくれるかな?
◆◇◆◇◆◇
帰り道はアイちゃんの分身、いやまぁ分身も本体みたいなものだけど、まだ家に帰らず、二人で外をふらふらと歩くことにした。
『予想外のところで、まさかあんなことになるなんて‥‥』
「あはは‥‥でも、お兄様と映画を見ただけでも十分満足だけどね」
『私はもう少し色々あってほしかったですけどね。 でも、こうなることを予測できなかった私のミスです、すみません』
「いやいや、アイちゃんのせいじゃないよ。 それに本当に今回はこれでよかったんだよ」
あんなの予測できるわけないし、あのあとデートを続けたとしても、少し変な雰囲気になっていただろう。
『はぁ、でも尾行していた方がうまくいっているなんて、なんだか世の中はうまくいかないなぁと思いますね』
「ん? なんのこと?」
『いえ、なんでもないですよ。 さ、そろそろ帰りましょう』
そして、私達は家に帰った。




